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自転車を押して夜道を歩く。
通りがかるケーキ屋は
いつものイートインは開いてなく
ホールケーキの販売のみに店員が集まる。
自転車を押して夜道を歩く。
通りがかる喫茶店は
いつものノートを開く学生の姿は少なく
笑顔と包み紙を交わす男女が集まる。
胸にチクリとささる感覚が
破った約束を思い出させる。
今はその約束を誰が守っているのだろう。
未だ痛みを覚えるのは
その約束が守りたかったものだから
痛みだけが、ただ自分だけにその事を教えてくれる。
曇った空を眺めて夜道を歩く。
この程度の寒さでは降っても雪にならないな。と考える(おもう)誰かの声がする。
曇った空を眺めて夜道を歩く。
月が見えなきゃ口実がひとつ減ってしまうのかな。と嘯く(おもう)誰かの声がする。
お腹がキュッとしぼられる感覚に
崩れた信頼を思い出す。
今はその信頼を誰が受けているのだろう。
未だに痛みを覚えるのは
その信頼が応えたいものだったから
今も痛みは自分の目標を示してくれる。
じんわり感じる痛みに
嘲笑いかけながら
その暖かみを噛み締める。
確かにそこにあったものを
今も伝えてくれる。
大切な宝物を抱き締めながら。
自転車に跨がり
明日の仕事を思い描いて
大きく漕ぎ始める。
今度こそは、と小さくこぼして。