試験っ! その1
.........なるほど?無免許ね。
無免許とはつまりその免許を取らねば許されない行為を免許なしで行っている、という意味を現す言葉であり。
どうやら怪獣の討伐にはそれ専用の免許が必要らしく。
俺はそれを持っていなかった、と。
無免許ってつまりアレだよね。
「......俺、犯罪者だったんですか?」
またかよ!
自首とはいえ......殺し屋の罪で投獄されて、半年間獄中生活を満喫(?)した後釈放されてこの事務所に来て。
なんだかんだ楽しくなって来た所でまた投獄されんの、俺。
なんだよもう.........かくなる上は目の前にいるミクロさんを殺して逃亡、はまず出来ないから、全速力でここから逃げて...。
「あー大丈夫大丈夫。厳密に言うとベロキは違反とかしてたわけじゃない」
「.........?」
わけがわからない。
なんで今から免許をとる試験を受けに行くのに、免許違反をしてないんだ?
わざわざ免許をとるために試験に行くってことは、その免許は試験を突破しないと発行されないってことになる。
ハッ、まさか!
「偽の免許で俺を........!」
「違う違う。仮免許だ、仮免許」
「仮免許?」
「そう。仮免許だ。
訳あってベロキをここに連れてくるときに仮免許の発行許可が降りてね。
こんなこと滅多にないんだけど、ベロキはその仮免許で生活できてた訳だよ。
ちなみになんだが、ちょうどあとひと月後に期限が切れる」
「なんだ。期限切れまで意外と時間あるじゃ.........」
「許可試験の試験時間は21日だ。」
「お、じゃあ期限切れのタイミングで試験があるんですね。」
21日後に試験か.........じゃあ少しは余裕を持って試験に臨め...............。
ん?
試験「時間」が21日?
「違う違う。21日後に開始されるんじゃなくて、試験時間が21日間だ。
明日からちょうど3週間の間で試験が行われる。」
へえー。
21日間で試験が行われるんだ。
それはつまり...........................いや、長すぎい?
試験を受けたことがない俺でも、言葉の意味くらいは知ってる。
試験ってあれでしょ?
何かの資格を取るために受験して、合格したら資格を貰えるっていうやつ。
それが、3週間?
そんなに長いものなのか.........。
「あー、とにかく。
今日は明日の準備して早く寝な?特急の切符は手配しておくから」
着替えの服、ヨシ。
風呂に入ったのためのタオル、ヨシ。
事務所で使ってる電子端末、ヨシ。
通信機、ヨシ。
鍵、ヨシ。
その他もろもろ(ミクロさんに持っていけど指示されたものたち)、ヨシ。
ミクロさんに用意されたいつもより心なしか大きめの鞄の中に必要なものを詰め込み、冷蔵庫近くの棚に置いてある保存食を2、3個取り出してポケットに入れる。
冷蔵庫の中にあるボトル入りの水も取り出し、鞄のボトル入れに差す。
朝食の準備もできた。
よし。
「行ってきます」
朝早く、誰もいない室内。
虚空に向けて出発を示す挨拶をした俺は、事務所を後にする。
ドアを閉め、手動の鍵を閉める。
オーケー。防犯もバッチリ。
さて、事務所を飛び出して俺は気がついた。
「試験って、何か勉強した方がいいのかな」
ベロキが出ていってから数時間後。
そこにいるのは、ベロキの次に早く起きて作業をしていたアロと、やっとこさ起床したミクロだった。
ミクロは台所で目を覚ますコーヒーを淹れ、自分のデスクに腰掛ける。
虚無。
2人は互いに何も話さなければ、干渉しようという気概すら感じられない。
互いに、それぞれの作業をしている。
普段なら、リンが起きてくるまで2人は無言だ。
しかし、きょうにかぎってはあ静寂を破ったのはアロだった。
「.........あのこと言わなかったんですね。」
「あのことって何だ?」
「はあ......分かってるくせに。人が悪い」
「ジパングのことわざでねぇ。
敵を騙すにはナントヤラ、ってのがあんだよ」
「また日本語ですか。
日本語の習得は言語全体で見ても難易度が高いのであまり話題に出さないでほしいです」
「そりゃ悪かった。
でも、ベロキに免許をとっていて欲しいのは本心だぜ?」
「でも、たかが誘き出し目的のためにベロキの命まで危険に晒すのは共感できません」
「ああ。その点は安心しろ。
ベロキは死なない。あとから僕も会場へ行くからな」
「............へ?」
「奴さん、もうベロキの行方を嗅ぎつけやがったからな.........ここいらで誘き出して殺す」
「............クロをですか?」
「いや?あの仮面ヤロウはどうせ出てこない」
そう語るミクロの目は何を語っているのか、アロには予想もつかなかった。
殺意を抱いているのか、それとも半ば諦めているのか。
普段、飄々としていて感情を表に出さないからこそ、数年の時を共にしているアロでさえ、時々ミクロが何を考えているのか分からなくなることがある。
笑顔で「これからお前を殺す」と殺害予告をするし、無表情で人を見捨てることもある。
飄々としているときでさえ、目に精気が灯っていないことがある。
「じゃあ何を.........」
「アロ。
もう僕らは本格的に動かなきゃいけねぇんだよ............」
ミクロは椅子をゴロゴロと下げ、デスクに足を乗せるような姿勢を取る。
その手には先日の「ペスト」と名付けられた液体タコより発見された小型の機械が握られている。
何日も経ったことで、流石にそれのバッテリーは切れていて、ただ金属が機械の形を取っているだけのガラクタと成り果てている。
「始まるぜ、前哨戦がよ............」
アロはゴクリと唾を飲み込んだ。
ミクロの目はレンズとなり、歪みなくアロの顔を写している。
しかしそれは物理的な話。
この独特の緊張感は、この後リンが起床するまで続くのだった。




