ヤンデレ兄とストーカー
今回は残酷ありです!!
苦手な方はUターンおすすめします!
一目惚れだった。
柔らかな髪に綺麗な茶色の瞳に耳に心地よいテノールに彫刻のように完璧なその笑みに。
彼ーー高坂千尋に心を奪われた。
「高坂さんってかっこいいわよねー。」
「ほんっと。もーそこらのアイドルなんて目じゃないわ。」
沢山の女の子たちに騒がれても眉一つ動かさずに微笑んでいる彼。
何で皆分からないの?
彼は、鬱陶しがっているのに。
あんなにも嫌がっているのに、どうして分からないの?
‥‥私だけだ。
私だけが、彼のことを理解できている。
彼に相応しいのは私なんだ!!
「君、だれ?」
ねえ何で? 何で私のことを知らないだなんて言うの?
あなたに相応しいのは私しかいないのよ?
なんでそんな興味のなさそうな目で見るの!!
「知らねーのかよ。あの人はお前たちなんかのことどーでもいいんだよ。むしろ認識すらしてねーよ。」
うるさいうるさいうるさい!!!
なんであなたがそんなこと分かるのよ!
そんなわけないじゃない!!
だって私はなんでも分かるのよ!!
「‥‥うっわー。何それ、ドン引きなんだけど。もうしーらね。勝手にすれば?」
言われなくてもあなたの言葉なんか!!
彼には妹がいる。
引きこもりの。
そんなの相応しくなんかないわ。
しかも血が繋がってないだなんて!!
同情でもして貰うつもりなの!? 許せない!!
大丈夫よ千尋。私がその女をどうにかしてあげるから。
毎日毎日電話する。
電話が取られることはない。
ありったけの殺意を込めて罵声を浴びせる。
あんたなんか千尋に相応しくない、分を弁えろ!!
でもあの女はまだ千尋に寄生している。
千尋も不機嫌な顔をすることが多くなった。
可哀想な千尋、すぐに助けてあげるから!!
今日はどしゃ降りの豪雨。
だから、今日こそ千尋を解放するの。
いつものように彼の後をつける。
鞄には縄を入れている。
千尋の目の前であの女の首を絞めてあげる。
千尋の家の、近くの踏切の前。
そこを千尋は歩いていた。
ああ、千尋!! 後少しよ!! 後少しで解放してあげる!!
すると、急に千尋は走りだした。
まって!!
急いで追いかける。
踏切まで後少し、
すると千尋の姿が消えた。
雨で視界が悪い。
きっと踏切のむこうにいるんだわ。
カンカンと警報を鳴らす踏切の中に私は入った。
ーー背中を押されて。
「バイバイ。」
え?
なんで
あなたがそこに?
サイレンが鳴る踏切を後にする。
赤い光が周りを照らす。
「ねえ聞いた? 飛び込み自殺ですって。」
「やーねぇ。」
野次馬達とは逆の方向に俺は歩く。
その時、電話が鳴った。
「もしもし?」
『‥‥千尋兄さん? いま、どこ?』
弱々しい、彼女の声。
最近かかってくる電話のせいで、ますます俺に依存してくれた愛しい観月。
「今? 踏切だよ。後少しで戻れる。」
『‥‥そっかぁ。』
安心したように柔らかくなる声。
あの女は散々観月を傷つけて、俺に纏わり付いててかなり鬱陶しかったけど、それだけは感謝してやってもいい。
‥‥まあ、許さないけど。
「じゃ、またね。」
『‥‥もう少し、ダメ?』
「!? ‥‥駄目なんかじゃ、ないよ。」
ーー家に着く頃には、千尋の頭の中から“電話”のことは消えていた。
‥‥‥‥犯人はだーれだ?