a-31_今際に見た夢
ナギはリンとスーの体温を感じつつ、崩れた天井を見ていた。
そこを塞ぐかのように勢いよく蔦が伸び、もはや天井のように展開される。
それと同時に、自分たちを取り囲む蔦の勢いが衰えていることを感じた。
そしてそれが、もはや天井のようになった蔦の上で戦う、神衛隊員達の活躍の賜物であると、理解する。
『蔦は無限では無いようだ。今はリノバの方に注意が向かっているぞ』
リンの下から這い出したナギの脳裏に、誰かの言葉が届いた。
それはおそらく上の様子を伝えるものだが、ナギの注意を目の前で這いずる蔦の網に向けた。
ナギは確信する。
(今しかない)
ナギは自分の「神授の器」が手元にあるのを確認し、立ち上がる。
身体中が痛いが、不思議と動けないことはなかった。
「あなた、何をする気?」
スーもリンの下から這い出し、疲れ切った声でナギに訊ねる。
その際に彼女はリンのことを仰向けに寝かせたが、気を失っているのか、なんの反応もない。
「夢に浸る同級生に気付………かな」
ナギは唯一の武器を構え、蔦に向かって走り出した。
目指すは一点、顕になった蔦の根塊。
蔦がしつこく纏わりつく。
だが、その力は弱々しい。
ナギはその膂力を以って、無理やりにそれらを引き千切る。
止まらない。
何故止まらないのか、何故ここまで必死になっているのか、どうにも彼女には分からないままだ。
しかし、一つだけ言えることがあった。
「こんの、梃子摺らせやがってぇ!」
間合いに辿りついたナギは、絶叫と共に『神授の器』を振り抜く。
しかし、その腕に勢いよく蔦が絡みついた。
(しまった!)
ナギは武器の持ち替えを試みたが、「蔦」は先までの勢いが嘘だったかのように勢いよく巻きつき、微塵も動かせない。
万事休す。
蔦の壁が再度、根塊を覆っていく。
ナギはその瞬間を見つめることしかできない。
「今よ!」
スーの声が聞こえた。
閃光が走り、巻き付く蔦の力が弱まった。
遅れて、焦げ臭さと、煙。そして熱。
その中を、ナギは彼女の声を信じ、蔦を振り切り、今度こそ、『御化』の『核』に肉薄する。
「詰み!」
ナギは今度こそ、武器を振り下ろす。
武器が届く。ナギはその時、その塊に、シンの姿を見た。
今まで必死すぎて気が付かなかったが、その時になって初めて確かに見えたのだ。
ナギの中でバラバラだった全ての点が、線で結ばれるように一つの形となった。
(それが、あなたが望んだこと)
ナギが突き立てた「神授の器」。
そのリンの短刀を真似た武器が根塊に突き刺さり、音を立てる。
金属同士の衝突のような甲高い音。
音が通り過ぎた。
蔦は力を失い、地に伏せるように落下を始める。
時が止まったかのようだった。
急激に訪れた静寂は、一つの「御化」の終わりを示していた。




