プロローグ 転生
はじめして。
…なんだか、肌寒い…… 寝る前、暖房付け忘れたかな?冷たく固い感触を感じる…… 私のベッドてこんなに固かったかな?
水が流れる音が……って!? おかしいでしょ!
そこで異変に気付き意識が覚醒し、ゆっくりと目を覚ますと
「えっ!」
辺は石を用いてドーム状に創られた部屋だった。人が十人程が入れる程度の広さだろうか。
視線の先には上へ続く階段が見え、その入り口の両脇に台座に立つ、大きな鎌を片手で掲げた死神の様な石像が左右にあり、その石像の足下から水が部屋の端に沿って掘れている溝に流れ出ていた。
悪趣味!
センスゼロ!
怖いわ!
上へ続く階段があるという事は、どうやら地下らしい。
光源は、2体それぞれの死神の石像の大鎌を持つ反対側の掌から1カ所、中央の壁に左右2カ所、後ろに1カ所の計5カ所の台から燃え上がっている紫の炎だった。
ん?紫……
火って赤色だよね?
オレンジ色だったっけ?
なぜ自分がこんな所にいるんだろうと思い、記憶を辿ってみる。
…が、なぜか上手く思い出せない。
大丈夫!
大丈夫!
思い出せるはず。
それでも必死に辿ると思い出し始め、確か、私は会社の仕事が終わり帰る途中だったはず。高校卒業後、都内の会社へ就職して、まだ1年目のぺーぺーOLだ。昼過ぎから降り始めた雪の影響で帰宅時間には歩道脇には雪が積もっていた。一人暮らしなので夕食の材料を買いアパートへ急ぎ帰宅していたはず。理由は早く帰って、サクサクっと夕飯を作り炬燵の中に潜り込みながら趣味のラノベ小説か漫画を読もうと考えていた。
交差点の歩行者信号が青色なのを確認してから渡り始めると、なんかスリップ音とクラクションが聞こえてトラックが目の前に……
ここで記憶が途切れている。
いくら思い出そうとしても、それ以上出てこなかった。
これはアレか。私、死んだのかな?
いやいや、だったら今いる私はなんなの?
そもそも、ここ何処?
どう見ても病院じゃないよね。
周囲を見渡してみても医師も看護師は勿論、医療器具が一切見当たらない。
改めて考え、避けていた1つの結論に至る。
ん~?遺跡っぽいのかな?……じゃないでしょうが!!! なんで私がそんなとこにいる!
普通にミステリーだわ!!!
頭を抱えての一人突っ込みも寂しい…まずは移動しよう。
幸い身体に痛みは無いし、階段があるから上へ行けば誰かに会えるかもしれない。その誰かに道を聞いてアパートへ帰ろう。
そのまま階段へ向かう為、立ち上がると2つの違和感に気付いた。
まず1つ目は、衣類を一切身に纏っていない。つまり全裸、ヤバ過ぎ!!!
流石にこの状態では人に会えないっていうか犯罪だわ…
しかし、ここには衣類は1つもない。
対策は後で考えるか。
続いて2つ目、これは1つ目より深刻かもしれない。なぜなら身長が縮んでいる。
決して高身長ではなかったが、ここまで低くはなかったはずだ。
しかも只でさえ貧乳だった胸が更に小さくなっていた。事故の後遺症かー!
もう泣きたかった。
とりあえず上へ行こう。衣類は事情を説明して貸してもらうしかない。
階段の方へ歩き出し、ふと部屋の脇の溝に流れる水に視線を移す、
「っ!!!」
水面に映る人物を見て、私は驚きを通り越して、思わず見入ってしまった。太ももの付け根まである長い銀色の髪に宝石の様な紅い瞳、傷は勿論、シミそばかすが一切無い綺麗すぎる肌。年齢は5〜6歳の絶世の美少女。
私が驚いていると、水面の美少女も驚いた表情をしている。私が顔を触ると水面の美少女も顔を触る。
「え?私?」
私は、こんな美少女ではなかった。
髪は黒かったし、楽だからと肩までの長さだった。勿論、染めた事もない。
化粧も美容も面倒くさいという理由でサボっていた。
ここまで言えば服装も話そう。着れたら良い!それだけでした。ハイ!
自分でもちょっと駄目かなと思ったけれども、それらにお金を使うなら、趣味であるラノベ小説や漫画、ゲームに使いたい欲が圧倒的に勝っていた。
…オタクですよ、私は。
そんな私が、今水面に映っている美少女が自分とは信じられなかった。
しかも年齢が幼くなっている。私は今年で19歳だったはず。
改めて水面を見ると、5から6歳の美少女が映る。
「なに? これどうなってんの?」
……
……
……
しかも、先ほどは気付かなかったが、声も変わり、声質が綺麗で聞きやすい感じだ。幼さも感じるが…
「まさか異世界転生!!!」
そういったラノベは結構読んできたから、何となく想像が出来る。
異世界転生してみたいな~って考えたりもしたし。
好きなら一度くらい考えるよね。
しかし、いざとなると混乱してしまう。状況が、全くつかめない事が原因でもあるが。
異世界ならスキルとか有るんじゃないのかな?
そう思い、試しに「鑑定」って言ってみた。
結果は何も起きなかった。めっちゃ恥ずかしいじゃん!誰にも聞かれてないけど恥ずかしい。
考えて、もう一度「ステータス」と言ってみた。
ハイ、何も出ません。
「はぁ~」
小さくため息が出てしまう。少し期待していただけにショックだった。
「異世界来て、スキル無いとかありえないわ。」
取り敢えず、この部屋を出ようと階段へ向かおうとすると。
…チ…ラヲ…
…ト…ヨツ…
…サヲ…シ…
何やら声が聞こえ立ち止まる。いや、何かに呼び止められたと言った方が正しい。
そう思い、最初に自分が目を覚ました場所の方を振り返ると、そこには黒い霧が集まり出来た人影
が、私に手招きをしていた。
なんとか書いています。下手でしたら御免なさい。