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星に唄う  作者: 井ノ上雪恵
天璇指極編
13/101

試験

「……つまりどういうことなんだよ」


 奏楽の答えを受け、更にわけがわからなくなった蛍が眉を顰める。奏楽はクスッと笑うと、「えっとですね〜」と具体的に説明を始めた。


「実は星証を使った試験っていうのは、次期北斗七星を決める為のものじゃなくて、候補を探す為のものなんで……やる意味としては候補の子供達に早い段階から北斗七星になる為の修行を積ませるのが主な目的なんですよね。一日中星証を持つことができる子は基本二人以上は居るものですし、どうせ時期が来れば勝手に星証が目の前に現れて次期北斗七星に選ばれるんで、次期北斗七星を決めるという意味では、試験自体に何の価値もないですね〜」

「何の価値もねぇって……つうか、時期がくれば勝手に星証が現れるってどういうことだよ」

「言葉の通りですよ?力を与えてやっても良いって北斗七星ほしが認めてくれた時点で、北斗七星ほしに選ばれた人の前に星証が現れて、正式に北斗七星になれるんです。その選ばれた人が試験の合格者か否かはまた別問題で、試験を受けたことがない人が選ばれるかもしれませんし、試験に合格したのに選ばれない場合もあります。そう言うボクも試験は受けたことないですからね〜」

「はっ!?そうなのか!?」


 てっきり北斗七星になる人間は全員この試験を受けてきたのだと思っていた蛍が驚きの声を上げる。対する奏楽は「この試験自体やる家とやらない家がありますからね〜」とフワフワ告げた。


「生まれる前から、もしくは生まれた瞬間から次期北斗七星になることが決まっている子供が誕生する御家があるんですよ〜。その家は試験なんてしなくても次期北斗七星が誰かわかるんで、わざわざ試験なんてしません。北斗七星に覚醒する日を待つだけです」

「じゃあソラも生まれた時にはもう北斗七星になることが決まってたのか?」

「そうですね〜。春桜家はたまに生まれるんですよ。そういう生まれた瞬間から次期北斗七星になることが決まっている子が。ちなみに土萌家は生まれる前から決まってますよ」

「へぇ……ああ、そう言えば昨日梨瀬さんがそんなこと言ってたな」


 昨夜の梨瀬との会話を思い出した蛍に、ニコニコ笑い返しながら奏楽は続きを話した。


「土萌家だけは誰が次期北斗七星になるか初めから決まってるんですよね〜。代々、現北斗七星のお子さんが次期北斗七星に選ばれてきたんですよ〜」

「へぇ……ん?ちょっと待て。じゃあ俺は……」


 奏楽の言葉に何か気付いた蛍が待ったをかける。

 土萌家では現北斗七星の子供が次代北斗七星に必ず選ばれる……現北斗七星は梨瀬。ということは……。


「そうなんですよ〜。普通、絶対にほたちゃんは次期北斗七星に選ばれない筈なんですよね〜」


 奏楽があっさり言い放つ。

 蛍は梨瀬の甥で、子供というわけではない。北斗七星の子供が北斗七星になると言うのであれば、普通に考えて蛍は北斗七星になれないというわけだ。


「否、じゃあ何で俺は試験なんか受けてんだよ!?」


 蛍が声を荒げる。当然の反応だろう。


「だから梨瀬さん、言ってたじゃないですか〜。本来私の息子が選ばれるべきだったが、試験に落ちたって。土萌家が試験を行うこと自体イレギュラーな訳ですし、色々と不思議なことが起こってるんですね〜」

「……そんなあっけらかんと言うことか?ソレは……」


 聞く限りでは相当に不自然なことが起こっているらしいのに、一切焦りを見せない奏楽に蛍が呆れる。相変わらずマイペースなものだ。


「……じゃあ、俺が試験を受けてる意味は何かあんのか?聞く限りなさそうだが?」


 試験を受ける目的自体、次期北斗七星候補を見つけることと、その候補に幼少期から色々教育を施すことにあるとすれば、既に自分以外候補がおらず、もうとっくに幼少期など過ぎ去った蛍には試験を受ける意味がまるでない。

 その上、土萌家では星証を使った試験など本来行わないと言う。

 何故自分が一日かけて試験を受けなければいけないのか、蛍にはさっぱりわからない。


「ん〜……はっきりしたことは梨瀬さんに聞かなきゃわかりませんけど〜……多分試験を受けさせて、結果を早く知らないと皆不安なんですよ」

「??どういうことだ?」


 盛大に頭にハテナを飛ばした蛍が首を傾げる。奏楽の説明はいつも解読するのに時間がかかるのだ。

 つまり説明下手なのである。

 そんな説明下手なお姫様は、少しでも蛍に理解してもらおうと更に説明を続けた。


「えっとですね……星天七宿家は簡単に言えば、北斗七星を絶やさない為にできた仕組みみたいなものなんですよ。各家に一人ずつ……北斗七星は御家の誇りで、他のどの家でもなく自分の家に代々受け継がれてきた国の英雄で……絶対に一世代に一人、生まれてきてもらわないと困るんですよね」


 そこで言葉を区切ると、奏楽は眉を下げて困ったように笑った。

 その表情が気になったが、蛍は黙って奏楽の話を聞く。


「それで土萌家は……さっきも言った通り、北斗七星の子供が次代北斗七星に選ばれます。でも今回、梨瀬さんの子供は選ばれず、他にも試したであろう土萌の人間は全員ダメだった……それがどういうことかわかりますか?星天七宿家たる土萌の価値が揺らいでるってことです」


 いつになく真剣な目でこちらの目を見据えてくる奏楽に、蛍は少なからず緊張する。

 蛍は星天七宿家のことなど表面しか知らない。それでも、家の長たる北斗七星が途切れることがあればどうなるか……具体的にはわからずとも、大変なことになるということだけは蛍にも想像するにかたくない。


「……ほたちゃんは言わば、土萌家に残された最後の希望です。試験を受けてそれに合格すれば、確実ではないですけど、希望は少しだけ大きくなる。皆安心したいんですよ。ほたちゃんが候補に選ばれて、土萌にはまだちゃんと次期北斗七星(候補)が生まれているんだって……不安な心を慰めたいんですよ……まあ、あくまでボクの推測ですけどね?」


 そう言って奏楽は小さく微笑んだ。

 つまりはそういうことらしい。

 試験は別に北斗七星を決めるとか見つけるとか、そんな形式張ったものじゃなく、結局土萌の人間が安心する為だけのお遊び的なものだった。

 蛍自身は下らないと思うが、試験を受けると決めたのは自分なので今更どうこう言う気はない。


「じゃあもし俺が試験に落ちれば、土萌家はどうなるんだ?」


 蛍が興味本位で聞いてみる。

 北斗七星が生まれなくなった星天七宿家……少なくとも御家の価値は半減どころでは済まないだろう。


「……わかりません。このまま“β(メラク)”が土萌家に生まれてこなければ、星天七宿家の座から降ろされるとは思います。でも……優秀な貴人が生まれる家系であることに間違いはないんで、多分ガーディアンとして働くことに変わりはないと思いますよ?」

「……めんどくせぇ家系だな、星天七宿家ってのは……」


 蛍がぶっきらぼうに呟けば、奏楽は苦笑いを浮かべながら「そうですね」と頷いた。

読んで頂きありがとうございました!!


中々に難しい説明がてんこ盛りで本当にすみません!!多分話が進むにつれて徐々に慣れてくると思います。

まあフィーリングでフワッと読み進めていっても全然大丈夫なんで、わからないところがあったら気軽に感想で質問してください!


次回もお楽しみに

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