部屋と事務所とお風呂と
ミクロさんがセンサーにカードキーをかざすと、鍵が空いて、ぎいいいい、と音を鳴らしてドアが開く。
「リン、アロ、いる?」
三世代ほど前の旧型ドアはかなり音が鳴る。
だってコスモ技術あるの鍵だけだもん。
その音を聞きつけたからか、中から不機嫌そうに女の人が顔を出した。
「お帰りですか」
背丈は同じくらい、年は....これも同じくらいかな?
いかにも寝間着!今から寝ます!と宣言しているような格好だ。
(そりゃ、不機嫌になるよね...)
気にしていなかったが、現在は夜だ。それも寝始める人がいてもおかしくないような。
今すぐにでもミクロさんと口喧嘩を始めんといった表情の女性は、俺を見つけると思い出したように話し始めた。
「そういえばそういう訳だったわね....リンです、これからよろしく」
「.......あぁベロキです、よろしく」
挨拶なんざ碌にしたことない上、ここ最近はずっと監獄生活だった。
ので、少し戸惑ってしまったものの、挨拶を返した俺はリンという名の女性からひとまず第一印象としての好印象を手に入れることに成功した。
「アロは寝ちゃった?」
「ついさっき」
「早速だけどベロキに部屋の案内してくんない?僕もう疲れちゃった」
「それは私もですけど・・・わかりましたよ」
「じゃ、お願い・・・」
ミクロさんは廊下に消えた。
随分と早寝なメンバーだな。
などと思っていると、リンさんが「こっち」とミクロさんが消えた方とは違う廊下に俺を案内した。
目の前にあったのは手作り感満載の扉に、【ベロキ】の名札だった。
「ここあんたの部屋ね」
「毎日ここで寝泊まりする感じですか?」
「うん、そう」
まあめちゃくちゃ狭いけどねとボヤきながら、リンさんは俺を次の場所に案内していく。
「あ、そうそう」
「?」
「敬語は要らないし呼び捨てでいいよ」
「じゃあ、そうさせてもらうよ」
その後もリンさんについて行くと応接室、他の人の部屋、御手洗、応接室などに案内してもらった。
そして、少しのお金渡すと共にこう伝えてきた。
「ここ、お風呂ないからこれで近くの浴場入って来てね、明日から自腹だから」
どぷん!
お湯が音を立て、風呂のお湯が俺の質量分水位を上げる。
監獄生活で週一しか風呂に入っておらず、床のように硬い椅子兼ベッドに雑魚寝し、半日以上を労働に費やし、なんならウォーミングアップなしブランクありの最悪コンディションで小型怪獣との戦闘を繰り広げた俺の身体は心身共にかなり疲れていたらしく、炭酸湯が皮膚の表面にぴちぴちと気持ちの良い感覚を与える。
ルキ家にいた頃もゆっくり風呂など入ったことなく(気持ちの悪い液体に酸素マスクつけて放り込まれてた物が浴場と名付けられていた)、人生で初めての戸惑いながらのシャワーはなかなかどうして心地よく、髪をガシガシと掻きながら石鹸で体の汚れを洗い流す作業でさえ面白く感じた。
性格に言えば潜入任務等で入ったことはあるらしいが、記憶処理と自己暗示をしてから任務に望むのであんなもんノーカンだノーカン。
そうして入った湯船も極上であり、リン曰く「安価な大衆向け浴場」とのことだが、俺にとっては最高級ホテルに置いてある最高級設備の最高級の風呂と大差がないように.....ああ語彙力がどこかに飛んでいく戻ってきてくれ。
「熱っつ」
体温が上がり暑くなったので近くにあったウッドチェアに腰を下ろす。
「うぉう」
体が冷凍食品のように冷やされてゆく...ああダメだ意識が飛んでいくモドッテコイ...zzzz
事務所に戻ると、ミクロさんが俺を待っていたらしい。
特にお咎めは無かったが、「やっとか」みたいな表情をされたので時計を見ると、出掛けてから二時間以上経っていた。
そんなに寝てたの、俺。
「さて、何で湯冷めしないのか不思議なくらい長く入ってたベロキくんにお知らせだ」
机には、幾つかの柄に小型装置。
「この中から、武器を選んでね」
スターダスト事務所
雑居ビルの一室に居を構える私営の怪獣対策事務所
部屋が四つ、御手洗、キッチン、そして応接室という極めてシンプルな作り
部屋四つはミクロが日曜大工で頑張った
メンバー四人以上の部屋は用意不可能なので、これ以上メンバーを増やすことは極めて難しい
解説その1
風呂についてですが、この世界コスモ設備揃えるので経済的にガタがくる家庭が大半なので、ジャパニーズ銭湯とフィンランドサウナを合体させた施設が普及してます
解説その2
ベロキの記憶処理と自己暗示は強いきっかけがあれば思い出せます
二話の「自首を知った」と現状だと矛盾しちゃってます
次の話でできるだけ解説します