取材対象 -フロリア・マーマシー-
「あなた今こんな仕事してるの? 領地継いだんじゃ?」
「別に四大みたいなでかい領地じゃないんだからそっちの仕事しながらでも出来るわ。気まぐれの趣味みたいなものよ。ほら始めましょう」
「うわ……たっかい記録用魔石まで買ってる……。取材にこんなの使うなんて気まぐれじゃなくて本気じゃない……」
「いいから。本日はよろしくお願い致します」
「はぁい。よろしくグレース」
――彼の第一印象は?
「監視対象。ほら、当時は私ってカエシウス家の補佐貴族だったからミスティ様に近付いた要注意人物って感じだったのよ。家柄がどうこうとか以前の問題で平民だったのもあってね。
ミレルの事件を解決した辺りで見直したんだけど、それまでは警戒していたのもあってあんまりいい印象は無かったわ」
――では知り合ったのは?
「一年生の時のカエシウスの当主継承式……正式なものではなかったから世間的にはグレイシャ・トランス・カエシウス家のクーデター事件って言うのかしら?
当時カエシウス家の補佐貴族って全員グレイシャにいいように動かされててたのね? その関係でベネッタを狙った私達は彼と戦闘になって返り討ち。そこから仲良くなったの。
その前にもちょろっと接触した事はあったけど、監視対象への接触っていう義務的に近かったから本当の意味で知り合ったのはそこからじゃないかしら?」
――仲良くなれるような経緯ではありませんね。
「そうなのよ。もう殺されるか永遠に弱み握られてこの先真っ暗とか思ってたけど、ほんとその時いた全員お人好しでね……ベネッタがミスティ様の味方なら許そうよ、みたいなこと言ったら彼もじゃあそれでこの話は終わり、みたいな感じで同じ馬車に乗せてくれたのよ。
信じられる? 誤解していたとはいえさっきまで命狙ってたやつを普通の同級生扱いよ? 彼やベネッタと一緒にいたエルミラだけ納得いってなかったんだけど、それが普通の反応よね。
そっからはもう普通に友達みたいに一緒に動いてたわ。結局グレイシャ達からトランス城を奪還するために共闘までしちゃうんだから人生ってわからないわよね」
――彼が解決した事件に度々関わっていますが一番印象に残ったのは?
「うーん、初めて共闘したのもあってカエシウス家のクーデター事件って言いたいところだけど……直接彼の助けになったって意味でやっぱり対大蛇の総力戦かしら。
思い出したくない人も多いと思うから詳しくは言わないけど、あの時彼に私にしか頼めないんだって言われたのを今でも思い出せるわ。それで片目は見えなくなっちゃったけど、私にとっては誇らしい勲章なの。モデルの仕事する時とかオッドアイみたいでかっこいいしね」
――もし彼に再会できたら何と声をかけますか?
「そんなの決まっているでしょう?」
――というと?
「知っている人もいると思うけど私はミスティ様大好きなの。だから、何ミスティ様寂しがらせてるのよって頭を思いっきりひっぱたいてやるわ」
……あなたらしいわね。
「彼を尊敬しているし凄い人だって思っているし、色々な意味で感謝だってしてる。これは本当よ。当時から私の能力を私以上にわかってくれていた人だから。
でも、ミスティ様に寂しい思いをさせているのだけは絶対に許さない。ええ……たとえ死んだって、許してやらないわ」
お答え頂きありがとうございます。
ではこれで以上となります。今日はありがとうございました。
「あはは、どういたしまして。後何人に話聞きにいく予定なの? ミスティ様とルクスさん、それにエルミラは外せないわよね? 三人共忙しいけど予定は押さえて……あ、そっか。そういうの部外者に話しちゃ駄目なのね。ごめんごめん、じゃあ応援だけしているわ。頑張って」
いつも読んでくださってありがとうございます。
ここからは第十部後編『白光のルトロヴァイユ』となります。
読者の皆様、どうぞ応援のほうをよろしくお願い致します。




