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理想の現実  作者: 南条 紙哉
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1-12-2

 


「やっと目を覚ましたみたいだね」


 景色は一転、視界には白い天井が広がっている。どうやら夢を見ていたらしい。

 左手がやけに温かいと感じ目をやると、七菜香が手を握りながら俺を枕にして寝ていた。



 一応どうにか助かったってことでいいんだよな?


「気分はどうだい?」


 そして、声がした右側に視線を移すと、見知らぬ少女がこちらを見ていた。

 

 確か…………俺の記憶にある最後の声と同じだ。


「君が助けてくれたの?」


「君に大けがを負わせたツカイを倒したのは私で間違いないよ」


 少女は得意げにドヤ顔をしてきた。


「ツカイって……あの怪物のことを言ってるのか?」


「そうだね、君の言う怪物が動物の頭部に僕らの7,8倍はありそうな巨体、武器に気味の悪い杖を持っている特徴を持ち合わせているのであれば、それはツカイだ」


 ツカイ…………。それがあの怪物の名前。

 

 吹き飛ばされた時の記憶が蘇り、死にかけていたという事実を再度突きつけられる。

 

「まぁ、聞きたいことは山ほどあるだろう。僕も、君が何故現象管理の最中に動けていたのか気になるしね。一から説明した所で、話が見えてこないだろうから君から僕に聞きたいことを質問してくれ」


 聞きたいことは確かに山ほどある。


「まずは、その現象管理っていうのはあの時間が止まった現象のことを言ってるのか?」


「厳密には時間は止まってないよ。この世界の一部をコピーして並行世界を作っているんだ」


 いや、どういう意味だよそれ。


 俺が?マークを頭上に溢れかえらせていると、見かねた少女は一息ついてから話し始めた。


「そうだね、一応前提条件はちゃんと話さなきゃだね」


 少女は近くの机の上に置かれていたリモコンを操作した。すると、目の前の壁にスクリーンが映し出され、例のツカイと思われる画像が表示される。


「これがツカイ、君も襲われていたからわかるだろうけど、見た目通り高いパワーを持っている。簡単に建物は破壊するし、直接殴られたりすれば殴られたことを認識する前にあの世行きさ」


 それに関しては身をもって理解しているつもりだ。


「その、ツカイっていうのの目的は何なんだ?」


「目的はわからない。だが、奴らは定期的に出現して、建物や色々、目につくものすべてを破壊し、生き物を見つければ、それを優先的に殺戮する」


「これは!」


 スクリーンにはツカイが街を破壊している様子が映し出される。

 東京タワーだった。

 数体のツカイが東京タワーの足の部分を連続して攻撃し、最後東京タワーは街をなぎ倒すようにして崩れていった。


「これは、実際に起きたことだ。だが、現実はどうだい? 実物を見に行ったかどうかはわからないが、今もこの赤い鉄塔は首都を一望できるようにしてその足を地面に建てている」


 この世界の歴史は俺の知っているものとは違う。だから、東京タワーは何かに倒されたと言われても驚きはしても不思議ではない。


「こんな感じで、ツカイの破壊行動を野放しにしておけば間違いなく地球はものの数日で滅ぶだろうね。そのために開発したのが「現象管理」という異世界プログラムだよ」


 スクリーンの画面が再び変わる。


「言葉で説明しても難しいだろうから図を用いるよ。簡単に言えば、ある特定の地域をコピー、複製するんだ。その世界にツカイを飛ばすことで、現実世界への影響をなくすんだ。君が言う時間が止まった世界というのは、この現象管理によって生み出された時間の概念がない並行世界コピーワールドというわけだよ」


 複製…………時間の概念がない…………。


 イヤ、ドウイウコトダッテバヨ。


「流石に理解できないのも無理はない。とりあえず理解してほしい要点は、君が見た破壊されたショッピングモールは戻った先の世界では何事もなく営業している、もう一つは、戻った先の世界ではあれから――――――

君が時間が止まっていると思った時から時間は進んでいないということ。とりあえずこれだけでいいかな」


「はぁ…………」


「ははは、大丈夫だよ。気になるんだったらあとで七菜香に聞けばいいさ。それより、あまり現象管理を無駄に長引かせるわけにはいかないからね。とりあえず帰ってもらおうか」


「今も時間は止まったままなのか?」


「まぁ厳密にはそうじゃないけど……そう言う認識であってるよ。ほら、七菜香。起きるんだ、お兄さんだってもう起きてるんだから君がいつまでも寝てるんじゃないよ」


 そう言って少女は七菜香の体をゆする。


「んー…………あ! お兄ちゃん!!」


 俺に気が付くなり跳び付くようにして抱き着いてきた。


「よかった~! 見つけた時血だらけだったからどうなるかと思ったよぉ~!」


「ははは、苦しい苦しい。俺も七菜香が無事でよかったよ」


 俺は俺の肩にのっている七菜香の頭に手を乗せ、おもむろに撫でた。


「その分なら傷も特に問題なさそうだね。さ、さっさと帰った帰った」


 呆れる様に少女が俺達兄妹のスキンシップを遠目に見ていた。


「すまん、君の名前を教えてもらえないか」


 少女は羽織った白衣を派手に靡かせると


「リノ、ただのリノだ」


 白衣のポケットに手を忍ばせ、そう名乗った。


 


 



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