『星影』転入
黒の学ランに身を包み、腕には腕章とも言える星形のブローチでリボンを留める。リボンは一年生を示す赤色だ。
シンプルな制服に着替え終わると、蛍は奏楽から貰った片耳のピアスに触れて「よしっ」と呟いた。
今日は月曜日……蛍と奏楽が『私立星影高等学校』に転入する日である。
* * *
星影高校……都内にある日本最大の敷地面積を誇る学校で、全校生徒は毎年百人とちょっと。四つの体育館と二つのプール、五十以上にも上るトレーニングルームや百種を上回る武器を保管した武器庫を設備。更にはいくら大怪我しても大丈夫なように、敷地内に小さな病院すら併設してある。正に、ガーディアン隊員を育て上げる為に必要なものは全て揃った『守護戦士製造工場』なのである。
そんな一般の高校とはかけ離れた学校な訳だが、意外にも校舎そのものはまともだった。所々黒ずんだ廊下に少し消えかかった壁の落書き、割れた痕跡を残す窓ガラスなど少しやんちゃな何処にでもある高校のようだ。校舎自体、巨大な敷地面積とは裏腹に一般高校と同じくらい、否それよりも少し小さいくらいの大きさしかない。併設されてある設備が異常なだけで、あくまで学校ということだろう。
ちなみに四階建ての校舎は、一階に七組と六組、二階に五組と四組、三階に三組と二組、そして四階に一組というクラス配置がされており、一学年全員が受ける座学用の講義室は三つ共全て四階に用意されてある。まるで、生徒の成績を可視化したような配置だった。
恐らくこの配置を決めた人間は性格が歪んでいたのだろう。
「はーい選ばれし一組の皆さん、ごきげんよう。今日は皆さんにお知らせがあります。何とこの一組に転入生がやって来ることになりました。ドンドンパフパフー。というわけで、くれぐれも粗相のないように気をつけてください。はーい、お二人さん入って来てくださーい」
一組の担任教師が非常にやる気のない声でテキトーに告げれば、一呼吸置いて教室の扉が音を立てて開けられる。
教室内に並んで入って来た二人が黒板前に立つと、一組諸君は一瞬時が止まり、そして一気に驚愕の表情を浮かべていった。
「どうも〜、初めまして〜。春桜奏楽です〜。これからよろしくお願いします。……で、こっちの人間不信拗らせちゃった守銭奴が……」
「土萌蛍……んだよ、そのふざけた紹介の仕方は!?」
「え、ほたちゃん自己紹介苦手だから、ボクがわかりやすく説明してあげた方が良いかなって」
「余計なお世話だ!つか悪いとこ紹介してどうすんだよ!?」
「え、ほたちゃん性格悪い自覚あったんですか?」
「喧嘩売ってんのか、ソラ!!」
これからクラスメイトとなる四人の前で、突然漫才のような口喧嘩を始める二人。
全員がポカンとした表情で二人の喧嘩を見守る……というか、呆気に取られている中、ひとしきりやいのやいの言い合って満足したのか、二人の喧嘩は蛍の溜め息でもって終結を迎えた。
「はぁ……まあとりあえず……」
そこで言葉を区切った蛍は、鋭い視線でクラスメイト達を睨み付けると、奏楽の腰を抱いて自身の方へと引き寄せた。
「ソラは俺のだ。絶対誰も手ェ出すんじゃねぇぞ」
殺気にも近しい雰囲気を纏って牽制する蛍。キョトンとしているが、満更でもなさそうな奏楽。どう見ても友達の域を超えた二人の距離。
教室はまたもやフリーズに襲われた。否むしろ、関われば大火傷しそうな二人の関係から身を守ってくれたと言った方が正しいかもしれない。
そんなこんなで、二人の星影高校生活は異様な雰囲気と共にスタートしたのであった。
―――《キャラクターイメージ図》
読んで頂きありがとうございました!
めちゃ短いですけど……。
とりあえず補足説明させてください!
制服の腕に結んであるリボンですが、学年によって色が分かれていて
赤……一年
青……二年
緑……三年
となっています。
ちなみに、今年の一組の人数ですが、
一年生が奏楽と蛍含めて二人(つまり、二人が来るまで零だった)
二年生が二人
三年生が三人となってます。
三年生の三人は星天七宿家の貴人ですが、二年生二人は一般の貴人です。
その他諸々は後々出てきます。
次回もお楽しみに。




