番外 -六歳のヨナ-
第七部の番外となっています。
読まなくても本編のストーリー、設定がわからなくなるなどの影響はございません。
ヨナはすてきなおねえさんと会いました。
たぶん、まほうつかいのおねえさんです。
パパいがいのまほうつかいとはじめて会いました。
はじめてつれてきてもらったおまつりで、ヨナがわたあめをたべながらママとはぐれたことにきづいて、おいしいのにかなしくてないてしまいそうな時に……そのおねえさんはヨナのまえにでてきてくれたのです。
「いやー! いやー!」
そんなヨナはベッドにもぐってママとたたかっていました。
ホテルのベッドをぐちゃぐちゃにしちゃってごめんなさい。
だけど、きんきゅーじたいだからゆるしてください。
ママはだいすきです。
ヨナとおなじゆうやけみたいなかみとおめめはとってもきれいで、じまんのママだけど……これだけはママのいうことはきけません。
「こらヨナ……どうしちゃったの……? せっかく"氷解祈願"のためにスノラに戻ってきたっていうのに……あんなに楽しみにしていたじゃない」
「どうしたんだママ?」
「ヨナがお祭りに行かないってきかないんです……もうすぐ時間だから着替えさせたいのですが……」
「なんだって……? お祭りがまた来るって楽しみにしてたじゃないか、いったいどうしたんだヨナ」
パパまできてしまいました。
でもこれだけはだめです。
「それが……"氷解祈願"は氷みたいな飴を川に流しながらお願い事をするのよ、って教えたらこうなって……なにがなにやら……」
「ふむ……」
「いやー! いかない! ヨナいかないもん!!」
ヨナはパパとママのいうことをきかないわるいこかもしれません。
おまつりはたのしそうです。けど行きたくありません。
「ヨナ、パパとおはなししよう」
パパはヨナがわるいこになっても、やさしいこえのままでした。
ヨナはそんなパパのこえにかぶっていたシーツからかおをだします。
「…………おこらない?」
「怒らないとも」
「ヨナとおやくそくしてくれる?」
「ああ約束する。パパがヨナの約束を破ったことなんてないだろう? ほら、泣かないで……ちゃんとパパとお話しよう」
パパのいうとおり、パパはヨナとのおやくそくをやぶったことありません。
きょうのおまつりに来れたのもヨナのためにおやすみをとってくれたからでした。
パパのいうとおりおはなしします。
「ヨナはお祭りを楽しみにしていたよね」
「うん……」
「何で急に行きたくなくなったんだい? パパとママは嫌がるヨナを無理に連れて行ったりはしない。ただ行きたくない理由を教えてほしいだけなんだ。ヨナが何を考えているかを教えてほしいだけなんだよ」
「そうよ、パパの言う通り。どこか痛いところがあるなら無理に行かなくてもホテルから眺めるだけだっていいんだから」
パパもママもおこっていませんでした。
ヨナはあんしんして、すこしないてしまいます。
「だって……おまつりにいったら、これ……かわにながすんでしょ?」
ヨナはずっとにぎっていたこびんをパパとママに見せました。
あのとき、おねえさんがくれたこびんです。なかにはあめがはいってます。
「ん……。ママ、ヨナにもう氷の飴を買ってあげたのかい?」
「い、いいえ……? まだ買っていないはずです……ヨナ、これをどこで……?」
「もらったの……」
「誰にだい? お友達でもできたのかな?」
パパにそうきかれて、ヨナのめからなみだがいっぱいでてきます。
パパとママにかくしごとをするのははじめてでした。
「いえない……! いったらおやくそくやぶっちゃうもん……!」
「約束……」
「きてくれたんだもん……! ママとはぐれちゃったときにきてくれて、これをヨナにくれたんだもん! だからながすなんてぜったいだめ!!」
ヨナはまたシーツをかぶってかくれました。
パパとママにおこられてもこれだけはわたせません。
おねえさんが、しっー、といっていたからかおねえさんのこともはなせません。
おねえさんがちがうひとにへんしんできるまほうつかいだってこともはなせません。
ヨナはまたあのおねえさんと会いたいです。
なきそうだったヨナのまえにへんしんしながらきてくれたまほうつかいのおねえさんに会いたいです。
また会ったときにおねえさんがわすれてたらかなしいもん。
もしおねえさんがわすれてても、これをずっともってたら、また会えたときにおもいだしてくれるかもしれないもん。
なきそうだったヨナのあたまをなでなでしてくれたまほうつかいのおねえさんに、ありがとうっていうってきめたの。
ありがとうっていうのはだいじだって、パパとママもいつもいってる!
ヨナはあのときいえなかったから、大きくなったらぜったいにいうってきめたの!
ヨナ、おやくそくまもったよって! あのときはありがとうって!
だから、ヨナをたすけてくれたまほうつかいのおねえさんのひみつをまもります。
おとなになっても、いつまでも、あのおねえさんにまた会えるまで。
「それはヨナにとって大切なものなんだね?」
「うん……」
「ならそれはヨナがずっと持っていなさい、私達が新しく氷の飴を買おう。お祭りではそっちを流せばいい」
「……い、いいの?」
ヨナはもういちど、シーツからかおをだします。
パパはいつもとおなじやさしいいつものパパでした。
「ああ、勿論。ヨナが大切にしているものを私達が奪うなんて有り得ないよ。事情は分からないが……それは大切なものなんだろう? ならヨナが大切に持っておきなさい」
「……おこってる?」
「怒っていないとも。ヨナはちゃんと理由を話してくれたんだ。だから、怒るわけないだろう? パパが怒っているように見えるかい?」
「ううん……いつものパパ……」
「そうだろう? ほら、そうと決めれば一緒にお祭りに行こう。ずっと楽しみにしてただろう?」
「う、うん!」
ヨナはパパにてをひかれてベッドをでました。
パパとママとおててをつなげないから、おねえさんにもらったこびんをおようふくのポケットにいれました。
「そんなに大切にするなんて……よっぽどいいことだったみたいだね」
「うん!」
「さあ、ヨナは願い事は何にするの?」
「えっと……えっと……ねがいごとってひとつだけ?」
「あっはっは! そんなに願い事があるのかい?」
「うん、まずはね!」
ヨナはおまつりにいくまでに、おねがいごとをたくさんパパとママにはなしました。
でも、おねえさんとまたあいたいというおねがいごとだけははなしませんでした。
あのおねえさんがだれなのか、なにをしていたかはヨナにはまだわからないけれど……ヨナにとってははじめてのおまつりのたいせつなおもいで。
ヨナとへんしんするおねえさんのひみつのであい。
おほしさまにもわたしたくない、たいせつなたからものなのです。
いつも読んでくださってありがとうございます。
番外その一でした。




