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レガシークエスト  作者: 鯣烏賊
第2の人生の序曲
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凍峰に沈む街にて その13

雨と言っても、普段の生活から想像できるような雨じゃない。

言うならば台風、ハリケーン、タイフーン..............................まあこれらは全部同じ意味だけど。


殴りつけてくるような大きい雨粒が、無限かと思えるほどの量で暴風とともに俺たちに叩きつけられる。

体に水が「当たる」感触があるし、地面やら壁やらに水が叩きつけられる音がうるさい。


服は一瞬でぐしょぐしょに濡れてしまったし、髪からは染み込めなかった雨水が滴り落ちる。

大量の雨が糸でてきた壁みたいに視界を塞ぎ、視界が世界を映してくれない。

それでも、音をたよりにディラン君たちのいるおおよその方角くらいは掴める。


ぺちゃん。


「........................................おっと?」


歩み出そうとしたところ、マンホールを踏んでしまった。

それがどうした?

確かにマンホールを踏んだだけだ。


大事なのはそこじゃない。

大事なのは踏んだマンホールから水の音がする、ということ。

このマンホールから、水が出ている。


「ディラン君!!」


«何だ!この忙しい時に!!»


「マンホールが水漏れしてるよ!」


«....................なるほど。流石の豪雨だ。

急げ!»


「了解!」


«場所は..............................まあ、お前ならすぐに分かるだろう。»


ぶちっ。


さて。

すこし想像してみよう。


"サンタイヘンカ"........................................ああ、三体返歌じゃなくて三態変化だよ。

物体が「個体」・「液体」・「気体」の状態を行き来するっていう、学校で習うアレだ。

....................俺はこの前の試験勉強でこの言葉を知ったけど。


でも直感的に理解しやすいこの性質。

大きな特徴として「個体」から「気体」に向けて物体が持つ温度が高くなることがわかる。

例外とか言わないで。よく知らないから。


触ると冷たいのは氷。

水は丁度いい温度から、暖かいと感じる温度まで様々。

沸騰させて出てくる水蒸気はとても暑い。

つまり。水は凍らせると氷になる。


さて足元のこの水。

もう俺の靴を飲み込むくらいに深くなっているこの浸水。

この大雨と、水道管からの逆流してくる水を合わせれば、ものの10分も経つとニュースでよく見られる車が流されたり、家が模型みたいに壊されるあの状態になる。はず。


で、あの水にごく低音の空気をあてたらどうなるんだろう。

氷蛇が極度の興奮状態になったときに、甲殻の隙間から発するあの気体。

俺を薙ぎ払って真っ二つにしようとしてきたあのブレスも。


少なくとも俺は、触っただけで凍傷になると思ったよ。

凍傷に耐える訓練はしたことあるし、なんならちょっとやそっとじゃ凍傷にならないような身体になってるけど、脳からの危険信号がビンビン出ていた。


これは怖いね..............................けど、あの威力と温度だ。


「さすがにここはディラン君の仮説が合っていると信じたい....................!」


さて、兎にも角にもディラン君たちがいる場所へ向かわないとお話が始まらない。

通ってきた水道管はいつ通れなくなるかわからないから、地上の逆方向を全力で走っていくしか道はない。


というか。


「時間はいつも通りに進んでないのかな。」


こんな雨はスコールが来たってありえない。

多分だけど、時間が早送りみたいな感じになってるのかな。

俺はやったことないけど、世の中のゲームだって現実通りじゃないって言うし。

いや、大事なところはそこじゃない。


「....................(ラピッド)


1段目を踏み込む。

その場から

ジャーンプ!!!

お、ちょうどいい....................


「足場にできそう!」


目の前に横向きにあった看板を鉄棒みたいに使って先へ進み、信号機の「柱」に足をかける。

そして2段目。


3段目はちょうど良い感じに足を引っかけれそうな場所にあったバルコニー。


4段目はその建物の屋上!

俺はドーンと飛び上がる。

そして空中に浮くような形で地面を見下ろす。


「おお..............................冗談でしょ」


少し高いその建物を超えると、目の前にはもみくちゃになって暴れている氷蛇がいた。


こんなに氷蛇がいた場所って近かったっけ?

いや、近づいてきてるな。きっとそうに違いない。

俺の身長、155cm。

氷蛇の大きさ、推定100m以上。

奴は俺に気づいてない。

俺たちが睡眠中に忍び寄ってくる虫に気づかないよう、奴は爪より小さい俺の接近に気づいてない。

きっと、氷蛇の注意は、放っておくと甲殻を割ってきそうなディランに釘付けだ。


現に、ディラン君は氷蛇の猛攻を避け続けながら隙を見て攻撃を繰り返している。


「パキケ君。帰ってきたよ」


«ディラン忙しそう。ねえベロキ、ブレス誘発させる話聞いた?»


「もちろん」


«じゃあディランのかわりにやってやりなよ。攻撃したがってたよ.........."目"を»


「そうだね」


じゃあ、あのことを覚えてくれてたのか。

よーし!!


俺は5段目に建物の壁を思いっきり蹴る。

凄まじいスピードで"俺"が射出され、バサハザという空気の音が耳に嫌というほど入り込む。


俺は氷蛇の方向へ両足を揃えたあと、右足だけ膝の部分で曲げる。

リンさんが見ていたジパングで作られたヒーロー映画の中で見たような見ていないような、そんな姿勢。


そんな姿勢で俺は、弾丸のように氷蛇へ突っ込んでいく。


「ディラン君ーーーッ、ただいまベロキ合ォーー流ゥーーーーッ!!!!!」


「おおベロキ....................なるほど。」


ディランがその場からどいてゆく。

それにしても察しが良くて助かるよ。

だってこの氷蛇が目を攻撃されると怒るっていうのはもうディラン君に伝えてあるからね。


という訳で遠慮なくぶっ放せる。


必殺....................目ん玉狙いキーーーーーーック!!!!


しかも今回はただのキックじゃない。


ぶっしゃあああああああ!!という音が響き渡る。

音源は俺の足元にある....................この目。

氷蛇の目から真っ赤な鮮血が吹き出ている。


説明しよう!

俺は5段目で壁を蹴る直前、「(タランチュラ)」を靴裏にぐるぐる巻きにしていた。

細さを自由に設定できる縄を極限まで圧縮させると、それは「針」みたいな形になる。


それを超スピードで刺す。

これは経験談だけど、たとえ眼球を潰したとしても、中身の水分が飛び散るだけで眼球にダメージが通ってくれるわけではない。

だから刺す。

眼球を破壊してしまうことで、痛みと共に今後も消えない「ダメージ」、そして敵対心を植え付ける。


痛いとはいえ皮膚を捲ってくるだけの羽虫と、針を体に刺して毒を注入してくる蜂。

君だったら蜂を真っ先に潰すでしょ?


もちろんそれは巨大生物だって同じ。

いくらディラン君のパンチが強くても、敵対心を抱かないとブレスは吐いてくれない。

あれだけの大技だ。きっと氷蛇にもそれなりのデメリットがあったりするんだろう。


そして反応はすぐに訪れた。


「コヒョォォォォォォォ..............................」


「うお〜来る来る来るッ!!」


待ってくれ!

()()は足元に撃ってくれないと意味がな............................。


氷蛇が口を開いて息を吸うと、聞くだけで冷たいとわかるような音が鳴る。

背中の大甲殻が開かれ、足と尻尾の鱗が逆立つ。

..............................あれ、これってひょっとして。


ドオオオオオオオォォォォ!!!


そして、口からブレスは放たれた。

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