ヤンデレ兄の回想
もう短編投稿が面倒臭くなったので連載にします。
時系列とか気にせずにバッーーーと書きたいときに書きたいだけ書くスタイルに変更します。
ーー母の再婚が決まったとの話を聞いたのは、婚約者を紹介される前日のことだった。
ショックなんてものはなくて、ああ、またか。という思いの方が強かった。
とっくに自立して職についていたし、母のことなんてどうでも良かった。
感謝なんてしたことない。むしろ嫌悪しかない対象だった。
何度も何度も再婚を繰り返し、その度に人より見目の良い自分は相手の男に害された。
それを知っても、何もしなかったのだから。
いつしか、何も感じなくなっていた。
ずっと、何かが足りなかった。
ずっと何かに飢えていた。
ーー彼女の第一印象は、綺麗な女の子、だった。
緊張気味に会釈をした白と黒のワンピースの、眼鏡をかけた、黒髪の少女。
横にいる険しい顔つきの父親とは違い、16歳という年齢よりもずっとその横顔は幼く見えた。
「‥‥高坂観月です。よろしくお願いします。」
何番目か忘れた父親の挨拶の後に告げた小さな声は、綺麗なアルトで、
ーー思えばあの時から、きっと心を奪われていた。
「‥‥新橋千尋です。よろしくね、観月ちゃん。」
心の底から笑えていたことに、その時は気が付かなかった。
「観月ちゃんは何が得意なの?」
「観月ちゃんは何が好きなの?」
「観月ちゃんは可愛いね。」
「観月ちゃんは何か欲しい物はないの?」
気がつけば彼女のことを知りたがっている自分がいた。
その質問全てに戸惑いながらも答えてくれる彼女を愛しいと思う自分に気がついた。
可愛いというと真っ赤になりながら否定する彼女を欲しいと思うようになった。
彼女の望む物全てをあげたいと望んだ。
父親に嫌われている、と悲しんでいる彼女を甘やかしたいと渇望した。
甘やかして甘やかして甘やかして甘やかして甘やかして甘やかして、
デロデロになるまで自分に依存させたくて堪らなかった。
飢餓感なんて、とっくに消えてなくなっていた。
生まれて初めて、母に感謝した。
彼女に、観月に出逢えた。それだけでうまれてきてよかったと思った。
でも、そのうちにそれじゃあ全然足りなくなった。
観月には俺だけでいい。他の誰かになんて興味を持たせたくなんかない。
独占したい、誰の目にも触れさせたくなんかない。
もっと、
モットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモットモット!!
そのためには誰が邪魔だ?
ーーああ、そうか。
答えは単純。
手順は簡単。
そして結末は望み通り。
母も、義父も簡単に消えた。
後は観月を閉じ込めるだけ。
ーーほどなくして観月は怪我をして帰ってくるようになった。
隠していてもすぐ分かる。
だって、ずっと見ているのだから。
最初は腹が立って仕方なかった。
観月を傷つけて良いのは俺だけなのに、観月が少しでも関心を、どんな感情でも寄せる相手なんて殺したくて堪らなかった。
ーーけど、我慢した。
だって、俺が何もしなくても観月はドンドン俺に依存してくれたから。
俺は、ただ毎日囁くだけで良かった。
「観月、大丈夫?」
「何かあったらすぐいうんだよ?」
「俺は何があっても観月の味方だからね?」
そして、二年をかけて、彼女は俺以外を信用しないようにした。
俺は、ようやく手に入れた。
この幸せを、手放す事なんて絶対にない。
ーーああ、そういえば。
観月を傷つけた女の子たち、行方不明になっちゃったんだっけ?
まあ、でも。
そんなことはどうでも良い。
観月は優しいから、それを聞いたらきっとショックを受ける。
だから、絶対に耳に入らないようにしないと。
観月を傷つけるモノなんて、俺以外いらないんだもの。
こいつ、歪んでる!!
重いよ愛が!!
観月ちゃん逃げて超逃げて!!
‥‥てもう手遅れだよ!