理由:私事都合
「・・・起きたくない。」
腹回りから首もとにかけての温もりと
足先、手先に感じる冷たさに
世間と自分との境界を感じながら
畳1つ分の世界に固執する。
設定している携帯アラームは後数分で鳴る。
さっき止めた時にスヌーズ機能を切った記憶はないからだ。
後五分を自動更新してくれる有り難くも残酷なこの機能のおかげで僕の籠城する理由をより堅固にしてくれる。
元々眠る事は好きだ。この温さに魂を売って、休日丸1日を過ごす事も割と日常だ。
そんな僕が何故外に出なければならないのか?
・・・一重に寝る為だ。
排泄と食事なしに寝続けられる状態は維持出来ず、また睡眠環境を整える為には天候に左右されない空間の確保。所謂居住性が求められる。
汗や垢による臭いの除去。湿気によるカビ対策・・・快適さの為には時に矛盾する行動も必要となる訳だ。
実に哀しい事だ。
それは、これ以上泣かさない為に泣く彼女を振り返らずに別れるような儚い瞬間とも言えるのではないか。
そして、これらの行動を取る際に体力とは別に必要となるあるものがある・・・つまり金だ。
金銭。給料と言ってもいい。
それを得る為には働かなくてはいけない。
正直、面倒臭い。
この面倒臭さに向き合う為にも
この数分の至福。天国と地獄との境に身を委ねる事が大事なのだ。
それが遅刻の理由です。
申し訳ありません。