魔法生命(第五部時点)
第五部で出てきた魔法生命達の設定とおさらいのようなものです。
おさらいも兼ねているのでさらっと第五部のネタバレがありますので、第五部を読んでいる方のみ読んでくださいませ。
第五部終了時点での魔法生命の解説となります。
魔法生命とは?
異界に伝承としてその存在が語り継がれている生命の上位種。
元の世界ではフィクションだと思われており、元の世界で復活することはない。
敗北して死んだ未練を持つ存在だけが霊脈に保存され、霊脈を通じてこの世界で復活した新しい生命の形。現在、魔法生命を復活させられるのは常世ノ国の天女と呼ばれるクダラノ家だけ。
宿主との同調率によって引き出せる力にも影響があったりするので、宿主との相性が大事で相性のいい宿主が現れるまで核のまま保管されている魔法生命もいたりする。
人々の恐怖や信仰を糧にしたり、魔法生命によっては人を食べることで完全体と呼ばれる生前の力に近付いていく。一番確実なのは霊脈の接続だが、接続できる霊脈は限られるため滅多にとれない手段。
目的は人々の恐怖と信仰によって神となり、絶対的な"現実への影響力"を手に入れることで生前の未練をかき消すこと。
具体的には、完全体となった後に"現実への影響力"を極限まで高め、神という名の自立した魔法にその存在を昇華すること。この世界には神が不在のため、神という自立した魔法に辿り着いた魔法生命は今まで振るった力による恐怖や信仰によってあらゆるものを支配できる存在へと変生する。
魔法生命といえど当然意思を持った生き物であるため、その中には善性を備えている者もおり、こちらの世界の人間のためにと協力する魔法生命も存在する。
【真正偽典・忘却の悪魔】
宿主:クノーラ・ヴァルトラエル(故人)
伝承:真正奥義書、大奥義書など
常世ノ国の魔法生命に関する実験の一つ、魔法使いの遺体の宿主化が成功したことで生まれた信仰属性の魔法生命。
白い装束、白い髪に白い肌の女性の姿をしており、魔法発動時には白い翼と白い剣、白い角に尾を生やした人型の悪魔になる。
名前はサルガタナス。
正体は悪魔ではあるが、他の魔法生命と違って元の世界に存在すらせず本の上に書かれた空想の記述から、こういう悪魔がいたのか、という人々の歪な信仰によって紙の上で意思を持ってしまった幻想そのもの。
生きる、というのがどういう事かよくわかっておらず、トヨヒメという常世ノ国で知り合った少女の言葉の通り、生きる時間とは何かを知るために、宿主の知識を借りながら旅先で見つけた霊脈から魔力を補給しつつ旅を続けていた。
アルムと出会うことで自分の生きる意味を見つけるが、同時に自分の死ぬ意味に恐怖し、"現実への影響力"を極限まで無くした上で自分の能力である"忘却"を自立した魔法に変え、自分がこの世界で生きていたという記録をこの世界から忘却させようと決意して動く。
大嶽丸の下で好き勝手にされていたのもその一貫であり、自立した魔法と化す際の魔力として使う霊脈を奪われないために、霊脈に近いガザスを狙っていた大嶽丸の動きをコントロールしようとするも最後は大嶽丸に追跡されて敗北。
アルムによって大嶽丸が倒された後、自分の自立した魔法化を強く願いかけるが、アルムとの最後の会話によってそれがアルムを思った行動ではなかったと気付き、最初の生では有り得なかった師匠という在り方の幸せを噛み締めながら死亡した。
宿主はすでに死亡しているため人格の浸食を行わずにすんだが、知るはずのない宿主の記憶が断片的に再生されるせいで自分の存在への実感が希薄なまま生きざるを得なかったのに加え、元が幻想の存在ということで魔法生命にしては"現実への影響力"がかなり低い。
能力は忘却。他にも存在の認識を薄めたり、傷の治癒、結界や鍵を無効化するなど諜報向きの能力が多く、忘却を含めた能力を駆使してガザスを自由に移動していた。
【大江頭目鬼記絵巻】
宿主:アラタ・ヤマグチ
伝承:日本新潟県の大江山酒呑童子絵巻など
困窮していたヤマグチ家への支援の代わりに宿主としてコノエに売られたアラタを宿主にし、最初の四柱の後発であるメドゥーサなどと同じ世代に復活した魔法生命。
魔法発動時は白い着物を纏い、赤く染め上がった髪と赤黒い角、人を引き裂く牙と爪を持ちながらも、人型の美貌を損なわない人を惑わす毒のような容姿になる。
名前は日本三大妖怪の一つと言われる酒呑童子。
常に飢え渇き、欲望のために動く鬼という種族でありながら自身の欲望が何なのかわからず、自分を殺しに来た源頼光との語らいによって死の間際に自身の欲望が人と語らうことだと知る。
魔法生命として復活した後も、ここが二度目の死を思い知らせるための地獄なのでは? という疑問や魔法組織コノエが常世ノ国を滅ぼす様を見て葛藤した末にコノエを脱退。色々な場所で人助けをしながら彷徨い、最終的に本編の三年ほど前にラーニャの側近の立ち位置へと落ち着く。
大嶽丸の二度目の襲撃時にラーニャ達と共闘し、その策によって大嶽丸を苦しめ、大嶽丸と相打ちとなる形で大嶽丸の力を削ぐのに貢献する。
死の間際、ガザスで過ごした何でもない日々が自分の求めていたものだと改めて実感し、自身の第二の生を異界の恩人に誇りながら死亡した。
