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理想の現実  作者: 南条 紙哉
11/15

1-10

「走って」


 七菜香の声と同時に、シールドと七菜香が呼んだ薄い膜が空気に溶ける様にして消えた。


 それを見計らってか、怪物は杖を振り上げる。


「危ない!」


 反射的に七菜香に手を伸ばすが、当然のように届かない。

 届いたところで何ができるわけでもないが

 七菜香が片手を広げると、そこに光が集まりピンク色の剣を形成した。


 そして怪物は容赦なく杖を振り下ろす。それに反応して、七菜香は剣を両手に持ち替えて振り上げた。

 その衝撃は凄まじく、俺は周囲の瓦礫と一緒に数m吹き飛ばされた。


「うぉぁ!」


「早く走って! 建物は安全じゃないから外に!」


 七菜香は怪物と競り合いながら俺を睨みつける。

 流石に俺を守りながらは戦えないということだろう。

 

 だが――――――――


「だ、だけど自動ドアはどこも閉まってて開かないんだ!」


 裏口までほぼ全て周ったからまちがいない。


 それを聞いた七菜香は、剣を片手に持ち替え、もう片方の手をさっきと同じように上に向ける。

 すると、さっき剣がでてきたときと同じ容量で七菜香の手にランチャーが現れる。そしてなぜかピンク。


 七菜香はそれを俺に向けて放り投げた。

 

「重っ!」

「それで出口を作って! 一秒以上離したらその武器なくなっちゃうから気を付けてね」


 七菜香は俺への指示もほどほどに、再度怪物に向き合い戦闘を再開する。

 しばらくの間競り合いが続いていたが、七菜香が体を翻して怪物の杖の射程から抜ける。すると、杖は地面に喰いこみ砂煙と瓦礫を空中に繰り出す。


 ここにいたら本当に七菜香の迷惑になっちまう…………!


 妹を置いて逃げるというのは本当はしたくはない。だが、残ったところで何もできないし、むしろ足手まといになるだけだ。


 今は勇気を持って逃げる時だ。


 俺は七菜香から受け取ったランチャーを抱えて出入り口へと駆け出す。


 地面には瓦礫が散乱しているが、さっきと違って視界は良好だから足をとられる危険は少ないだろう。


 動かないエスカレーターを滑るように駆け降り、一直線に出口を目指す。


「はぁ……はぁ…………」


 嘘だろ…………?


 ようやくたどりついた自動ドア前。


 すぐにでも七菜香から貰ったランチャーをぶっ放ちたかったが、その必要はなくなっていた。


 自動ドアは元々そこに在ったことすらわからない程に崩壊し、店内と外の境界としての役割を果たせなくなっていた。

 

 そして、自動ドアの代わりに俺の前に立ちふさがる一つの巨大な影。


「一匹じゃないのかよ……!」


 そこには、さっき七菜香と戦っていた怪物がいた。


 


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