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星空のビーチコーミング  作者: 上高田志郎
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 円柱の中に入ってから、ハンマースは港に帰ってやりたいことがたくさん浮かんできた。車に乗るのもいいかもしれない、安い時計を買ってもいいかもしれない。円柱の中の静けさは眠りにつく前の自分の部屋のようだった。このまま倒れないパターンもあるかもしれない。そうして蓋を開けて、二人顔を見合わせて笑いあうのかも。そんなことを思い始めた矢先、円柱が傾いて地面を転がっていくのが分かった。いよいよか、次に起きた衝撃は全然たいしたことなかった。この円柱はそうとう丈夫らしい。次の瞬間円柱の内部に光が通った。外に出たのだ。内臓が触られたような気持ち悪さと同時に落下が始まった。ハンマースは最初の数秒叫び続けたが、さほど効果がないと分かって無駄な抵抗を辞めた。落下の時間は歯医者で我慢しているようなものだ。きっとこれも終わりが来るはずだ、そう思って我慢を続けたが、それは長い長い落下だった。次の衝撃は体中が砕けたかと思った。こんなことがあってとても生きていられそうもない。生きていくということは、時にこれほどの衝撃に我慢しなくてはいけないほど価値があるとは思えない。しかし意識があるのをありがたく思った。水と空気の混ざり合った音があたりを満たした。海水が中に浸透してきた。着水したのだ。だが、あふれるほどではない。部屋で水をこぼした程度だ。成功に雄叫びを上げた途端、周りに爆弾を撃ち込まれたみたいな音がそこらじゅうでした。いろいろ上から落ちてきてるらしい。

 後は港に帰るだけだ、一番難しい所を通り過ぎたのだ。ハンマースは気を引き締めたが、予想していた波は起きていないのか、アスパラの船は信じられないぐらいおだやかにたゆったっている。これじゃ湖にいるのと変わらない。まさかまったく自分が知らないおかしなところに飛ばされたとは思っていなかったが、早く辺りを確認したかった。音がやんでハンマースは天井の蓋を開けて顔を出した。アスパラはほとんど直角にひんまがりながらも、海面に体を叩きつけてはいなかったのだ。あと少しの所でぐったりとたれさがっている。地球のうめき声のようなアスパラがきしむ音がこだましていた。蟹はそこらじゅうに浮いていたが、ハンマースの乗ってきたアスパラには興味がないらしい。蟹たちは海とアスパラを赤く染め上げていた。最後の一押しの瞬間をハンマースは見届けようとしたが、思っていたよりも早くアスパラは倒れ、海面がいっきに盛り上がり、ハンマースは慌てて蓋を閉めた。波の音がひときわ鮮やかにハンマースの耳に届いた。もしアスパラがこらえきれずに最初から叩きつけられていたら、もっととんでもない大波が起こっていたはずだ。実際は倒れる直前でこらえてくれた。ハンマースはアスパラをいとおしく感じ、感謝していた。

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