第3話
流血あります。
苦手な方は後書きだけを読んで次のページへお進みください。
ある日。
ドンドンという荒々しく扉を叩く音で母と娘は目を覚ました。
母と共に一階へ下り、娘はソファの陰に隠れた。
「ルティ、絶対そこからでてはダメよ。母さんに何かあったら、戸締まりをしっかりとしてこのリュックをもってここへ行きなさい。」
そう言って母は娘にこの間のリュックと地図が描いてある紙を渡した。
「わかった。おかーさん、きをつけてね。」
「ありがとう。ルティ、元気でね。」
母は娘を一瞬強く抱きしめると、扉を開けて外へ飛び出していった。
「貴女は、ユリエナ・リュエラ・セリア様ですね。ここで死んでいただきます。」
「ええ、そうよ。あら、随分と率直に用件を言うのね。誰の指示かしら。タチアナかしら?」
「それにはお答えしかねます。」
「まあ、いいわ。私もそう簡単に殺される気はないから。」
その言葉を合図に、母――ユリエナと黒づくめの男5人との戦いが始まった。
ユリエナは踊るように攻撃をかわし、竜の力で相手を攻撃していく。
「随分と弱いのね。私も甘くみられたものだわ。」
そう言って放った母の一撃により、3人がやられた。
残りは二人。勝てるかもしれない。そう思った時だった。
「おい、家の中も見てこい!」
「はっ!」
一人が家へ向けて走っていった。
家にはルティがいる。母は焦った。目の前の一人を倒し、自分も家へと走る。男はすでにドアを開けていた。
「ルティ!!逃げなさい!」
「娘がいたのか!」
男は娘に向けて剣を構え、振りかぶった。次の瞬間、
ザシュッ――
人が切られる音がし、血が飛び散った。
「おかーさんっ!!!」
ユリエナはギリギリのところで娘と男の間に入り込み、剣をその身に受けたのだ。
「おかーさん、おかーさんっ!おきてよ、おかーさん!」
「ふっ…身を呈して守った…か。無駄なことを。馬鹿なやつだ。」
娘は母を切った男を見上げた。その目には、はっきりとした殺意が宿っていた。
「なっ…!」
男が娘からの殺気に怯んだ一瞬、その間に勝負は着いていた。
娘が力を使い、男を殺したのだ。
娘は母を抱きしめる。
「おかーさん…おきて?おわったよ、みんなみんなたおしたよ!ねぇ、おきてえらいね、がんばったねってほめて?…おかーさん…」
どんなに声をかけても、母から返事はない。
「おかーさん…どうして死んじゃったの…わたしをおいていかないでよ…おかーさん…おかーさん…うぅ…ひっく…うわあああああん!」
しばらくの間、娘の泣き声だけがあたりに響いていた。
どれくらい時間が経ったのか分からなくなった頃、娘は動き出した。男たちを風で遠くへ運び、母は丁寧に家の裏へ埋葬した。それから家の戸締まりをしっかりとし、荷物をもって母から渡された地図を見ながらある建物へ入っていった――
ルティのお母さんは男5人と戦い、最後にルティを庇って死にました。
ルティの怒りは凄まじいものです。
お母さんが死んでしまったのにこんなにも立ち直りが早いのはルティの心の強さです。もちろん、完全に立ち直ったわけではありません。けれど先に進まなければいけないという気持ちと、母に普段から言われていた母さんになにかあっても強く生きなさいという言葉が今のルティを動かしています。