幕間3.手紙
前略
お元気ですか。
今更あなたに季節の挨拶も要らないだろうと思って、ここには書かないことにしました。手紙にあなたの名前を綴ることも許されないので、宛名も書きません。私はあなたの名前を、手紙の中ですら呼べないのです。こんな些細な恨み言くらいはどうか許してくださいね。
この度はあなたにお願いがあって手紙をしたためたのです。どうか、刺繍を売る手伝いをしては頂けないでしょうか。特別なことはいりません。ただ、毎月の物資をくださる時に、縫い上げたものを受け取って知り合いの店に並べて欲しいのです。ただそれだけで良いのです。
あなたは私から何よりも大切なものを2つ取り上げました。今更それを取り戻そうだとか、そんなつもりはありません。ただ、私の宝物が幸せであることを祈るばかりです。
あなたを責めるつもりは、ないのです。あなたもあなたで苦しい立場にあったことを知っています。あなた一人ではどうにもならなかったことを、理解しています。それでも、どうして何も言ってくれなかったのかと思わずにはいられないのです。私はただ、あなたと共にありたかっただけなのに。あなたと、貧しくとも生きていきたかったのに。
あなたの罪悪感に漬け込む私は、きっと悪い女です。あなたに嫌われても仕方がないです。けれど、あなたの中に罪悪感が眠っているのなら、私は生きるためにそれを利用します。お願いです。どうか、私の願いを叶えて。
草々
(あなたに、あの子に、会いたい。)




