凍峰に沈む街にて その5
「...................................................実技試験もこういう感じなんだ。」
「なんかちゃっちいね」
「2人とも、そんな事言うんじゃ....................................いや、一理あるか。」
実技試験の試験会場は講堂だった。
会場に着いた時にはもう、筆記試験のようにバリケードが下ろされていた。
でも、筆記試験のときよりもバリケードの中の大きさがかなり広く、VR機器が4つ、並べられていた。
他には小さめの丸テーブルが設置されていて、テーブルの上には水や軽食が置かれていた。
トイレに行きたくなったら面倒だから、多分飲んだり食べたりすることはないと思うけど。
ドアを閉めたところに張り紙が貼られていて、試験の注意事項が書かれていた。
とはいえカンニングの概念は存在しないので、書かれているのは
・試験が始まると部屋からは出られません
・他チームへの妨害行為ととられる行動をした場合、妨害行為をしたチームの受験資格を剥奪します
・どうしても体調が悪くなった時は、バーチャル内のチャット機能からご連絡ください
・実技試験が終わっても会場からは出られません。どうぞ明日までの時間はおくつろぎください
・試験結果は後日お知らせします
程度のものだった。
「点呼はVRの中でやるようだな。」
VR機器にも張り紙が貼られていて、そこにはVR内で点呼を行うことと、アナウンスがあるまで電源がつかない旨が書かれていた。
ただ、アナウンスは既に流れていたらしく、俺達が来た時にはもうVR機器の電源がついていて、冷却装置の音も聞こえる。
とは、いえ。
「俺たちはこれのダウンロードもしないとな。」
このVR機器は、訓練室に置いてあったものとは違う。
だから、試験開始までに俺たちの固有武装や過去の遺物たちのダウンロードを済ませてないといけない。
じゃないと、俺たちがこれまでやってきた練習時間が無駄になってしまうからね。
「では、ダウンロードしないといけないしさっさと仮想空間に入ることにしようか。」
「賛成」
「わかったわ。」
「オーケー!」
俺はさっき受付から受け取ってきた「鍵」を左腕にはめ、VR機器の中に体を入れる。
まあ、俺に関してはこの間のダウンロード時間はかなり短かったから、今回も時間かからないだろう。
さあて、早くログインしたら手短に点呼をすませてウォームアップでも済ませ.............................................。
【固有武装を検知しました....................................ダウンロードを開始します.............................................ダウンロード完了まであと....................................420秒..................。】
「へ?」
「ごめんごめん、なんかダウンロードにめっちゃ時間かかった。」
「大人数がログインしてるから、サーバが不調だったんだろう。気にするな。」
結果、その他の色々を含めてログインまでにかかった時間は8分弱。
この間のディラン君の12分よりは短いとしても、予想よりもはるかに時間がかかった。
飛ばされた仮想空間は、この間みたいな何も無い部屋。
けど、テーブルが置かれていて、1枚の紙とペンが置かれていた。
[ここに"直筆"でお名前をご記入ください。
※筆跡鑑定を実施させていただきます。]
「これに名前を書けばいいの?」
「ああ。俺達3人分も書いてあるだろう。」
「早く書いてよ、ウォームアップしたいんだから。」
俺はペンを手に取り、名前を「ベロキ」と記入した。
その瞬間。
【チーム4人のログインを確認いたしました....................................マップへと転送します。
....................................皆様のご活躍を深くお祈りいたします】
視界が光転する。
あまりの眩しさに俺の視界から何も見えなくなり、手で目を覆う。
そういえばいつものログインもこんな感じだよな....................................と考えている内に視界の光が薄くなってゆく。
数秒後、視界を解放すると、そこは文字通り市街地だった。
それなりに大きなビルが立ち並び、人が行き交い、コンビニエンスストアが道路沿いに2件立ち並んでいる、俺の住む街よりも少し活気のある街。
大通り沿いに需要の多そうな施設が立ち並び、そこから1本離れた道には住宅や小さな商店などが立ち並んでいる。
非常にリアリティのある街だ。
「現代技術って凄いねえ..................。」
よし!
じゃあ、ウォームアップするぞ!
まず、この試験は5分ほどの準備時間が与えられる。
その5分は、何をしても採点への影響はない(ビルを粉砕したり人を殺したら流石に原点されるけどね)ので、けっこう自由に行動できるわけだ。
マップのランダムな場所に転送されるので、この5分で集合したり、下準備が必要なら下準備したり、マップの詳細を把握したり、それこそウォームアップしたり....................................。
本当に何をやってもいいわけだ。
さあて。
「ディラン君が通話かけてくるまでは暇だねえ..................。」
よし!
ダイヤルを回して「強」の機能を選択。
針が体を刺し、体内にコスモを注入する。
そうすると右手にオーラが現れる。
「強」の効果は至って単純。
選んだ武装の効果を強化する、というものだ。
けれど、機能の並行使用が出来なかった前の「鍵」ではどうも使いにくく、これまでに使ってきた回数は「滑」よりも少ないと思う。
でも、今の「鍵」はひと味もふた味も違う。
右手に現れたオーラを鍵に付与させることで、「強」の機能を解除するまでは性能が強化されたままだ。
よし、したらダイヤルを回して「速」の機能を選択し....................................決定!
「.............................................あれ?」
おかしいな。
針が刺さってくれない。
ということは....................................並行使用が出来ていない..................?
「も、もう1回!」
1回ダイヤルをリセットして.............................................。
「あ。」
今、とっても見たくないものを見てしまった。
一応、俺の勘違いかもしれないから、その可能性に賭けて、ダイヤルを回して「排撃」を探す。
頼む。
頼む、あってくれ。
頼む、あってくれよ!!
....................................頼む!
「ない。」
ない。
ないないないない!
「排撃」の機能がダイヤル上のどこにもない。
と、すると、この間やったばっかりの改造が何らかの理由によってこの場に反映されていない、ということになり..................。
まさか機能の並行使用も...........................?
すると、ドン!と何かが爆発したかのような音がなる。
目の前の地面が割れ、土煙がたちこめる。
土煙の先にいるのは、ディラン君だ。
ディラン君もディラン君で短い時間を使ってウォームアップをしていたんだろう。
街中を駆け回っていたのかな。
「おお、ベロキか。
.................通話をかける手間が省けたな。」
確かに手間は省け.................じゃなくて!
早く報告しないと。
俺の機能の並行使用ができないってことは、これまでやってきたことがグチャグチャになってしまう。
さらに「排撃」も使えない。
早く、早く言わないと!!
「あのディラン君、言いたいことが..........................!」
ジリリリリリリリリリリリ!
いきなり、鈴を振りまくったような警報音がが鳴り響く。
「何コレ何コレ!」
「ッ.........!思いの外早い!」
ジリリリリと鳴り響き続ける警報音。
そして、女性のような機械音声とともに、俺の視界にパネルが現れる。
【目標が出現しました】
【対象:アイランゲェ 分類:超大型
これより採点を開始します
クリア条件:対象の討伐および一般人の死亡者100人以下】
【制限時間:240分00秒.........】




