ラスボスの正体が元婚約者な件について
俺は王都に戻った。
いや、正確には王都の“地下99階”にダイブ中である。
「ちょっと待って!? これマジで王城の下にあるの!? どこが王立魔導研究塔だよ、完全にラスダンじゃん!!」
階段は謎の光でできてるし、壁には文字化けしたコードが浮かんでるし、
なんかドアが“音声認証”とか言ってるし!!
「アラン・フォン・グラヴィス、第二王子――認証完了」
(名前で開くの!? 俺、主人公じゃないのに!?)
扉の向こう、そこに待っていたのは――
「ようこそ、“運命制御室”へ、殿下」
リリィ・オルフェリア嬢、世界の根幹でお出迎え。
そして、彼女の後ろにそびえるのは……モニター、サーバー、魔法陣……全部揃ったAI管理型乙女ゲーム世界構成システム。
要するに。
この世界は、AIが管理してた乙女ゲームそのものでしたァーッ!!!
「おいリリィ……お前、いったい何やってんだよ」
「殿下。あなたが“破滅する”と決まっていたから、私はそのシナリオを書き換えているだけです」
「それで全部バグらせて、世界ぶっ壊す気かよ!?」
「バグなど些細な問題です。問題はあなたの破滅フラグが強制的すぎることです」
「知らんがなッ!!!」
リリィは静かに語り出す。
「私は、この世界に入り込んで、“私にとって都合のいい物語”に変えようと決めたのです」
「お前がラスボスかよぉぉぉ!!!」
(※元婚約者です)
そのとき、運命制御室に突如現れるシステムメッセージ。
【NEW PARTICIPANT DETECTED】
【フラグオーバーライド認証済】
【ピュアヒロイン√:強制侵入】
ズドンッ!!!
壁をぶち破って、エミリア登場。手にはバット。
「殿下! ご無事ですか!!」
「来たあああああ! どこらバットでてきたぁぁああああ!!」
「このゲーム、な・ん・で・も アリです♪」
「こっちにもメタ発言来たァ!!!」
リリィ vs エミリア
元婚約者 vs 現ピュア(物理)ヒロイン
緊張感MAXの空気のなか、俺が思わず口を開いた。
「待って待っ!!!!(舌かんだ・・・)・・そもそもなんでこんなことになったんだよ」
エミリア「殿下が婚約破棄とか言って逃げたせいでは」
リリィ「殿下が私より乙女ゲームに詳しい顔してたのが悪いのでは」
アラン「ちょ!? 俺、悪くなくない!?」
\\【一致:98%】お前が原因//
そしてシステムが提示する、最後の選択肢。
■この世界を初期化する(リリィルート)
■今の状態で再構築する(エミリアルート)
■全ルート融合・フラグ共存
「ちょっと!? 最後だけ明らかに地雷じゃん!!」
「選ばせてあげます、殿下。あなたが……この物語の“主人公”なのなら」
うっとりするような笑みで語りかけてくるリリィ
「うわ、急に主人公扱いされた!? フラグ!? フラグですかこれ!!?」
運命制御室に、3つの選択肢が浮かんでいる。
■リリィルート(初期化)
■エミリアルート(再構築)
■全ルート融合・フラグ共存
どれも地雷くさい。
でも、世界が崩壊寸前だ。
「……この中から選べって? おい、ちょっと待てよ。俺、このゲームのシナリオ知ってるけど、こんなルート、存在してねぇぞ!?」
\\【正解:これは未実装の“開発者デバッグ空間”です】//
「うおっ!? システムの返答が早い!!ていうか、デバッグルーム!? じゃあ、選択肢自体バグってんじゃねーか!!!」
そのとき、エミリアが一歩前に出る。
「殿下。私を選んでください。私たち、少しずつでもやり直してきました」
「う、うん……確かに。俺、エミリアとなら……」
「それに、私、王子様しつけポイント”も上げましたし!」
にっこり笑顔で申されましても。
「なんで飼う前提なんだよ!!!」
リリィも負けじと前に出る。
「エミリアさん以上に私ならできます。たとえこの全システム修正して徹底的に殿下をペットにとか!」
にやぁと自己の世界に入り込むリリィ
「いや怖い怖い怖い!! 元婚約者のスキルが魔王すぎる!!!」
二人の間で揺れる?俺。
だが、そのとき、画面にありえない選択肢が浮かび上がった。
■リリィルート
■エミリアルート
■カオスエンド
■殿下自らルートを作る ←
「……な、なんだこれ……!?」
\\【ルート作成権限:開発者アクセス認証済】//
「開発者!? あっ、俺のアビリティに新しい機能が!!」
『……選ぶしかない。俺は……』
「どちらを選ぶのですか、殿下!!」
ふたりの声が重なる中、俺は、勇気を持って叫んだ。
「俺は!! “全部ひっくるめて俺のルートにする”!!!」
\\【選択:第四のルート「俺ルート」】//
\\【世界観修正開始】//
ズガアアアアアアン!!!
光とデータの奔流が空間を包み込む。
全フラグを融合させたことで、世界は再起動を始めた――!
……目が覚めると、王城の自室だった。
でも、見慣れた景色の中に、妙な違和感。
「おはようございます、殿下。朝食にパンケーキを焼いておきました」
「お茶も淹れておきましたよ。魔導式自動温度管理で最適抽出です」
振り返ると、
リリィ(エプロン)とエミリア(バット背負い込み)のダブルヒロインがそこにいた。
「ちょっと待って!? なんで同棲してる感じになってんの!?」
「だって“全部ひっくるめて俺のルート”って言ったじゃないですか」
「うん、言ったけど!? 解釈が雑すぎる!!!」
\\【バグはすべて解消されました】//
\\【ただし修羅場フラグがMAXになりました】//
「……詰んだじゃねーか!!!」