呪法は魅了。男女関わらず精神力の低い者を虜にして配下にする。だが宿主の体では"現実への影響力"も半減する上に、酒呑童子自身がこの呪法を快く思っていないので一度も使っていない。
能力は鬼としての力の解放で、本編では生前の五割ほどの力しかないので"自身を仲間とする全ての存在の身体能力と生命力の強化"だけにとどまっている。
大嶽丸クラスまで完全体に近付いていると別物となり、酒呑童子がいる世界に大江山が存在しないわけがないという自身の"現実への影響力"によって、大江山そのものと自身と死を共にした配下である星熊童子、虎熊童子、金童子、熊童子の四体を魔法生命として召喚する事が可能となる。しかし、酒呑童子と共に有名な鬼である茨木童子だけは召喚できない。
限定的であるものの、魔法生命をこの世界に復活させることが出来る珍しい魔法生命だった。本当に敵じゃなくてよかった。
・最初の四柱
【悪鬼禁獄神虚】
宿主:オビト・クサカベ
伝承:日本三重県と滋賀県の田村の草子、鈴鹿物語など
クダラノ家の忠臣、クサカベ家の長男を宿主として植え付けられた魔法生命。
魔法発動時は髪が白く変わり、頭部からは黒い角、肌には鬼胎属性の魔力が明滅する入れ墨のようなものが刻まれており、黒雲と異界の甲冑を纏った姿へと変わる。
名前は日本三大妖怪の一つと言われる大嶽丸。
常世ノ国を滅ぼした最初の四柱の一つ。核を完全に防御するといった多種多様な能力を持つのが特徴の魔法生命。
大百足のように存在そのものが圧倒的な"現実への影響力"を持つわけではないが、能力の一つである【三明の剣】の小通連と大通連の二本によって核を完全に防御している。破壊しないと核を破壊できない上に核を破壊しても顕明連によって一度復活できる理不尽さを持つ。
小通連と大通連が解放していない時は大嶽丸の両手に核があり、そこを破壊しなければいけない。顕明連は破壊できないため、一回は必ず復活する。
完全体に一番近い魔法生命で生前の八割ほどの力を取り戻しており、自分が所属していた魔法組織であるコノエや自身を復活させた親にも等しいクダラノ家すらもその力によって支配していた。
鬼らしく目の前の欲望を自分の価値ある形で食らうということを繰り返し、良くも悪くも気分次第で人間へ恐怖を振りまく災害そのもの。
見た目が気に入ったラーニャを手に入れるべくガザスに侵攻するも、見下していた人間達と酒呑童子の抵抗によって徐々に力を削がれていき、最後はアルムに敗北する。
絶大な力を持っているにも関わらず、自分が何も手に入れられなかったことを自覚しながらその魂ごと死亡した。
呪法は名前と三明の剣。完全体になると本来なら顕明連で未来や他世界を見れるようになるが、とある理由でこの世界では使えない。
能力は生前使っていた呪術。自然現象に悪意を付与したような様々な術や虚像を生み出すなど様々な能力を持つ。
目的は神の座に上り詰め、自分でもわからない何かを手にすること。その何かがわかる日は永遠に来ない。
【厄曲生誕神蝕邪龍】
宿主:トヨヒメ・ハルソノ
伝承:北欧神話、ゲルマン神話
常世ノ国での霊脈研究と呪詛魔法に関して才能を伸ばしていたハルソノ家の長女を宿主として植え付けられた魔法生命。
大百足や大嶽丸と同じく、力を取り戻せば一国を滅ぼせる魔法生命になっていたが、本編から二十年ほど前に常世ノ国で起きたクダラノ家への反乱の際、アオイ・ヤマシロ(後のルクスの母親)によって核を破壊される。
宿主がまだ幼かったのもあり、生前の二割ほどの力しか振るえない状態だったが、アオイやヤマシロ家の使用人だったカトコ・タカハシなどを含む他の反乱者を毒で侵し、他の最初の四柱の到着を間に合わせた。
死亡してもその力を魔力残滓として世界に残せる魔法生命で、ルクスの母親であるアオイの死亡は大嶽丸の呪法ではなく、この魔法生命による毒が原因。当時の医者が魔法生命による毒を判別できるわけもなく、未知の病としか診断できなかった。
属性は鬼胎属性。正体はドラゴン。
呪法は伝承。伝承のように続く執着の呪い。
能力は口から放たれる毒の吐息。生物の体を鬼胎属性の魔力で侵食し、ファフニールが死んだ後も残り続ける。
【■■■■神■■■】
宿主:???
伝承:???
酒呑童子からの情報によって、国としては既に滅んでいるはずの常世ノ国にいると判明した四体目の最初の四柱。
常世ノ国に残っている理由は島国が好きなのと、とある人物が嫌いだから。
自身は悪ではあるが怪物ではない、という信条の下に行動している。
設定回まで読んでくださってありがとうございます。
ちょっとした過去話もありつつお届けさせて頂きました。次回はこの世界の主要国家について簡単に設定を上げようと思います。
『ちょっとした小ネタ』
宿主は魔法生命が人間に対してどう考えているかで生存が決まります。
大嶽丸はそういう意味では最悪で、宿主は大嶽丸に完全に精神を破壊されているので大嶽丸の死とともに体も消滅しました。
大百足は人間を見下してはいていましたが一定の敬意はあり、宿主を騙してはいたものの彼女なりに感謝はしていたので生存しています。




