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目が痛くなるほど空が赤い。
冬の、雪が降る直前の肌に突き刺さるような寒さがいつものように上着の上から体温を奪っていく。
風が立て付けの悪いうちの学校の窓を揺らし、俺を脅かすようにして音を出す。誰もいなくなった校舎に響き渡るその音は不気味さを加速させ、風の音は静けさを一段と深くしていた。
長い廊下をゆっくりと歩き、階段を一段ぬかしでやや駆け足に最上階を目指す。
「………………」
4階。これがこの学校の最上階。だが、厳密には違う。
普段鍵がかかっていて文化祭や垂れ幕を出す時以外は解放されない屋上がある。
4階にたどり着き、ふと屋上の入口を見てみると、普段RPGのラスボス部屋前を思わせるような巨大な南京錠が取り付けられていた屋上の扉が少し空いていて、風に踊らされ開いたり閉じたりを繰り返していた。
俺はその扉を開き、禁足の地に足を踏み入れた。
相変わらず、憂鬱になりそうな真っ赤な夕日が強烈で、屋上にでて正面に陽があったために俺は目を細めた。
そしてその光線をバックにして一つ、長い影が俺に向かって伸びていた。
影の正体を見ようと、手を目の上にやって影の先を見る。
一人、女が立っていた。
顔は陰って誰だかわからないが、多分俺はこの女を知っている。よくわからないが、誰だかわからないが、知っているはずだ。
「大丈夫だよ、きっとまた会える」
ふと、女はそんなことを言った。
そして、まだ何かを話しているようだったが、耳に息を吹きかけるような風の音でそれは遮られた。
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