ボランティア部の田中
ボランティア部の田中
七時限目のベルが鳴り、帰りのホームルームで先生がどうでもいいことを長々と話している。「メンタームとメンソレータムは実は別の会社だったんだよ」などと世間が認めてくれないような自称雑学を自慢げに披露している。いいから早く終わってくれよ。これは集会時の校長先生による挨拶よりもめんどくさい。他のクラスは机を下げ掃除を始めているというのに。
今日も校内には沢山のゴミが落ちている。ボランティア部の部長である田中拓哉はひとつとしてそれらを見落とすことなく丁寧に次々とポリ袋に入れていく。それに続くように部員の俺こと大川恵介もトングを器用に動かした。部員は田中と俺の2人だけ。以前何故俺が平なのに副部長がいないのかと聞いたら「いずれ入る部員のために席を空けているのさ」と田中は顎を少し上げてそう答えた。そもそも一年生である俺たちが非公認で作った部活に新入部員など来るものか。
四十分ほどで校内のゴミを全て拾い終えた。オレンジ色の光が廊下に差し込むと田中は満足そうな顔を浮かべて「ラーメンでも食いに行くか!」とラーメン屋でチャーハンしか食べない俺に言った。