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星空のビーチコーミング  作者: 上高田志郎
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 アスパラの成長はおだやかになっていたが、けっして止まることはなく、むしろゆっくりと安定していく様子は、現場で作業する男たちにもデータをほしがる学者たちにもおおいに歓迎されていた。金も人も、頭がいいのも悪いのも、とにかく世界中からアスパラに人が集まっていた。螺旋の坂道がアスパラに刻まれて、驚いたのはそのスピードである。遠くから見ている野次馬の歓声! 作業している者も、見ている者も、改めて野菜を加工しているのだと思い出した。何と人類にやさしい素材だろう! 歓声は、冬の終わりを予感させるような温かい日に似ていた。誰もが驚き、喜び、心から感動していた。ついに人々は、アスパラの下でいかなる対立も雪のようにとけていくのを目にした! 工事が加速したのは言うまでもない。世界中の文化文明の栄養という栄養が、血脈を通じてアスパラに流れていくようだった。

「市長、覚えてますか? 私たちは、最初あの島に道路を通そうとしてたんですよ。できたらずいぶん便利になるだろうって。」

「そうだ。あの考えは冴えてたな。今までで一番冴えてたんじゃないか? それも、みんな全員がそう思った。全員が冴えてた! この港の連中がだ、後にも先にもこれだけだ、奇跡だよ」市長の老化はいったん止まると、そこからまた若返りだしたようだった。何を食ってどれくらい寝ているのか分からないが、おそらくもう気苦労もないからだろう。肌ツヤはデキのいい果物のように内部からほのかに光っているみたいだった。それでも歩くのは遅くなっていて、ハンマースは市長より先になってしまうことがあった。寄り添うよりは待っている方がいいだろうとハンマースは思っていた。

「だいぶ昔のことみたいだ。二、三年まえか?」

「そんなところです」ハンマースは毎日があまりにもおなじことの繰り返しで人生に飽きがきていた。どこを切り取ってもまったく同じ断面図のような過去の日々のわずかな違いや目印をたよりに記憶をさかのぼってみれば、正確には一年前のことだった。

 二人は夜道を歩きながら海の方へと下って行った。ところどころ窓には灯りがついていて、賑やかな声が水の中を通ってきたように漏れ聞こえてきた。港も人が増えてきているのだろう。とはいえ、もう布団の中で眠っていなくてはいけない時間だった。今では外灯も増えて、夜道を歩くのも以前より安心できた。車もまったく走っておらず、風が止み、家が少ない道を歩けば、二人の足音だけがこの世界に存在する。秒針のような二人の足音が、魔法のように壁の向こうの耳元に届けられる。ハンマースは、いつも自分が寝床で知らない誰かの足音を聞く方だったので、不思議な気がした。この瞬間、布団の中で目をつぶっている自分と、外を歩いている自分の二人が存在しているような気がした。

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