怪獣のタイプ
前回の話で書き忘れたけど、この世界だとコスモ耐性の概念は一般常識です
....爆発音は10秒くらい前に終わったみたいだ。
俺がここまで吹き飛ばされてから30秒くらい。
砲撃はもう終わったかな?
近くからは何かが崩れるような音がするから、ここもそろそろ離れるべきだろう。
暗闇にも慣れてきた。
手頃にある瓦礫に手をかけ体を起こ...
「痛っつ.....!」
体が重い。
受け身をとったので軽減されているだろうが、肩を中心にめちゃくちゃ痛い。
骨が折れているような痛みじゃないので、おそらく打撲だろう。
とはいえ、骨が折れていないのはいい事だ。このくらいの傷なら治るまで待つか。
あのバズーカの余波で大砲の玉みたいに盛大に吹き飛ばされたんだから当然だが、背中を強く打ち付けたようだ。
...何でリンさんはあんな砲撃の中心に居て平気そうな顔をしてるんだ?
そんなことを考えながらそばに転がった瓦礫に手をかけ、体を起こす。
お、痛みが引いた。
関節や筋肉にも特段以上はなさそうだ。
道を塞いでいる瓦礫を蹴飛ばし、外に出る。
集合住宅の、割と高い位置の部屋の半壊したベランダに出る。
「わーお」
見渡す限り、瓦礫の山。
地面があちこち砕け、石ともコンクリートともとれない塊が転がっている。
その瓦礫は線上に転がっていて、その線を辿っていくとリンさんが立っていた。
撃った先のみならず、軌道上全てが凹んだり砕けたりしているのがその威力の高さを物語っている。
....ここまでやる必要あったのかな?
まあいいや。
地面に降りてスタスタとリンさんの所へ歩いてゆく。
「何で?」
「口内の防御力予想がつかないから仕方ないでしょ」
あ、違う。
俺が聞いたのはそっちの「なんで?」じゃなくて
まあいいや、質問しよう。
「こいつは塵にならないんだね」
俺が思ったのはこっちの「なんで?」だ?
俺はその「なんで?」をリンさんにぶつけた。
この間のマンティスは倒した後塵になって消える、という最期を迎えた。
しかし、このバクは撃ち抜かれたところに傷を負い、ダラダラと血を流しながら倒れている。
グロテスクで、見る人によってはかなり苦手そうなその様相は、こいつが血の通った生物であることを思い出させてくれる。
目からハイライトが消え、呼吸をしていない。
あれだけ力強かった手足もだらんと力が抜けている。
人間以外の生き物が死ぬ様を見るのは、俺個人として案外珍しい体験だったりする。
死体をまじまじと眺めていると、後ろからリンさんが質問に答えてくれた。
「そう。基準はわかってないけど、死体が残るタイプと、残らないタイプがいるの」
「別に残らないタイプが非生物って訳じゃなさそうだよね。
あれが生物じゃないとは思えないし」
あの動き方に、なんというか....頭が良すぎない感じが、いかにも生物っぽかった。
明らかに敵意を向けてくる感じも、怒った時の威圧感も。
それよりも明らかな根拠もある。
人間は何人も何人も殺してきた。
その中で、コスモで作られた人間ソックリの人形が警備に当たっていることもあった。
人形は喋れない。質問しても答えない。
しかし、喋れない状況下で外見だけで見分けなんてつくわけない。
そんな中簡単に見分ける方法がある。
心臓を見つけることだ。
人形は心臓の位置にある中枢の機械を壊すことで機能を停止する。
その機械が筋肉で形どられた心臓であれば人間だし、そうでなければ人形だ。
そして、マンティスを指した時。
思い出されるのは、剣越しに俺の手へと伝わってくる鼓動だった。
その巨体通りのスピードで、一定のリズムを刻む生命の象徴と言うべき音。
リンさんは続ける。
「もともと、科学技術が発展する前から理解どころか予測もできていない存在だった」
俺たちの生活を脅かす、巨大で奇怪な獣。
その外見が例え虫だろうと何だろうと、俺たちにとっては恐怖の対象だ。
「ひょっとしたら、理解できない存在なのかもしれないわね」
あの後は結構大変だった。
避難所へと避難していた住民の方に戦闘終了を報告。
掃除や危険な状況の片付け、修理修繕に時間がかかるから、もう少し避難所にいて欲しい、ということを伝えた。
怪獣と闘っていたとはいえ、家やその他もろもろを壊してしまった俺たちに感謝をしてくれた。
その夜に帰ってきたミクロさんに報告、既に要請を済ませていたので翌日から死体の解体や周りの修理が行われることになった。
ベロキくん、再生能力もぶっ飛んでる模様