手垢のつきまくった婚約破棄もの
それは、王立学園の卒業記念舞踏会で始まった。
「今ここに、俺は公爵家令嬢アーク・ヤークとの婚約を解消し男爵家令嬢ミリョウと婚約を行う。」
王子は宣言を行った。
「王子なぜ・・・・」
「それは今から説明しよう。まずはお前に与えていた婚約指輪を回収させてもらう」
「え・・・」
その場に控えていた近衛兵により公爵令嬢の手から指輪が抜き取られた。
公爵令嬢は抜き取られたショックで絶叫し、
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ばたりと倒れた。
「さぁミリョウ令嬢、婚約者である証のこの指輪を付けてくれ」
「はい喜んで」
そして王子が近衛兵から受け取った指輪を男爵家令嬢につけたその瞬間・・・
「ギャー――――!!」
男爵家令嬢は絶叫し倒れた。
「皆のものこのような場で、騒がせてしまって済まぬ。これには事情があるのだ。彼女は魅了魔法持ちなのだ!!」
会場は大きくどよめく
「魅了魔法持ちは、外交その他において便利すぎる駒だ、そのため敵にならぬ前に殺すか、
絶対に王家に逆らえなくなる婚約契約を行うしかない。」
「そして、婚約契約に使える指輪は一つしかない。そのための婚約解消なのだ」
その時近衛兵によって椅子に座らされていた公爵家令嬢が、ショックからようやく立ち直り始め言った。
「王子、私はこの後どうすれば・・・・」
「それは婚約は破棄だが、結婚は行うぞ?」
「え?」
公爵家令嬢は混乱している。
「俺がお前を手放すと思うのか?」
「だって婚約を解消と・・・」
「あーあれか、ちょうど先ほどのタイミングでお前との婚約期間が3年を超えたんだ」
「え?」
「王家との婚約については、長命種も含め3年は、ほかのものの血が入ってはいけないので
純潔でなくても清廉であることを要求されることは知ってるな。」
「はい王子」
「なので、婚約を解消してすぐ結婚だ」
「え?」
「あーあと、婚約契約指輪を付けたまま結婚するとその契約が永続になるので、それも面白くないのもある。」
「え?でも私は・・・・」
「契約で言いなりになるように改造されたお前じゃない、元のお前が好きなんだ。ただ解消するには
より王家に都合のいい婚約者が必要で、ちょうど都合がいいことに獲物がかかってな。」
ちょうど、男爵令嬢もショックからようやく立ち直り始めた。
「王子これは一体!!って力が使えない」
「あーおはよう、わが忠実な奴隷と書いて婚約契約者よ」
「なんで、魅了の力は絶対のはずなのに・・・」
「それは、異性に対しては100%かかるだろうな、だが私は生物学的には女だ」
一部を除く会場の人間すべてが固まった。
「なので公爵令嬢、いや公爵令息よ、安心していい子供は私が生むので問題ない」
「え?」
「この婚約はもともと、わが両親である王と王妃、そしてお前の両親である公爵家夫妻も
その事情を知ってのことだ。」
「え?え?え?」
「体の見た目はほぼ男性で生物学的には女性で、思考は男性の俺と、見た目は女性だが、生殖器官は隠れているが男性で思考は女性であるお前、破れ鍋に綴じ蓋といったところだ」
「え?え?え?」
「さぁ明日にはサプライズ結婚式だ!」
そして二人は結ばれ幸せな家庭を作りましたとさ。
え?男爵令嬢はどうなったのかって?
じつはまだ王国にいるのです。
外交用ハニトラ要員として
「もういやーーーーーーーー!!」
がんばれ男爵令嬢、3年間清廉だと婚約者から側妃にはなれるぞー
なお数か月毎にハニトラ実働要員として使われるからお察し・・・
まあがちがちに防備を固めてる高級貴族を魅了できるほどの
魅了魔法使える人材を逃すわけないよね