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【書籍化】白の平民魔法使い【完結】   作者: らむなべ
第十部後編:白光のルトロヴァイユ

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取材対象 -ミスティ・トランス・カエシウス-

 ――本日はよろしくお願い致します。



「よろしくお願い致しますグレースさん」



 改めまして正式なご婚約おめでとうございます。

 学生の頃から仲睦まじいお二人だったので、ついにという感じですね。



「うふふ、ありがとうございます。アルムの都合もあって四年間先延ばしにしておりましたから……正直に言ってしまうと私も待ち侘びていました。結婚式の際はグレースさんも招待させて頂きますので是非おいでください」



 ありがとうございます。是非出席させて頂きます。

 それでは早速質問に移らせて頂きます。

 ――彼の第一印象は?



「真面目な人、でしょうか。ベラルタを散策してから学院に出向こうとしていた所で地図を見て立ち止まっているあの日のアルムを見つけて声をお掛けしたんです。

アルムは出身が珍しい環境なのもあって街にも人付き合いにも慣れておらず、会話も独特の間がある時があって……それでも一生懸命、礼を尽くそうとしてくださいました。それで根が真面目な人なんだなと思ったのを覚えています」



 ――知り合ったのもそのタイミングというわけですね。



「ええ、アルムも私もベラルタで初めて会った同級生はお互いですから」



 ――まるで運命ですね。



「うふふ、ロマンチックな表現をありがとうございます。ですが最初に出会った時から惹かれていたわけではありませんよ? 私はカエシウス家で婚約者候補が大勢いらっしゃっるのはわかっていましたし……平民の方とお友達にはなっても婚約するなんて当時は夢にも思いませんでしたから」



 ――では明確なきっかけがあったという事ですね?



「ええ。あ、なるほど……こうして話題を誘導していらっしゃるんですね?」



 拍手はちょっと恥ずかしいので勘弁してください。

 ――差し支えなければ恋愛感情を抱いたきっかけを教えて頂きたいのですが大丈夫ですか?



「ええ。有名なお話ではありますので隠す必要もありません。数年前、当主継承式の名目で集まったマナリルの貴族と私達カエシウス家を人質にマナリル北部を独立させる計画を立てていた私の姉によるクーデター……その時にアルムに命を救って貰ったのがきっかけですね」



 今では近代マナリル史の教科書にも載っている事件ですね。

 一番印象に残った事件を他の方にも聞いているのですが、お話を聞く限りミスティ様にとってはその事件で間違いなさそうですね。



「そうですね。カエシウス家としては不名誉な事件ではありましたし、家族の中で私は御姉様に殺されかけましたから本当に人生の岐路といっていい事件でした」



 ――では、その時に救って貰ったのがというわけでしょうか?



「はい、御姉様に敗北して私にとどめを刺そうとした瞬間、アルムが颯爽と駆け付けて私を救ってくださったのです……その場の貴族全員を凍らせていた誰もが恐れるカエシウス家の血統魔法などお構いなしに来てくれて、本当に嬉しかった」



 それは、こう、罪深いシチュエーションですね。



「うふふ、確かにそうですね。私も子供の頃憧れていた絵本の事を思い出しましたから。お姫様を助ける魔法使い……そのまんまでしたもの」



 ――友人としてしか見ていなかったのが一気に高まったという事でしょうか?



「うーん……そこではまだぎりぎり大丈夫だったんですよ。決定的だったのは事件が落ち着いた後に話した時でしょうか。

アルムは私を助けた事を誇るでもなく私の姉を奪った事だけを謝ってきたんです。アルムにとって私を助ける事は当たり前で誇る事でもなんでもないけれど、どんな理由であれ私の家族を奪って私の世界を変えた事は大切な事だったんですね。その時にもう、やられてしまいました。

礼の一つも求めていいでしょうに彼はあまりに誠実で、友人にも敵にも、そして自分にも真摯に向き合う方なんだって……それでもう、この人しかいない、って本気で思ってしまいました。彼は私の恋人で私の"魔法使い"でもあったんです」



 彼の事を話すミスティ様は幸せそうですね。



「はい、私の最愛の人ですから」



 ――そんな最愛の人と四年の間離れていたとお聞きしましたが?



「ええ、先程も言いましたがアルムは出身が少し珍しいので世情に疎く……世界を色々回ってきていたんです」



 ――ミスティ様は知っていらっしゃったんですね?



「はい、事前に相談されていました。当時、すでに恋人ではありましたから」



 ――不安などはありましたか?



「病気や怪我など体の事は心配でしたね。それ以外は全くです。アルムはきっともっと素敵になって帰ってくるとわかっていましたから」



 ――恋人を信じていたんですね。素敵だと思います。



「アルムが信じさせてくれただけですから」



 ええと、取材内容がほとんど惚気話になってしまいました。

 最後にするのはミスティ様しかいないと思っていたので多少の覚悟はしていましたが……。



「……? 最初から惚気話のつもりでしたが……? 私とアルムの馴れ初めについてですよね?」



 ……あぁ………では尺もありますので取材はこれにて終了となります。

 今日はお忙しい中ありがとうございました。



「まだ早くありませんか? まだまだお話できる事はありますよ? もっとお話できますから遠慮なさらず」



 いや本当に勘弁してください。

 今のお話とあなたの幸せそうなお顔で私はもうお腹いっぱいです。

 学生の頃からお二人がお似合いなのはわかっていましたから、どうぞお幸せにです。



「ありがとうございます。グレースさんの依頼なら喜んでお受け致しますよ。あなたは私に勇気を出させてくれた方の一人でもありますから」



 …………私何かしましたっけ?



「はい。アルムは勿論、私と一緒に卒業した皆さんは特別ですよ。

あの学院の学生だった時間は一生……私にとって大切な思い出でしょうから。他の皆さんにとってもきっと、ね」

いつも読んでくださってありがとうございます。

本編よりほんのちょっと未来のお話。長かった取材対象シリーズ。

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― 新着の感想 ―
[一言] グレースのあれがなければ結ばれなかった可能性は大きいもんなぁ 貴族やめて結婚する!という子とかいればそっちになってそうなくらい意識がやばかったし
[良い点] 物語が進むにつれ、どんどん魅力的になるミスティでしたがこれから先も更に磨きがかかっていくのですね。 幸せいっぱいの未来のミスティが見れて満足です!
[一言] 惚気話を惚気話と自覚できるようになったのは成長なのかどうなのか…
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