第1話
セリア王国とクレナ王国との国境にある森に母娘が住んでいた。この森には野生の動物が多く住んでおりとても危険なため、誰も近づかない。そんな危険な森に住んでいるにもかかわらず、母娘は平和な毎日を送っていた。
「ルティ、そこのお皿にこれを盛りつけてくれる?」
「うん!きょうのごはんおいしそうだね!」
「そうでしょう?ルティの好きな物ばかり作ったからね。」
「やったー!おかーさんだいすき!」
そういった抱きついてくる娘の頭を慈しむように撫でる母の顔は、どこか暗かった。しかし、幼い少女にはその意味がわかるはずもなかった。
夕食を済まし、寝る時間になった頃。幼い娘と共に布団に入った母はこう言った。
「ルティ。もし、母さんに何かあってもしっかりね。」
「おかーさん?」
「母さん、弱くてごめんね。あなたを…大人になるまでちゃんと守るってあの人と約束したのに…」
そういって強く抱きしめてくる母に、娘は何も言えなかった。娘を抱きしめる母の頬を、涙が濡らしていった。
――翌日。
「ルティ、今日はちょっとお出かけしよう。」
「おでかけ?」
「そう、街に行ってみようね。」
「まち?やったー!」
生まれてこの方この森から出たことのなかったルティはとても喜んだ。喜んで家を出たものの、母が少し暗い雰囲気を纏っていることが気になっていた。
「おかーさん、どうしたの?おなかいたいの?」
「いいえ、大丈夫よ。ルティは優しい子ね。」
「おかーさんのむすめだからね!」
「ふふ、そうね。ありがとう。」
母が少し明るくなったことに、ルティは少し安心した。
街で色々な物を買い、家へ帰った。
家で母が今日買った食料や水、衣類をルティのリュックに詰め始めた。
「おかーさん?なにしてるの?」
「あぁ、ルティ。これはね、母さんがいなくても大丈夫なように大切なものを詰めているのよ。」
「ふーん。」
娘はなぜ母がいきなりそんなことをしだしたのか分からなかったが、特に気にはとめずに絵本を読みにいった。
「これだけあれば、きっと大丈夫よね。」
このまま、平和な日々が続いたななら。母はそう願わずにはいられなかった。
ルティとお母さんの話です。
ルティ、まだ幼いので話している言葉が漢字に変換されていません。
まだお母さんとの話は続きます。
今日、まだ更新します!