偽善者シンドローム
今回も新キャラさんでます。
前回ちょびっとだけ出ていた人です。
「やっぱりおかしい。」
デスクに齧り付いて、二枚の記事を読む。
「なんで、先輩も、編集長も調べる許可をくれないのよ‥‥!」
ギリッと歯を食い縛り、彼女は呟いた。
彼女の名前は人吉正奈。氷井野昌子の後輩で新人の記者。
彼女が手にしている二つの記事、それはーー
「明らかに二年前の交通事故は不審な点が多すぎる‥‥!!この前の飛び込み自殺もそうよ‥‥!」
縄が出てきたから自殺? 何よそれ!!
叫びながら記事をデスクに叩きつける。
「真実を見つけてあげないと‥‥! この被害者の女性も浮かばれないわ!!」
すでに他殺としか考えていない(事実そうなのだが)彼女は編集長からの冷たい視線に気付くことはない。
気付くことなく彼女は騒ぎ続ける。
「二年前のも‥‥!! 犯人は捕まっているけど精神に異常があるから罪に問えないって‥‥!! 不自然よ‥‥!!」
頭を抱えながら叫んでいる彼女をたしなめる氷井野は生憎ここにはいない。
ここにいたら面倒なことを‥‥と舌打ちの一つは軽くしたであろう。
「この二つの事件の共通点は『高坂千尋』。この男が何かを握っているはず‥‥。あと、今年に入ってから行方不明になっている義妹の『高坂観月』は一体どこにいるのかしら‥‥!」
どこで手に入れたのか不明だが二枚の写真を手にして人吉は顔を歪める。
忌々しいぐらいの美青年だ。
「まずはこの男の家を調べないと‥‥!! 何かあるはずよ‥‥!」
そう言うやいなや人吉は鞄を持って編集局を飛び出した。
ーー彼女の頭の中からは編集長と氷井野の忠告はすっぽりと抜けていた。
人吉さん逃げて超逃げて。