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竜人×竜人の恋  作者: 美龍
竜と母
6/12

第5話

――翌日


「んーよく寝たー」


目を覚ましたルティは自分の身の回りがやけにすっきりしていることに気付く。

あぁ、私今日ここをでるんだった。荷物はもうまとめたし…あとはエミリと院長に挨拶をしていこう。

服を着替えたルティは部屋を出てエミリと院長のもとへ行った。


「おはようございます」

「あ、ルティ!おはよう!」

「おはよう」


このメンバーでご飯を食べるのも今日で最後だ。

そう思うと、やっぱり少し寂しかった。


朝食を食べ、いよいよルティが出発するとき。


「うぇ…ひっく…ルティ、げんぎでねぇ…」

「よしよし、エミリ、泣かないで。また会いにくるから。ね?」

「うん…絶対、絶対また会おうね!」


泣いているエミリを抱きしめ、院長に向き直った。


「院長、9年前何も事情を聞かずに私を受け入れてくれてありがとうございました。すごく嬉しかったです。」

「事情はどうあれ、困っているようだったからね。院長として当然のことをしたまでだよ。森に行くんだったね。あんな危ない所に行かせるのは気が引けるが、応援すると決めたからね。頑張るんだよ。」

「はい、ありがとうございます。」


そう言ってルティは頭を下げた。


「じゃあ、さようなら。」

「うん、またね!」

「いつでも遊びにおいで。」


まだ目に涙を溜めているエミリと優しく微笑んでいる院長に見送られて、ルティはキャンベルの館をでていった。




森はちょっと遠めなんだよなー。

街にも頻繁にはおりてこられないから食料を買い込んでおこう。


「おばさん、これちょうだい。」

「はいよ、まいどあり。800ジュエルだよ。」


ルティは院長から貰ったお金をおばさんに渡す。

このやりとりを何回か繰り返し、森の入口につく頃には両手いっぱいに荷物を持っていた。


「ふぅー、重いな。森に入ったし、いいよね。竜王、私と荷物を風で運んで。」


ルティは竜王へ声をかけ、自分と荷物を運ぶように頼む。

するとどこからともなくふわっと優しい風が吹き、ルティと荷物を家の近くまで運んでいった。

母と訓練をしていた時はいかにも魔法を使いますというような詠唱が必要だったが、慣れてくると竜王に声をかけるだけで良くなっていった。


ルティは玄関に荷物を置くと氷魔法の応用で食料が長い間保存できるようにした。


「さてと…まずはお母さんの所かな。」


ルティは家の裏へ回った。

そこにある母の墓の前に座り込むと、目を閉じて手を合わせた。

お母さん…ただいま。ずっと一人にしててごめんね。私、15才になったよ。もう、一人でも大人と戦っても勝てるようになったよ。これからは、お母さんとずっと一緒にいるからね。

一通り心の中で母に話しかけると、ルティはしばらく墓を見つめてから魔法で竜王に花を作ってもらい、供えた。


「よし、次は家の掃除だな。」


ルティは家へ戻ると魔法を使って家を掃除したり、荷ほどきをしたりと忙しく動き回っていった。


やっと寝れる…

「あーこのベッド久しぶりー!ふかふかで気持ちいいんだよねー」

あー…帰ってきてよかった。


ルティがキャンベルの館を突然出ることにしたのには理由があった。


「竜王、ちょっと出てこれる?」

「呼んだか、ルティ。」


そう言って姿を表したのは深い青の見る者全てを魅了するほどに美しい竜だった。


「いくつか質問があるの。」

「ふむ、なんだ?」

「私の力…強くなってるよね?異常な程に。」

「あぁ、そうだな。ここまで我の力を強く受け継いだ者を見たのは初めてだ。我をこうして召喚するなど今までできた者はいない。」


やっぱり…そうなんだ。おかしいなと思ったんだ。今までは制御できていた力がどんどん膨れ上がってきて爆発しそうになったのは、やっぱり気のせいじゃなかったんだ。


ルティがキャンベルの館を出た本当の理由はこれだった。あまりにも力が強くなってきていて自分で制御できなくなって爆発したとき、エミリや院長を巻き込みたくなかったのだ。


「まあ、そう落ち込むな。にしてもお前がそこまであの二人を大切に思っていたとはな。少し意外だ。」

「あぁ、もう!人の心を読むな!」

「読んだのではない、聞こえるのだ。」

「屁理屈はいい!それにね、私だってお世話になった人に恩ぐらい感じるっつの!失礼な!」


竜王のあまりの物言いに、ルティは怒った。

「それで、このまま力は強くなるの?」

「そうだな。はっきり言ってこんなのは初めてだからな。我にもよく分からんが、我と同等の力を得ると考えていいだろう。」


竜王と同等の力を得る…?

それって…


「そうだ。我の力を借りるのではなく、お前自身が魔法を使えるようになるということだ。まあ、魔法というか自然の力を操るといった感じだが。とりあえずお前の力が暴走しないように枷はつけてみよう。」


「いくぞ。」


そう言って竜王はルティの頭に手を翳した。

すると、少し息苦しさを感じた。自分を抑え込まれているような、そんな感覚だった。


うっ…なんか気持ち悪いかも。

早く終わらないかなー


5分ほどたった頃――


「もういいぞ。」


竜王がそう言うと、息苦しさはスッととれた。


「あー疲れた。でもなんか安心感がある気がする。」

「そうだろうな。これでも暴走しそうな気配や違和感を感じることがあれば我に聞いてみるがいい。答えられるものもあるかもしれんからな。」

「分かった。ありがとう。」

「うむ、我はお前を気に入っているからな。何千年と力を持つものに力を貸してきたが、我と話せる者はいなくて寂しかったのだ。我はお前に全力で力を貸してやろう。」

「はは、ありがと。これからは私一人の生活になるから話し相手になってよね。」

「ああ、いいだろう。」

「じゃあ…今日はもう寝るね。おやすみ。」


そう言ってルティは布団へ入るとすぐに眠ってしまった。よっぽど疲れていたのだろう。そのルティの寝顔をいとおしげに見つめながら、竜王は呟いた。


「この先、お前にはいろいろな苦労が待っているだろう。だがここの近くには竜緋の力を感じる。お前と同じくらい強い力を持って生まれた奴がいるかもしれん。そいつと出会い、願わくば助け合ってほしいのだがな。我はお前を全力で守ってやる。だから…泣くな。」


寝ているルティが一筋の涙を溢した。それを竜王は優しく拭ってやり、姿を消した。


更新が遅くなってすみません。

ルティ、森に帰ってきました!

この世界の通貨はジュエルです。どの国でも一緒です。

価値は円と同じだと思ってください。


2014年11月15日一部修正しました

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