プロローグ -水鳥の涙-
私が血統魔法を受け継いだのは十四歳の頃だった。
その時に私はわかってしまったのです。
私には、お母様のような才能がないのだと。
「愛しているわ、ティア」
「……」
ミスティお母様は歴代のカエシウス家でもトップの才能をお持ちの方。
十歳で血統魔法を受け継ぎ、カエシウス家の当主として、魔法使いとしての道を歩み始めたと聞く。
お母様は自分の時の経験からか、私達を思い切り子供扱いしてくれる。
流石に十六歳になった今だと恥ずかしいけど、それでも自慢のお母様。
親としても、魔法使いとしても、貴族としても尊敬しています。
……私はそんな素晴らしいお母様の娘なのに、長女なのに。
「ティア……? お母様のほっぺにキスを返してくれないの?」
「……」
私はお母様の才能を受け継ぐことができなかった。
「お母様……もうしわげ、ありま……せ……」
「ティア? な、何で謝るの? 私は久しぶりにティアと一緒に寝ることができて嬉しいよ?」
「わたしも……で、でも……私……! お母様のようには……なれなくて……!」
「ティア……」
「お母様の……娘なのに……! 不出来な娘で……! も……申し訳……!」
十六歳になるまでずっと魔法を鍛えても、当時のお母様には全く及ばない。
ベラルタ魔法学院の前期が終わって、私はそのことを改めて思い知った。
圧倒的な成績を修めたわけじゃない。アルカ以外には魔法儀式で負けはしないけれど、お母様のように挑むのを恐れられることもない……カエシウス家の威光があるにも関わらず、前期の私はその程度の存在のまま終わった。
カエシウス家にしては。
思ったよりも。
血統魔法さえなければ。
帰郷期間直前の最後のほうにはそんな言葉がちらちらと聞こえてきた。
私は悔しくて、情けなくて、帰ってきて早々お母様に泣きついた。。
お母様に抱き着いて、泣く声を押し殺した。
お母様が私を慰めてくれることもわかっていて。
私は、才能がない上にずるい子供なんですお母様。
叱って下さい。怒って下さい。
私はお母様の娘なのに、不甲斐ない娘でごめんなさい。
私は愛されているのに、その愛に応えることもできない親不孝者です。
きっと、私はカエシウス家の次期当主に相応しくない。
より才能のあるカルミナが継ぐべきなんでしょう。妹だったお母様のように。
「ティア」
お母様は言うなれば白鳥です。
真っ白な美しさを示しながら、湖面を踊る優雅な水鳥。
誰もが見惚れ、誰もがその美しさと、自然の雄大さに負けない強さに見惚れる人。
氷雪に立っても、その強さと美しさを損なわない姿に私も憧れていた。
「ティア、こっちを向きなさい」
「おかあ……さま……」
お母様の才能を受け継いでいない私は同じ水鳥だとしても。
「ティアはね……」
――白鳥ではなく、みにくいアヒルの子なのでしょう。
いつもありがとうございます。らむなべです。
ここからは番外章「地に輝くアルビレオ」になります。
アルムとミスティの娘ティアのお話になります。




