a-28_活路を征く_5
一般的に人は、どんな時に諦めを口にするのだろうか。
ナギは激しい戦いの最中、呑気にもそんなことを考えていた。
別に、彼女にそんな余裕があったなどという訳ではない。
ナギとて視界がゆらゆらと揺れ始め、平衡感覚を失う寸前だ。
それは自然に湧き上がるある種の逃避のようなものだった。
一歩の先にさえも勝ちの見えない負け戦。
このまま抵抗を続けたところで結果は見えていて、こうして戦い続けることは無駄に苦しむことに他ならない。
ならばなぜ、彼女は、彼女達は抵抗を続けるのだろうか。
リンの斬撃を掻い潜った蔦が迫るのを見て、ナギは渾身の力で蔦を一気に蹴り飛ばした。
そして、リンとスーの二人の姿を横目で見る。
今にも倒れそうな二人。薄暗がりの中でも分かるくらいに汗だくで、顔色も悪い。
それなのに、二人は決して諦めようとはしなかった。
(二人は何を思っているのだろう)
ナギには解らない。
彼女には、本来ならば積み上げているはずの人格を形成する、「記憶」が欠けている。
それは二年前にサクラスに拾われる、もっと前の記憶。
失われた過去の積み上げ。
代わりに、彼女らに「ナギ」として拾われて以来、生まれたての赤子のように社会を学び、海綿体のように知識を吸収した。
それが今のナギという人格だ。
早い話、ナギは「ナギ」としての練度が、積み上げが、見た目に反して少ない。
だからこそ彼女には解らないことが多い。気になることで世の中は溢れている。
生まれて二年の赤子と変わりがない。
彼女は二人が諦めない理由について、いくつかの仮説は建てられる。
しかしそれは、あまりにも多角的に広がりすぎて、とても理解には程遠い。
彼女は理解できない。
自分が彼女達と同じように諦めないで戦っている、その理由をも。
ナギは目を閉じ、息を吐いた。
探し始める。
それは秘された法則。そこに至る道。望む結果を手繰り寄せる手段。
『神』の『御技』。
『………なんだい君は?
………あぁ、そう。それは見えなかった。君、面白いね。図々しいし。
いいとも、君にも特別に貸してあげるよ。特別に、ね。
あ、そうだ。彼女には感謝しなよ?』
旅路はどれほどの長さだったのだろうか。
聞き覚えのない声と共に、ナギは手元に暖かな光を感じ、ゆっくりと目を開いた。
手元に目を向けると、そこには歪な形の光の塊があった。
その塊はリンの持つそれと同様の光を放つ、紛れもない『神授の器』だった。
それと共に、ナギは身体に熱が灯ったように活力で満ち満ちていることに気が付く。
腕を振る。
彼女を取り囲む触手がその軌跡のなぞった地点を起点に、全て地面に落ちる。
しかし、すぐさま別の触手が伸び、ナギの元に伸びてくる。
切りがない。
ナギはそれを見、薄く笑い、身を沈める。
(さぁ、この藪道に道を切り開きましょうか)
「ごめんなさいね?私、往生際が悪いみたい」




