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【書籍化】白の平民魔法使い【完結】   作者: らむなべ
第六部:灰姫はここにいる

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幕間 -もう一つ上に-

「いっつ……!」


 ダンロード領の町マルクス某所。

 調査のためにアルム達も滞在している町のどこかの家屋にクエンティ・アコプリスも潜んでいる。

 蝋燭一本の前にうずくまるクエンティはイプセ劇場で最初に見せた姿であり、その右腕にはアルムの爪が引き裂いた二本の傷跡が残っていた。これからその治癒を開始しようという所である。


「流体化した私に傷を付けるなんて……実際にやりあってみると無属性魔法とは思えない"現実の影響力"……。フフッ! すごい……!」


 治癒といっても、治癒魔法を使うわけではない。

 クエンティは信仰属性の魔法使いではあるが治癒魔法は習得していないし、なによりクエンティの体には治癒魔法が通じない。

 自身の肉体を捨てた結果、治すべきカタチが固定されないためである。

 だが、信仰属性は唯一肉体の修復に干渉できる属性。その信仰属性の血統魔法の塊であるクエンティの体は自己流の治癒が可能である。


「っぐ……!」


 無理矢理に、肉体を変化させる。

 傷とは肉体では無く自己に痛みとともに傷つけられるもの。普通に変身したところで傷は消えないが、クエンティの場合は話は別。

 肉体を放棄しても自己の精神を保てる狂気に近い自己暗示と、変革している血統魔法がそれを可能にする。


「ふっ……く……!」


 赤い泡と蒸気が立つような音とともに、クエンティの右腕の傷が塞がっていく。

 普通の体では起きるはずもない驚異的な速度での自己治癒。見るものが見れば再生にすら見えるだろう。

 しかし、その治癒は何らかの苦痛を伴うのかクエンティは顔を歪ませていた。


「ふうぅ……」


 傷が塞がり、クエンティは大きく息を吐く。

 血をふき取ると、右腕にあったはずの傷は完全に無くなっていた。


「あ、いらっしゃったんですね」


 気が付くと、後ろの暗がりにクエンティの知っている人物が立っていた。

 その人物はクエンティに質問する。


「ええ、しっかり会ってきました。自己紹介までね、以前マナリルに潜入した際に名前は売っているので……それなりに警戒はさせられたと思います」


 クエンティはその人物への問いに答えた。

 もう一度、その人物は質問する。今度は少しばかりその声が険しい。


「雇い主の意向ですから勿論。アルムくんは殺していませんよ。というより、私が殺されそうになりました。流石魔法生命を何体も相手しているだけありますね……記録用魔石の映像で彼の戦闘は何度か見ていましたが、実際対峙するとあれで無属性魔法というのだから信じられませんね」


 暗がりにいる人物――クエンティの雇い主は答えた。


「せめて殺されかけた私の前では嬉しそうにしないでくださいよ。というより、万が一があっても呪法とやらで私の動きは阻害されるのでしょう? あなたの言う偉大なる(・・・・)御方(・・)とやらの呪いで私達は契約しているわけですから」


 雇い主は頷いた。


常世ノ国(とこよ)って何でそんな呪詛魔法に……いえ、これは詮索ではなくただの興味なので答えなくてもいいのですが」


 クエンティの報告に満足したのか、雇い主は話題を変えた。

 今見た光景について。


「今のはこれは変身を利用した自己治癒です……不死身なのかって? まさか。この世界は不死が否定されていますからありえませんよ。ああ、でも……偉大なる御方がいらっしゃった世界では私の魔法で不死身になれたりするかもしれませんね」


 雇い主は一つ……クエンティが変身できるものについて問う。


「え? ああ……考えた事無かったですね……確かに目に見えるものには変身できますが……。雇い主としては嫌ではないんですか? あれだけ偉大なる御方を崇めているのに」


 雇い主は暗がりの中で、酔いしれるような笑みをこぼす。

 そしてクエンティに語った。

 自分が崇めるのは偉大なるあの御方だけ。

 他は尊重こそすれど自分が何かを言う資格は無い。偉大なる御方にさえなられなければ、自分の怒りに触れることもないと。


「そういうことでしたら……一度くらい試すのもいいかもしれませんね」


 クエンティは血をふき取り終わると、自分の右腕全体にあますことなく触れて傷が完全に無くなったことを改めて確認する。

 傷も痛みも消え、自身と自身の魔法に自信を持つ所以を感じながらクエンティは立ち上がる。


「カンパトーレで本体を見させられた方もいますから……記憶の中から引き出してイメージすることができれば可能かもしれません。いいアイデアですね。魔法生命へ(・・・・・)の変身(・・・)……成功すれば、私の魔法はまた一段階上のステージにいけるかもしれません」

いつも読んでくださってありがとうございます。

一区切りの幕間です。これは敵視点を書いた本編なのではと自分の中でもっぱらの噂です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クエンティの身体がバキバキだぁ 魔法生命への変身、、出来るのか、、 姿形を同じものにするくらいなら出来そうでしょうか? 魔法生命ができることもできそう?クエンティの解釈で変身、具体化、現…
[良い点] なるほど、流体ですか(笑) アルムも人の事言えませんが、既に人を辞めてますね。 彼とは別なアプローチで魔法生命体になろうとしている様子で。 雇い主も何となく想定出来ますが、当たって欲しく無…
[一言] 魔法生命への変身…自身を核とするのは自分が自分であるその確信一つではあるけれど、魔法生命もある種似たような在り方では有るのだし、強固な我を持ってると難しいんじゃないかしらん…自分が新しい魔法…
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