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愛犬

作者: まさのし

愛犬に命の尊さを教えられる主人公...その先にあるものは...

その犬の名前は「ちび」最初に私の家に来たときは、とても小さく目がクリクリしていて、尻尾をピンと立て、毛並みも良く、耳も誇らしげに直立させていた、

とても愛らしい顔をした犬だった。


最初に私が犬を飼ったのは小学生一年生位の頃だった。

名前は、「ハニー」

何故ハニーなのかは未だに解らない...

そのハニーは、父親が毎日夕方に散歩に連れて行くのが日課となっていて、ハニーも夕方になると、父親と一緒に喜んで散歩に出掛けていっていたのを覚えている。


そして、ある日の夜、いつものように父親が散歩から帰ってくる時に悲劇が起こった。


「ドーン!」

「ギャギャンッ!!」


何がぶつかる音がしてそのあと、犬の叫び声。

私は、家の中から飛び出した。


「クソヤロー!あの車、凄いスピードで俺まで轢くような感じで飛ばしてやがる!」

「バカヤロー!!」

「ハニーが轢かれちまった...」

父親が、右手を庇いながら逃げていく車の行方を睨んでいる。


そしてその横には、車に轢かれて倒れているハニーがいた。


母親も駆けつけ、父親とハニーを心配している。


「どうしたの!」

「大丈夫!?」

「少し腕が痛いけど、大丈夫だ、でもハニーが...」


苦しそうにハニーが横たわっている。


「ハニー!!!」


私は、何も出来なくて、何をしたらよいのか分からず、無我夢中でハニーの頭を撫ででいた。


暫くすると、知り合いの獣医さんが来て、ハニーを診察してくれた。


「...安楽死...ですね。」


その一言で、家族が泣き崩れていた。

私は、安楽死の意味が分からず、ただハニーの頭を撫で続けていた。

「きっと良くなるよ...ハニー、先生が来てくれたから、もう大丈夫だよ...」

「ハニー...」


暫くすると、先生が私の手をどけて、注射器の様なものを取り出して、ハニーの体の何処かに注射した様な気がした。


「これでハニーは良くなるの?」

「元気になるの?」

私が聞く。


「...ハニーは治らないから先生が薬を打って楽にしてあげたんだよ...」


「何で...なんで何もしないのに治らないって決めるの?ハニーは生きてるし手術でも何でもして直ぐに治して!!!」


私が叫ぶと、近所のおばさんが泣きながら教えてくれた。


「車に轢かれて、お腹の中に傷があって、骨も折れてて、手術しても助けられないから、苦しんでいるより早く休ませた方がハニーのためだから...お薬を打ってそのお薬が効いたらハニーは楽になるから...それを安楽死って言うの...可哀想だけど今より楽になるから仕方がないのよ...」


私は、その言葉を聞いて納得したような、させられたような凄くモヤモヤした嫌な気持ちで一杯になった。


それでも私は、ハニーの身体をさすっていた。

ハニーの吐息がなくなるまでずっと...


私は、動物が大好きだ。


猫でも犬でも、そして、動物園にいる動物ならパンダや白熊、ペンギンにラッコ、イルカにライオン等々...生き物全てが愛しく思える時がある。


動物の仕草や行動を見ていると、とても心が落ち着く感じが心地よい。

そして、その心地よさと幸せな気分をハニーは私に与えてくれていた。


そのハニーが今車に轢かれて死んでしまった。


それからの私は、ハニーとの思い出を日々思い出しながら暗い毎日を送っていた。


そんな気分の毎日を心配した親達が、ハニーを診てくれた先生から新たな仔犬を数匹うちに連れてきてくれると聞かされた。


そして、その仔犬達がうちにやって来た。

どの仔犬も、プクプクしていて、小さくて、とっても可愛かった。 

そして、良く見てみるとその中に、あのハニーに似た可愛い仔犬がいた。

ハニーの生まれ変わりだ!

その仔犬を私は抱きかかえ、頭を撫でながら目を見つめて呟いた。

今日から君は僕の家で、僕と一緒に暮らそうね。


それが我が愛犬「ちび」だった。


名前は私がつけた。


ハニーの生まれ変わりだから「ハニーツー」とか「新ハニー」とかにしようと言う案も出たような気がしたけれど、何故ハニーなのか分からなかったし、ハニーツー!新ハニー!って呼びにくいし、男の子だし、センスもない。


取り敢えずいい名前が思い浮かばなかったけど、最初の見た目とインスピレーションで思い浮かんだ名前が「ちび」だった。

ちぃちゃくて可愛いいから「ちび」


この名前もセンスの欠片も無いと言われたらそうかも知れない...


