表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『場面切取』  作者: さぼてん。
3/6

24

自転車を押して夜道を歩く。

通りがかるケーキ屋は

いつものイートインは開いてなく

ホールケーキの販売のみに店員(ひと)が集まる。


自転車を押して夜道を歩く。

通りがかる喫茶店は

いつものノートを開く学生の姿は少なく

笑顔と包み紙を交わす男女(ひと)が集まる。


胸にチクリとささる感覚が

破った約束を思い出させる。


今はその約束を誰が守っているのだろう。


未だ痛みを覚えるのは

その約束が守りたかったものだから

痛みだけが、ただ自分(ぼく)だけにその事を教えてくれる。


曇った空を眺めて夜道を歩く。

この程度の寒さでは降っても雪にならないな。と考える(おもう)誰かの声がする。


曇った空を眺めて夜道を歩く。

月が見えなきゃ口実がひとつ減ってしまうのかな。と嘯く(おもう)誰かの声がする。


お腹がキュッとしぼられる感覚に

崩れた信頼を思い出す。


今はその信頼を誰が受けているのだろう。


未だに痛みを覚えるのは

その信頼が応えたいものだったから

今も痛みは自分(ぼく)の目標を示してくれる。


じんわり感じる痛みに

嘲笑(わら)いかけながら

その暖かみを噛み締める。


確かにそこにあったものを

今も伝えてくれる。

大切な宝物(いたみ)を抱き締めながら。


自転車に跨がり

明日の仕事を思い描いて

大きく漕ぎ始める。


今度こそは、と小さくこぼして。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