a-29_月影に吼ゆ_2
突如響いたその声は、物理的なものではなかった。
それは、目まぐるしく状況が変遷していく中で、リンの頭から完全に抜けていた『延話』の御技。
今の彼女にでもできる、外部との連絡手段、そして現状を打破しうる要素だった。
しかし、そうだ。それはもう数手前の話である。
ここまで追い詰められていては、応援がここまで来るまでの時間すら稼げない。
現状の局面を一気にひっくり返せるほどの一手とはなり得ない。
せめて現状を伝えるべく、リンは延話を試みようと意識を集中した。
すると、それを読んだような鋭い言葉が頭に流れ込んできた。
『返事はいい、要件だけ伝える。今からそこの天井を落とす!』
それはどういうことか、などとリンは考えることはなかった。
延話では声質が分からないが、不思議とリンにはそれがリノバのものであると分かった。
(そうだ!リノバが何もしていていない訳がなかった!)
リンは渾身の力を込めて身体を引き起こし、近くでリンを守るように背中を合わせるようにして戦う二人の肩を掴んだ。
先の自分がそうだったように、集中している人間に先の声は届きにくい。
「伏せて!」
驚く二人を他所に、リンは叫び、そして二人を地面に突き伏せるように押し倒した。
そしてその瞬間、雷鳴を何倍にも大きくしたような轟音が頭上に響いた。
月明かりが照らす瓦礫の山。そのうちで、未だに蔦は動き回る。
そこに降り立つ複数の黒い影。
月影の元に降り立つ彼らは、紛れもなく『神の力』であった。
短いけど




