変わる心
今回は浄化回です。
男二人の黒さに比べてこの子は‥‥。
ーー最近、おかしい。
前までなら、兄に抱きつかれても恥ずかしいだけだった。
けど、最近は違う。
抱きつかれると、ドキドキする。
それは、変わらない。
けど、今は。
「観月、何やってるの?」
「!? 兄さん、いきなり抱きつくのはやめて。」
背中から抱きつかれて反射的に拒絶をする。
「えー‥‥。」
兄は不満げな声を出しながら抱きつく腕に力を込めた。
ほんの少し苦しくて、腕を叩く。すると、兄は苦笑して腕を放した。
(あ‥‥。)
離れていく体温が寂しくて、思わず顔を歪める。
「‥‥何でそう‥‥かなぁ。」
「え?」
「何でも無いよ。」
そう、
兄に触れられるのが恥ずかしくて、拒絶するのにーー
兄の手が離れるのが、寂しくて堪らないのだ。
「‥‥別に、嫌なわけじゃ、ないよ。」
ポスリと兄の肩に頭を預ける。
こんな態度も、以前の自分からは考えられない。
兄の体が一瞬身じろぐ。
「‥‥しょうがないなぁ。観月は。」
ほんの少しの身じろぎが、まるで拒絶されているみたいで、なのに、優しく頭を撫でる感触が、とても心地よくて。
(‥‥ねえ、)
兄さんは、私のことをどう思っているの?
邪魔だって、思っているの?
それなら、そういってよ。
(‥‥でも、)
もう、離れる事なんて、できない。
(今は、いいや。)
兄がそばにいてくれる。
それだけで幸せで、私は眠りに落ちていった。
(兄さん、‥‥大好き。)
その想いの名を、知るのはもう少し先のこと。
肩に頭を預け、眠ってしまった観月に、千尋は微笑んだ。
「ーー愛してるよ、観月。」
そう、額に口づけながら呟いて、千尋もまた眠りに落ちた。