#5 良縁友人/クラスメイト
「それじゃ、みんなに重大発表がある。なんと、転校生を紹介するぞ」
「転校生?」
「ざわざわ」
「可愛いといいな」
「バーカ、んなアニメみたいなことあるかよ!ゴツい大男だろ?」
「じゃあ、入れー」
拙者は扉を横に開き、教室へと足を踏み入れた。
「お、来たか......クロノブ」
「それじゃ自己紹介をしてもらおうかな」
「拙者、野を越え山を超え海を越え、鳥の島の信晴国という地より参上した。
黒田簡太郎秀吉座右左衛門海信と申す者で候。」
「拙者!?」
「名前なっが......」
「どこかの王族?名前覚えられるかな......」
「好きなように呼んでいただいて構いませんが、先日の大会の観戦で知り合った友人からは、クロノブと呼ばれているでござるよ!」
「じゃあ、クロっちで!」
「座右左衛門をもじって、サウザーというのはどうだろうか?」
「ダウチンノブノブ。」
「じゃあ私も、その友人さんと同じクロノブで......ダウチンノブノブ!?!?!?」
「ってか、かわ......!あの、連絡先交換しませんか?」
「おっ、オレもっ......!」
「お前ら静かに-」
「色髪能力は何ですか?」
1人の男子生徒が言った。
その瞬間、その場が凍りついた。
「あちゃー」
オクタ殿は手を顔に当て、天を仰いだ。
質問した彼には見覚えがあった。
1回戦でプラチナ殿と素晴らしい試合を演じた紫髪のレイピア使い。
生徒会副会長のヴィオレオット・パープロン殿だ。
ここは正直に答えるほかあるまい。
「拙者にそのようなものはござらぬよ。今のところは。」
その場がざわざわとする。
「ではなぜ、この色髪学園にやってきたのですか?
この色髪学園は<色髪能力者>を育てるための学園です。
能力の成長余地が極めて乏しいクロマノッツ......」
「おいパープロン、言葉に気をつけろよ」
教師が注意した。
「......黒髪をはじめとした彩度値0の<無彩色者>は、本来なら2年次以降は、必然的に研究クラスに隔離されるはずです。
なのになぜ、そこの方は我々と同じ2年生の通常クラスに入れられるのです?
どこかの国の王族で、金か何かを積んだからですか?圧力でもかけられたのですか?」
「はあ、そんなに知りたければ先生が答えよう、彼は-」
「カレッ!?」
「それは拙者が、ここにいるみんなさんと友達になりたいからでござるよ!」
拙者は持ち前の大きな声で言った。
「......は?」
「拙者、昨日の校内最強決定戦を観戦していたでござる。
どの試合も、凄まじい熱気でござった!
そのような御仁たちと知り合えるとは......拙者嬉しゅうて嬉しゅうて仕方がないでござるよ!」
「どの分際で......」
「おお、いいぞクロノブ!!」
「クロっちーーーー!!!」
口笛や歓声が上がった。
賑やかなクラスでござる!
「それにそれこそヴィオレオット・パープロン殿。
貴様の試合、拙者感激でござった!」
「貴様、まさか俺が敗者だと愚弄す-」
「あの初撃の速さ!それに放り投げられても空中で体勢を整えて、相手との距離を取りながら着地!からの立ち上がり!
貴様のあの動きは、力と柔軟さのどちらもが十分に必要な上、事前に修練を重ねなければ感覚の掴めない絶技でござる!」
「.........!?」
「それに勝利を諦めることなく、プラチナ殿に敗者復活戦を勝ち上がることを宣言、再戦の約束を取り付けるとは!」
「そんな事言ってたの?」
「ええ!」
「おい!?ふざけるな!!」
「耳、良っ!」
「っ.........!!くだらん盗み聞きを-」
「はっ!!そうでござる!
敗者復活戦........敗者復活戦はいつ開催されるのです!?」
拙者は興奮気味に担任殿に訊いた。
「ええっと......昨日のが予選で、来週の砂曜日に敗者復活戦、その翌日の陽様曜日に本戦...つまり決勝大会だ。」
「来週!?な、ならば!」
「?」
「拙者を敗者復活戦に出場させていただくことはできぬだろうか!!?」
「はっ......はあああああああああ!?」
一際驚くヴィオレオット殿だったが、他のみんなもざわざわしていた。
「ええっと、先生はそんなに偉い先生じゃないから通るわかんないけど......一応聞いてみるよ。」
「よろしくお願いするで御座る!」
そして拙者は窓際の一番後ろの席に座った。
「ヴィオレオット・パープロン......あいつはああいうやつだから、気にするなよな。
口は汚く態度は悪いが、テストの点数はいつも満点。
生徒会としての仕事も責任を持ってきっちり真面目にこなす、厄介なタイプだ。」
オクタ殿が教えてくれた。
「ええ、立ち会うのが楽しみでござるよ!」
「あはは......それよりクロノブ、まさか2年生からとはな。しかも同じクラス!
しかも俺たち隣の席だぜ?」
「そうでござるな、良い縁でござる!
学年に関しては、この色髪学園は3年制でござるから、上級生も下級生もいる2年生が相応しいと校長殿が。」
「あのいかにも頼りなさげな校長がそんなことを言ったのか......?それは意外だったな。」
「クロっちクロっち!ウチ、ズミカ・ブルーコっていうの。ミカって呼んで、よろしくねー」
前の席に座る水色の髪の"ぱりぴ"な彼女は振り返って言った。
「ミカ殿、よろしくでござる!」
ミカ殿の隣の席の、薄茶色の前髪ぱっつんの男子生徒も振り返って言った。
「えと、僕はパピルス・パルプス。その、よろしく......」
「パピルス殿、よろしくでござる!」
「えと......僕で良ければ、連絡先交換してくれませんか?」
「あ、ウチも!」
拙者は支給されたすまあとふおんの操作などわからず、言われるがままに連絡先を交換した。
そしていくつかの授業を終えて、昼休み。
「クロっち食べるスピードはやっ!?」
「でも、無理矢理の早食いじゃない。毎秒200回、ちゃんと噛んで味わってるね。」
「すっげえ......これってやっぱり、ニンジャの秘伝の技ってやつなのか?」
「ご馳走様で御座る。」
昼飯をしっかりと食べ終えた拙者は、昼休みが終わらぬうちにと足早に、1年生のいる校舎へと向かった。
約束通りソフラ師匠と合流するためでござる。
しかし......
「オオイ!!」
汚い怒号とともに、机だか椅子だかがガタン!と倒れるような音が聞こえた。
先生と考えるには若い声でござった。
これはもしや......不良生徒同士の喧嘩でござろうか!?
拙者はテンションが上がって、ついその教室を覗きにいった。
すると、ガラの悪い不良たちにドヤサれていたのは、敵対する別の不良......ではなく。
ソフラ師匠だった。
INFOMATION
色髪能力の種類や強さは、髪の色やその濃さで決まる。
黒や白のような無彩色からどれだけ離れているかの数値が彩度という単位で表される。
クロマ値が0の黒髪や白髪を、蔑む呼び方として<クロマノッツ>がある。




