第14話
「さて、次はお主じゃ」
「はい、マスターガリド」
タクマの次に恵子へステータスを開示するように指示を出すガリド。恵子は指示を受け、ステータスを皆に開示する。
[Basic Info]
Name:Keiko Shinni / 深居 恵子
Race:Lost Human
Age:35
Lv:10
Sex:Male
Class:Hunter
Role:DPS
Talent:None
[Status]
HP:264
MP:160
DPS:100.3
Ranged Attack Power:88.88
Base Ranged AP:88.88
Bonus Ranged AP:0
Armor98.88
Base Armor:98.88
Gear Armor:0
Magic Armor:0
[Ability]
STR:24
AGI:49.44
STA:26.4
INT:20
SPI:16
[Unique Skills]
Unique Ray Weapon:-
Unique Ray Armor:-
Unique Ray Magic:-
[Attribute]
Main Attribute:-
Crystal Color:-
[Active Skills (Lv)]
Shot:1
Fire Shot:1
Sneak Shot:1
Healing Shot:2
[Passive Skills (Lv/Max.Lv)]
1H Sword:115/120
Bow:130/130
Defence:73/80
[Weapon (DPS/WS)]
[Rare] Bow of Priestes:80/0.8 Agi+3%
[Armor]
なし
[Professional Skills (Lv/Max.Lv)]
Cooking:105/120
Leather Smith:100/100
Black Smith:100/100
Herbalism:65/100
「――ふむ、何ともまぁお主はそこのと違って、器用じゃの。要領もえぇようじゃ」
「そこのって……俺、だなぁ。はぁ」
「タ、タクちゃんも十分に凄いよ! 気を落さないで」
ガリドの、そこの扱いに落胆し恵子に慰められるタクマ。しかしガリドの言うとおり、この限られた期間の中で多才ぶりを発揮している恵子と比べたら、その扱いにも納得が出来る。
そもそも、元々の出来が違うのだ。何のとは言わないが。
『ご主人! ご主人はとっても尊敬できるご主人なのです! 保証するのです!」
「あ、あぁ。ありがとな、ソル」
ソルが懸命に主人をフォローするが、主人の身としては飼い犬にフォローされる時点でお察しである。
「ともかくじゃ、お主が製作した弓じゃが、等級がRareなのは上々じゃ。まだ鍛冶師スキルも低Lvじゃというのに、大したもんじゃ。儂の提供した素材を使うとったとしても、な」
「ありがとうございます、マスターガリド。お陰様で何とか一本、理想通りの者を拵える事が出来ました」
「うむうむ、良いのじゃ。当面はお主の武器の更新は必要無いじゃろう。その間に、防具製作も身に着けると良いじゃろう。何、お主ならすぐじゃろうて」
「はい、マスターガリド。私は重装備には適性の無い様ですので、Leather Smithで自作して革装備で身を固めたいと考えています」
「うむ、それが良いじゃろ」
この世界イリスに存在するすべての物には等級が存在する。それは主に希少性を指すが、その者が保持するレイの保有量の質や密度を示す場合もある。ちなみに、この世のすべての物はメニューを扱えるものであれば、その物の情報――名前や能力値、付与効果など――を確認する事が出来る。
等級には主に低い順から、Normal、Common、Uncommon、Rare、Uniqueとある。恵子の製作した弓はRareなので、その希少価値は高い。
但し物にも等級だけではなく格があり、格の低い――低Lv者が使用可能な――武具と、格の高い――武具では、当然格の高い武具の方が基本的に性能は高い。要は、この先等級がRareじゃなくても高Lvの弓の方が威力には期待できる、という訳である。
「タクマ、言い忘れておったが。お主は当然重装備の適性はあるが、革装備ほど手軽に製作できる物では無い。材料を自力で集められるようになるのも、当分先じゃろう」