その日から「ちび」は与えられたご飯を毎日沢山食べてくれた、美味しそうにバクバク、バクバク...

そしてすくすくと元気に大きく育ってくれた。


暫くすると体は「ちび」ではなくなっていた。

立つと私よりデカイ...


そんな大きな「ちび」は、毎日元気良く尻尾を振ってニコニコしながら私の隣にいてくれた。


私の弟?兄弟?親友?友人?恋人?その全てが「ちび」だった。


私は、学校から帰ってくると決まってちびの所に行き、ちびのいる小屋に入る。

そして、ちびに学校での出来事を報告し、ちびの報告を聞く...

そして、ちびにご飯をあげて、食事が済んだら近くの公園まで散歩しに行く。

そして、ボール遊び好きに追いかけっこ...

そして隠れんば...

かくれんぼは、ちびの大好きな遊び...だと思う。

最初はちびが鬼。

私は毎回瞬殺で見つかるけど...

最強の鬼だった。


次に私が鬼の番だ。

私が鬼の時は毎回ちびを見つけらるない...


何故ならちびはいつもかくれんぼの時、始まると直ぐに駆け足で数キロメートル離れて何処かに行ってしまう...


公園の中にいないのだ...


ちびが鬼の時はこうだ。


「ちびー、そこで待て!待ってよーっ...」

ちびはお座りして行儀良く待っている。


そして、ちびから少し離れた公園の角にある物置の後ろに隠れる。

そして叫ぶ!


「もーいーよーっ!」

そういってからものの十数秒...


ちびはハァハァ言いながら一目散に私を見つけて、

直ぐに足を噛む...


「がっーっ!!痛い!痛い!早いよ見つけるの!!」


相手は犬だ...

嗅覚が人間の何万倍もあるお犬様だ...

簡単に見つかってしまう...

当たり前だ...


そして、私が鬼の時は、

こうだ。


公園の真ん中でちびの首輪を外し、隠れていいよって、言いながらそっと首輪をから手を離すと一目散で逃げていく...そして公園の外に出て何処かに行ってしまう...

探しようがない...


まぁいつもの事なので、取り敢えず私も公園で一通りの遊具で遊んだあと、ちびに声をかける。

「ちーびーっどーこーだー??」

普通の声。

「ちーびーっ!!」

少し大きい声。

それでも見つからない。


最後に「チビーッ!!帰るぞー!!」


そう大声で叫ぶ。

暫くすると、通りの向こうの方から猛ダッシュでちびが駆けてくる。

そして公園の柵を飛び越えて

そして体当たり...!


「どっかっーーーんん!!」


それを知っている私は、両手を広げてちびを待つ。

そして体当たりするちびを受け止め...実際には受け止めきれないでふっ飛ばされてしまい、それで転んだ私の顔をベロベロベロベロ舐めてくる。

「がっ!やめろ!ぐぁっ!冷たいっ!」


どこまで逃げてんだ?ちびーっ!


それが私とちびとのかくれんぼの結末だった...


そんなちびとの日々がとても楽しかった。


そんなある日、いつものように学校から帰り、ちびの小屋に行くと、ちびが出てこない。

「チビーッ帰ったよーっ!」

「ちびーっ!」

呼んでも出て来ない。

様子がおかしい...


小屋を覗く...


すると小屋の奥でちびは横たわり、舌を出してハァハァゼィゼェと呼吸を荒くしている。


「どうした?ちび?」

「どこか痛いのか?」

「誰かに虐められたか?」

「ちび?」


私は、どうすることも出来ずただじっとちびのそばで

ちびを見守る。


「ちびーっ」

「ちびっ!」

「チビーッ!!」

「大丈夫か?ちびー!」


夕方になり、父親が帰宅した。

そしてちびの具合が悪いことを告げると直ぐに先生を呼んでくれた。

そして、ちびの病気の原因がわかった。


「フィラリア」だった。


なんじゃそりぁ!!


