でんわ
今日は地獄だー(´;ω;`)
死んできます。骨は拾って下さい‥‥。
ーープルルルルル。
ビクリ。
ーープルルルルルルル。
震える。
ーープルルルルルルルルル。
くる。
観月は千尋のベッドに入り、体を丸めて耳を塞いだ。
『ねえ!! いるんでしょう!! なんで出ないのよ!? 千尋に甘えるのもいい加減にしなさい!!!』
やめて、やめてよ。
『まったく、千尋も迷惑しているのが分からないの!? あんたなんか千尋に相応しくないのよ!! 早く出て行きなさい!!』
耳を塞いでも届く罵声。
悪意を、殺意をむき出しにして襲いかかる言葉たち。
それは、観月のトラウマを刺激するには充分過ぎるものだった。
ーーどのぐらい、たっただろう。
布団越しに触れてくる、優しい温度に気がついた。
「‥‥観月、大丈夫?」
「にい、さん。」
「おいで。」
優しく微笑みながら手を伸ばす千尋の胸に、観月は顔を埋める。
小刻みに震える彼女を愛おしそうに千尋は目を細める。
「にい、さん。あのでんわ」
「‥‥ほんとに心当たりはないよ。ていうよりも、まず観月以上の子なんていないから。」
ーー毎日、毎日2週間程前から鳴る電話。
いつも兄が帰ってくると終わるそれは、自分から兄を取っていく悪魔に観月には思えた。
「にいさ、どこにも行かないで‥‥!!」
もう、自分には彼しかいないのに。
兄までいなくなったら、どうなってしまうか分からない。
「行かないよ。どこにも。‥‥まってて、すぐにどうにかするから。」
そういって、怪しげに笑う千尋に、観月が気づくことはなかった。
ーー今日も、来るのだろう。
そう思って観月は体を震わせる。
もし、電話が鳴ったら、出ようと拳を握る。
自分にとって、兄は絶対なのだ。
だから、そんな兄を取っていこうとする人は許せない。
だから、どうにかしようと必死で勇気を振り絞る。
ーーしかし、いつまで経っても電話がかかってくることはなかった。
おかしい。
それが、不気味で、怖くて堪らず兄に電話をする。
『もしもし?』
「‥‥千尋兄さん、いま、どこ?」
『今? 踏切だよ。もう少しで戻れる。』
「‥‥よかったぁ。」
思わず頬が緩む。
兄が、帰ってくる。
少しでも兄と繋がっていたくて、話を続ける。
『じゃ、またね。』
「‥‥もう少し、ダメ?」
『!? ‥‥駄目なんかじゃ、ないよ。』
しょうがないなぁ。
そう呟きながら兄が向こう側で微笑んだ気がした。
ーーその日から、電話がなることは無かった。
戦地へ赴くための気合いを入れるために置いときます。
‥‥無事、終わったらもう一本投稿するんだ。