「はい、承知しています」
「じゃが、防具なしじゃと恵子よりお主の方がArmorが低いままじゃ。防具があればあっさりひっくり返るがの」
「はい」
実際、素のステータスのままでは軽装を基本とするクラスである恵子に比べ、現状では不思議とタクマの方が低いのだ。後衛職より防御力の低い前衛職――正直、これはいただけない。
「かといってこのままなのも難儀なもんじゃ。じゃから、道中のとある場所で防具を確保せい。それが最も手っ取り早いじゃろう。当然、ちゃんと用意するまでの繋ぎじゃがな」
「……確保、ですか?」
「うむ。まぁ詳細は後でええじゃろ」
「そうですね、では後程改めてお願い致します」
ガリドの言葉に、確保の手段についてどんなものか想像しながらタクマは頷いた。――手荒な方法じゃなかったら良いなぁ、などと淡い希望を抱きながら。
「うむ。――すまんの、では恵子の話に戻そうかの」
「はい、マスターガリド」。
話は恵子についてへと戻る。
「お主の製作した弓じゃが、武具性製作者のスキルレベルが低い内に、等級の高い武具が製作できた場合じゃが……その場合の殆どが、その武具の性質は製作者本人の性質を表している事が多い」
「そうなのですか……では、その性質とはやはり――」
「うむ、癒しの力じゃろうな。お主の|A(Active)|S(Skill)のHealing Shotは、その弓に慣れたら出来るようになったのじゃろう?」
「はい、そうです。弓でタクちゃんと狩りをしている際に、自然と出来るようになりました」
恵子の持つHealing Shotは、癒しの力を矢の形にして飛ばすことができるスキルだ。タクマ達との狩猟の最中、傷ついたタクマ達の傷を癒したいと考えていたら、いつの間にか出来るようになっていた。
「うむ、やはりか。恐らくじゃが、そのBow of Priestesに宿った性質を刺激を受け、お主が能力に目覚めたのじゃろう」
「――なるほど」
「そして、その弓の性質とは即ち、お主自身の持つ性質でもある。つまりは、お主には癒しの力があるという事じゃの」
「やっぱり、そうなのですか」
「ふむ、流石にお主は気づいておったか。お主のクラスはHunterが発言しておるが、Healer系統のクラスにも適性を持っておる。この先Lvが上がれば上級クラスあるいは固有クラスになれるかもしれんの」
「上級クラス、ですか」
「うむ。才能あるものは九種ある基本職のLvが上がると、その才能によって上級職や固有職になる場合があるのじゃ。もしかしたらその弓の名前、Bow of Priestesにある巫女のクラスを得るかもしれんの」
ガリドはそう話すと気楽にふぉっふぉふぉ、と笑い声をあげた。
「私が、巫女ですか。少し、気恥ずかしいですね」
「なに、あくまでも可能性じゃ。慢心することなく研鑽しておけば、結果は後からついてくるわい」
「それも、そうですね。ありがとうございます」
「うむ。――さて、お主らのステータス確認は良いじゃろう。然るに――」
『待ってなのです! まだなのです!!』
ガリドが二人のステータスからアドバイスを終え、締めくくりに入った。しかし、次の出番は自分だとウキウキ尻尾を振りふりしていたソルが、ガリドに待ったをかけた。
「――犬っころか。すまん、忘れとったわい。じゃが、お主にできる助言は無いわい。お主の能力はお主の成長でしか成立せぬ。精々、栄養付けて鍛錬に励むことじゃな」
『――しょびょん、なのであります……』
「ま、まぁまぁソル君。私が後できちんと見てあげるから、ね? それとも、私じゃ不満かしら?」
『そんな事は無いのであります! 奥様、宜しくお願い致しますなのです!』
「えぇ。任せてね」
ガリドの言葉に大きくダメージを受けたソルであったが、見かねた恵子が助け船を出す。タクマはともかく、恵子ならばある程度の助言は可能であろう。
恵子の言葉に、ソルはあっさりと元気を取り戻していたが。
「ま、そんなわけで、じゃ――」
ガリドが気を取り直して話を続けようとしたその時。
『――そこの四人、武器を地面において一歩下がれ。動くでない』
――高らかで涼やかでありながら、威厳のある声が大音量で頭上から虹色の光のカーテンと共に降り注いだ。