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星空のビーチコーミング  作者: 上高田志郎
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 ハンマースは港から飛行機を見上げていた。地上にまで轟音が響いてくる。アスパラの側面から斜め上空に向かって飛び立った飛行機の角度は誰の目にも成功が明らかで、さらなる進化を約束していた。次は自分もあの飛行機に乗って地上を眺めているのだ――どこか落ち着かない気持ちを抱えたまま踏みしめる山の斜面はなかなかに歯ごたえがあった。土は湯気でも見えそうなぐらい春の陽光に暖められてい、蝶まで飛んできて、慌ててカメラを構える自分の間抜けさが情けない。変わっていく港の風景を記録しておきたいものだと始めたところ、市長は喜んでキノコがいっぱい生えている場所を教えてくれた。春の山は優しく人間を迎え入れてくれいた。高みから見下ろせば、葉はまだ生えそろっていないのか、木々の隙間から見通しも悪くない。時おり激しくざわめいて慌てて振り向くと、何事もなかったように木々が揺れているだけである。自分の目には見えないがまだまだたくさんの野生の生物が生息しているのだろう。

 ハンマースはそのときギリギリまで自分が見落としをしていたことに気がついた。首に急ブレーキをかけて、自分がなぜ見落としをしていたか、そしてなぜ見落としに気づくことができたか考えてみたが分からなかった。見落としていたはずだった。それですべてが終わっていたはずなのに。自分がどたんばこんなファインプレーができる人間だとは思ってもみなかった。

「机!机!」慌てて斜面を駆け下りると、靴の中に土が水のように入ってきた。「机!だいじょぶか!」

 机は返事をしなかった。四つの足はすべて縄で縛りつけられてある。つもっている葉や土や枝を払い落した。ここ数日のことではないようだ。机はまったく反応しない。これは当たり前のことなのだが、この港では違うはずだった。

「机!どうした?何があった?」

 拳や手のひらで何度も叩いたが反応がない。しかし、音は軽やかで安心した。どこも腐ってはなさそうだ。ハンマースは縄を見ていったんはこの場を離れなくてはいけないことは分かっていた。素手では無理だ。しかし、ここを離れている間にどうなるか分からない。  

 ハンマースは必死に机を呼び続けゆすってみたが、山に自分の声が吸い込まれていくだけである。だんだん自分のやってることがおかしくなって、自分で自分に噴き出してしまった。この光景を知らない人が見たら俺を狂人だと思うだろう。無理やり引き出しを開けようとすると、鍵がかかっているのでもなく、飾りでもなかった。ちょっとコツがいるようで、それさえ分かればなんてことはない。波が寄せるように机の中でたまっていた雨水が流れて、二匹の蟹が顔を出した。ねぐらにでもなっていたのだろうか? 蟹はゆっくりと、そして素早く移動を始めると、すぐに土の中へ、草木の中へ姿を隠していった。その様子を息を止めて見つめていた。しょうがない、とにかく一度戻らなくては。ハンマースはあきらめて港へ帰ることにした。


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