小学生低学年の、学の無い私の頭では理解出来ない言葉だった。


先生に聞いた。

「何の病気ですか?」

すると先生がWikipediaを朗読するかのように教えてくれた。


「フィラリアって言うのはね、大体日本ではイヌの心臓の右心房と肺動脈に寄生する犬糸状虫がいるんだけどね、それが一般的に知られていて、それがフィラリアのように見られている。

他にも人体寄生性で感染後遺症として象皮症を引き起こすバンクロフト糸状虫という多くの脊椎動物に固有の寄生虫が多数いることが知られているんだ。


その名の通り線虫類の典型的な形である細長い糸状の姿をしていて、成虫の寄生箇所は種によってリンパ系(リンパ管とリンパ節)、血管系、皮下組織、眼窩、等様々であるけれど、卵胎生で、成熟した雌の子宮内にはミクロフィラリア又は被鞘幼虫と呼ばれる幼虫が薄い卵膜にくるまれた状態で充満していて、これが産出後活発に運動して血管に移動し、さらに毎日種固有の一定の時刻に末梢血管に移動してカ、ブユといった吸血昆虫に摂取されるんだ。

ミクロフィラリアは吸血昆虫の体内で胸筋に移動し、脱皮を繰り返して感染幼虫に発育し、口吻で待機する。再度の吸血時に感染幼虫は口吻の外にでて、口吻によって作られた皮膚の刺入孔から体内に侵入することで感染する病気なんだよ。」


(以上Wikipedia参照参考)


「...解らない...」


頭の悪い私に解らない解説だった。


とにかく虫が体内に溜まり、ちびの体を蝕んでいることは察しが付いた。

苦しそうなちび...

先生は診察を終えると挨拶も程々に足早に帰って行った。


先生が薬をくれた。

薬を貰いご飯と一緒に食べさせるように言われた。

「これで治るのか?...」


それからのちびは、ご飯も食べれなく横たわるだけで日々

衰弱していった。


誰かが言った。


「安楽死しようか...」


私は、全力で拒んだ。

ハニーの時も納得はしていないし、後悔したし、悔やんでいたので、絶対に安楽死には反対だった。


「嫌だ!絶対嫌だ!」

「ちびは治る!絶対治る!俺が治して見せる!!」

「安楽死なんかしない!俺が絶対治して見せる!!」


その日から私は毎日、朝晩と、横たわるだけのちびの口まで食べ物と水を運び、薬を飲ませ、体をさすり、頬を撫で、「治る!必ず治す!」

「必ず治るからな!ちび!」

「がんばれよ、そしてまた二人で広い芝生の上で追いかけっこをするんだ!

必ずちびは元気になるんだ!

がんばれちび!負けるなよ!

虫になんて負けるなよ!!」


そう言って毎日ちびを励まし続けた。


治る!そう信じて私は毎日を過ごした。


そんなある日、私が何時ものように横たわるちびに水を上げると

ちびは水を飲まない、飲めなくなっていた。

でも、息はしている。


「ち...び?」


どうしたの?ちび!?

水だよ...


ほら、ちびの好きなお菓子だよ!

ちび...


ちび

ちび?

ちび...ちび?

ちび...


私は頬を撫でる。

動くちび。

体をさする。

少し動くちびの体。

ちび...

身体を抱き抱え身体をさする。

ちび...


ちび......

ちび...

ちび?


チビッー!!

ちび...


するとちびは、体を少し痙攣させながら、最後の力を振り絞るように尻尾を一振りして体を揺らし息を引き取った...


そして最後に、私の顔を見てくれた様な気がした...


その瞬間ちびは私の腕のなかで息を引き取った...



ちびぃ...

ちびぃ......


私は、ずっとちびを抱きしめたまま泣き崩れていた...


ちっ...ひ..っ.

ち.っ.び....っ..


ちびーっ...


ちびーっ.....っ.


いつまでも私は泣き崩れていた...


命日は27日...


それから毎月27日にはちびの小屋の前に大好きなお菓子とジュースをお供えして天国にいるちびに話しかけていた。


「ちび、元気にやってますか?ハニーはいますか?

俺はもうこんなに泣きたくないので動物は飼いません。ちびとハニーがいたからとても楽しかったです。ちび、ハニーと仲良くね、いつか俺もそっちに行くからまた遊ぼうね...

ちび...ハニー...大好きだよ...」


それから今でも、何十年経ったいまでも犬は飼えない。飼いたいけれど飼えない自分がいる。


そして、毎日ちびに話しかける。

「ちび元気か?」

「会いたいな...」

ちび...

ちひ...ちび....


ちびの笑顔が瞼の奥に、ちびとの想い出が頭の中に...


ちび、もうすぐ会えるかな?

ちび、親父と会えたかな?

ちび、ばぁばと会えたかな?

ちび、ジイジと会えたかな?

ちび...友達できたかな?

ちび...恋できたかな?

ちび...

ちび......


俺の生涯の友...ちび。


安らかに...

























命の尊さを教えられ、未だにその悲しみから抜け出せれない主人公。

新たな命が生まれる時にその呪縛から逃れられるのだろうか...

愛犬追悼


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