コスモ強者
書く内容も話数も全て決まってるのに書く文章が浮かび上がってこないというジレンマ
....1週間経ったのマジ?
「右腕...左向き、上から、飛びかかり直線...」
右腕の振り払いを姿勢を崩して避け、スパイダーを壁に貼り付けて糸を支えにぐるんと曲がって移動する。
移動しながらバクから離れると、バクが前後ろ足に力を込めて構える。
後ろを向いて構えるが、やってきたのは飛びかかりだった。
「そっちじゃないんだよなあ...」
直線的な飛びかかりも慣れれば避けるのは難しくない。
そのうえ起き上がるのに時間もかかるらしいので、その間に更に距離をとる。
俺が数秒間走っていると、バクも走って追いかけてくる。
「あんまり頭良くないのかな?距離とってるのに」
狙っているのはさっきの肺活量ブレス。
ほかの行動は隙が少ないけど、あれは攻撃中に殆ど静止している。
絶好の攻撃チャンスになるわけだ。
矢継ぎ早に繰り出される攻撃を避けたり弾き返したりして躱していく。
拳、尻尾、拳、噛みつき、タックル、ボディプレス、また拳、拳、なぎ払い....。
飛びかかり直線!
思いっきりバックジャンプで避ける。
«そこは間に合わない!»
「あ、ごめん行き過ぎた」
俺はバクの腹下を潜って後ろまで走り、違う向きにバクを誘導する。
バクがくるりと振り向いて殴ってくる前にスパイダーをビルの壁に貼り付け、紐の収納と共に壁に近づき、ベランダの柵に捕まる。
片手で柵に捕まり、地面諸共バクを見下ろすような姿勢になる。
ふと後ろを見るけど、まだ来てない。
バクの方に視線を戻す。
「.....おいおいおい、それはまだ嬉しくないかなあ!」
その先には、大きく息を吸い込んでいるバクの姿があった。
コオオ...と息を吸って俺を見据えるバク。
俺が壁を蹴って別の建物に映るのと、超圧力のブレスが着弾するのはほとんど同時だった。
スパイダーで他の建物に近づいて窓に張り付く。
俺がいた場所は砕けている。
空気でコンクリート砕くとかどんな威力してるんだよ.....。
と、いうか。
「思いっきり距離をとれば吐いてくるんだな」
これはいい発見だ。
今のは駄目だったけど、もう一発撃たせればいい。
俺は掴んでいた柵を離し、飛び降りる。
高い位置だが、ベランダの柵を伝って降りていき、地面へと近づいていく。
俺がスタッと地面に降りると、その音を聞いてバクがこちらに振り返ってきた。
「さて、命懸けの鬼ごっこ再開だね」
俺はいつでも移動できるよう構え、好きなタイミングでスパイダーを出せるよう用意する。
バクが動く。拳を携え突っ込んでくる。
そのタイミングに合わせ、俺はもう一度スパイダーで距離をとった。
(たしかにできないことはないけどさ...)
リンははちゃめちゃに動き回るバクとベロキを追いながら装備を見返す。
ベロキからの提案、それはそれはぶっ飛んだものだった。
バクのブレスを真正面からパワーシールドで受けて、口内に砲撃を叩き込む。
可能。たしかに可能。不可能ではない。
しかし、それには距離や角度の完璧な位置取り、武器の再使用までの時間、完璧な陽動。
そして「ブレスを撃ってくれるか」の運の要素も絡んでくる。
パワーシールドは全回復までに残り44秒。
全回復してないとあの攻撃を防げるかどうかは不安だが、柵はもうひとつあるから大丈夫だ、とリンは考えた。
銃の方はもう使える。
装備の確認を終え、リンは補助武装のスカイウォーカーを起動。
足裏に丸型のエネルギーが出現し、それが広がることでリンの体がふわりと浮く。
空を歩き、ビルの間を通り抜け、高度を上げてベロキたちを追う。
良さげな位置にビルがあったので、リンはその屋上に降り立った。
腰に括りつけていて手榴弾を投げると、ベロキが着弾方向を向き、直線上にいたベロキを見つけた。
ベロキは先ほど「まかせて」と言って飛び出して行ったので恐らく何か考えがあるはず...と信じてリンは銃を取り出した。
ベロキがバクともみくちゃになり、抜けて一気に距離を離したところでバクがブレスを撃つ体勢に入る。
ベロキがリンの方向にスパイダーで飛び上がって過ぎ去ると、バクがブレスを放った。
ベロキ狙いのブレスは、リンの場所に着弾し.....
話が変わるが、コスモというエネルギーは、基本的には毒である。
毒を転用して戦闘しているので、当然コスモに対する耐性にも個人差がある。
耐性がある、それ即ち一度に使用できるコスモの量が多いということになり、手っ取り早く火力を出すことができる、ということでもある。
リンはコスモ耐性が非常に高い。
数々の武装の中で「パワーシールド」とリンの愛用している「バズーカ」はコスモ耐性の高い人物でないと使用できない武装だ。
それらを使用するための最低限のコスモ耐性を大幅に上回っているリンは、個人で戦車に匹敵する火力を出すことができる長距離移動砲台だ。
バクのブレスは通常のそれとは別物と言って差し支えない強度のパワーシールドにて無効化された。
吹き飛ぶ砂塵、崩れる瓦礫、爆発音。
そういったもの達が静まったとき、ブレスの着弾地点にはチャージを終えたリンが立っていた。