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我らが故郷であるこの港町は、かなり古くから漁港として栄えていたにもかかわらず、大国の要所にはならなかった。この港はいかなる侵略もされたことがない。大陸を分けて民族が争いを繰り返し、統合と分断、そして同化を繰り返してきた歴史の中で、この港は永遠に日なたで昼寝をしていたようなものだった。小さな港ではあるが、なかなかのものだとはこの港に住んでいる人間たちだけが思っていればいいことである。大漁が当たり前で漁がまずしかったことは一度もないはずだ。少なくとも私は聞いたことがない。大漁すぎてこまるぐらいだが、余った分はよその連中が買っていくから問題ないのだ。
我々の祖先がどれくらい昔からこの港に住み着いたのかははっきりとしていない。そんなものは調べようがないのだ。誰もそんなことを調べようとは思わない。誰か余所の学者が調べるというなら喜んで協力するつもりだ。きっと満足のいく成果は上げられないだろうが。一つだけはっきりしていることがある。それは、この港に住む人間の暮らしは、大昔も今も根本的な所では大きく変わっていない。朝起きて、昼食べて、夜眠る。その間働いたり、のんびり過ごしたりしている。人口の流動が大きくないのも特徴だろう。全員顔見知りのような気がする。我々は百年前千年前とほとんど変わっていない。つまり次の百年も大きく変わらないと言っていい。
山を背にしたこの港は土地も豊かでいい野菜が取れる。歴史上、遊牧民と呼ばれる集団がこの港に立ち寄った際、何人かはこの港に定住することを選んだそうだ。そうしてゆっくりと文化の交流が進み、生活は幸福に進化していった。
船がより広大な海を目指し次々と出航していくのには時間がかかった。なぜなら土地の人間たちには決定的に野心がかけていたのだ。意図的であったのかと疑いたくはないが、この土地の人間たちは進化の速度を早くしようとはしなかった。他のあらゆる土地で競い合っているのを知ってから知らずか
机はどこかで時計の針が動いていると思った。音の大きさからしてずいぶん大きな時計だろう。しかし、その針の音は規則正しく時を刻んではいなかった。誰かが机を叩いているのだ。叩いている本人だけが得意の上機嫌で音楽家のつもりらしい。いらだちを覚えながらも、すぐにまた無意識の波がやってきて、夜の闇のように余すところなく覆いつくしてしまう。
音楽家ははや飽きてしまったのか、やってくる静寂。
どこかで空気が破裂した。静寂の中のただ一つの音。港の連中の眠りをさましそうなものである。再び静寂――また再び音が鳴る。この夜のどこかに針をさし、穴でも開けようとしているのか。夜の間は、想像することがすべて現実になりそうなひとときがある。それは一瞬のようで長く。こんなことは初めてではない。この音は前にも聞いたことがある。この音の正体はなんだろう?
空気の変化で家を組んでる素材が生き物の用に呼吸するときのくっついたり離れたりする音だと人は言う。それにしては、意志を持ってこちらにちょっかいを出しているようにしか聞こえない。毎夜、夜は正しくやってくる。いつも正解にたどり着きそうな時に深い眠りがやってきて、体をひっぱってゆく…。




