prologue
(何か……何か言ってくれよ……)
光堂暗来は何かにすがるように、心の中で呟いた。
チェンジ・ワールド
そこには「魔法」も「魔獣」も存在する。
その世界の住人達は生まれた時、「精霊」や「竜」などの頂上の存在と「契約」が結ばれる。
それにより人々は魔法を行使したり、魔獣と戦う力を身につける。
しかし生まれた直後に結ばれるのは「仮契約」と呼ばれる、ただ契約相手と細い繋がりを持つだけのものである。
では人々はどのように契約相手から力を与えられるのだろうか。
それは十歳の時に行われる「十の儀」の時である。
この世界では十歳になると、神殿へ行き、以降の人生を幸せに過ごすために神に祈る儀式がある。
それが「十の儀」である。
その儀式に終わりに、一分間、鏡に写った自分と向き合う時間がある。
その最中、契約相手が語りかけてくるのだ。
自分が何者で、どんな力を与える事ができるか。
力を与える代わりに、自分に何をくれるか。
大抵の契約相手は、寿命の一部――――――つまるところ魂の一部を要求する。
人々は魔法を使えるようになるのなら、そんな事は些末なものだと自分の魂の一部を引き渡す。
こうしてお互いの希望の擦り合わせが終わり、正式に契約を結ぶのだ。
大半の人々はこれにより力を得るのだが・・・・・・。
「では、君の十の儀はこれで終わりだよ」
司祭はまだ十歳である暗来に優しくこう告げた。
――――――それが残酷な言葉とは知らないで。