ニート妹の回想
いつから今日の投稿が1つだけだと錯覚していた‥‥?
今回は観月ちゃんですねー。
ーー父の再婚を知らされたのは婚約者を紹介される1ヶ月前のことだった。
仕事第一な父がそう言うということは相手が取引先か、上司に関係する人か、或いは父自身の体面上に必要だということだろう、ということはすぐに分かった。
家庭を見向きもしない父に愛想を尽かして母がいなくなったのは私が5歳の時。
今でも、思い出せる。
どこかへ行こうとする母に必死に手を伸ばし、振り払われたことを。
それを知ったとき、父は顔をしかめて、面倒なモノを残して‥‥。と呟いた。
ーー私は、いらない子なんだ。
だから、お父さんもお母さんも私を置いていくんだ。
幼いながらに、それを理解した。
だから、必死で頑張った。
でも、勉強や運動で学校で上位を連ねるようになっても父は私に見向きもしなかった。
年々母に似てきてる、それだけで私は自分の父に嫌われた。
父の恋人は、美人で、派手な人だった。
明らかに父よりもお金と結婚すると見え見えの彼女の横には、一人の男の人が立っていた。
相手に、息子がいることは知っていたが、これ程綺麗な人だとは思わなかった。
明るい色の、少し癖のついた髪に茶色の瞳。
芸能界等に興味はないが、俳優やモデルをやっていても可笑しくないほどの美青年だった。
「‥‥高坂観月です。よろしくお願いします。」
緊張で少し震えてしまったが、彼はそれを知ってか知らずか、優しく微笑んだ。
「‥‥新橋千尋です。よろしくね、観月ちゃん。」
名前を呼ばれたのは久しぶりで、思わず泣きそうになった。
「観月ちゃんは何が得意なの?」
「観月ちゃんは何が好きなの?」
「観月ちゃんは可愛いね。」
「観月ちゃんは何か欲しい物はないの?」
父が結婚してから、彼は私の兄になった。
毎日のように私について質問され、最初はどうすればよいのか分からなかった。
なぜ、私なんかに気を遣うんだろうか。
戸惑いながらも質問全てに答えると、可愛いなんて言われて、
恥ずかしくて、何だか甘い気持ちになって、それが嫌で必要以上に否定した。
「私は、父に嫌われています。だから、私に構わないで下さい。」
父に嫌われている私を気遣うということは、父に嫌われることを意味する。それを伝えても彼は微笑むばかりで私を構い続けた。
ーーいつしか、それが当たり前になっていた。
どれ程父に冷たくあしらわれても、兄は私を甘やかす。
甘やかされて甘やかされて甘やかされて甘やかされて甘やかされて甘やかされて、
いつしか私は兄がいないと落ち着かなくなってしまっていた。
ーーそんな中、父と義母が死んだ。
轢き逃げされたのだ。
悲しかった、苦しかった。
せめて、娘として一言認めて、そう扱って欲しかった。
母には、男がいた。
私は、その男の子供だと父に思われていた。
学校で、嫌がらせをされるようになった。
それぐらい、どうってことなかった。
だって、家に帰れば兄がいる。
「観月、大丈夫?」
「何かあったらすぐいうんだよ?」
「俺は何があっても観月の味方だからね?」
まるで麻薬のような、その言葉に救われた。
私を信じてくれるのは兄だけ。
認めてくれるのも、優しくしてくれるのも愛してくれるのも兄だけなんだと思い込んだ。
抱きしめられても、額に軽くキスされても、嫌ではなかった。
兄しかいらない、兄以外どうでもいいし信じられない。
だから、私は今日も何も知らないふりをして過ごす。
兄に嫌われることなんて、したくない。
兄が、千尋兄さんが私に知らせないこと、教えないことは、私は知らなくていい。
だって、私の世界は兄さんだけなのだから、
彼が要らないモノは、私にとっても要らないモノ。
この子も手遅れなぐらい歪んでいますね‥‥。
どーしよーもないですよもう‥‥。
感想待ってまーす(∩´∀`∩)