a-28_活路を征く_2
スーは迷っている。
自分が何をするべきなのか、どうすれば正しいのか。
シンが何かを飲み込んだ時、蔦に飲み込まれた時、そして二人が御化へと向かって飛び出した時、彼女は何もしなかった。
いや、できなかった。
思い出す。
あの火の海を。
思いがけない惨劇を。
自分が作り上げた、地獄の再現を。
足がすくんで前に出ない。
失敗を恐れる心が、現実の身体にまで侵食する。
「あなた達に足りないのは『具体性』よ」
ふと、もう遠い昔の話のようにも感じるような、サクラスという女性の言葉を思い出した。
「漠然とした目標しかないから、悩んで、迷って、定まらない。あなた達の担任は、それを見抜いているんでしょうね。
あえて断言するけど、『御化狩り』で迷いは『死』に直結する。だから、迷いは極力無くさなきゃならない。
………ああ、迷いを無くすっていうのは、自分が持つ択を減らすってことよ。最初のうちはそれでいい。
だから、目標を持ちなさい。具体的な、実際に行動に移せるような、ね。一見関係ないようにも思えるかもしれないけれど、それらを積み上げて初めて結果が伴うことは忘れないで」
なぜそれを思い出したのか、スーには分からなかった。
そして、彼女の言っていたことの答えも、スーは見出せずにいた。
具体性とは何だ。
具体的にどうすれば、どのように考えることなのか。
スーは目の前の二人の姿を見る。
二人はとても常人には真似できないような機敏な動きをする。
その姿に迷いは見えない。
しかし、二人からは今にも崩れそうな朽木の上にいるかのような危うさが感じられた。
いまだに根塊に届かないのがその証拠だ。
では、今自分にできることは何か。
(どうすれば良いの?)
考えているうちにも状況は目紛しく変わっていく。
蔦が彼女達を覆う速度が、彼女達が道を切り開く速度を上回っている。
このままでは先に二人が閉じ込められてしまう。
それは詰まるところ、二人の死、延いては彼女自身の死すらも意味する。
助けを期待しようにも、こんな地下世界に助けは来ない。
ならば自分で切り開くしかないのだ。
(二人みたいに………)
スーは手のひらを正面に広げた。
それは蔦の塊、その一部を覆い隠す。
今の私にできる、最大限のこと。
あの時のような失敗はもう犯さない。
覚悟を決めた彼女は想起するあの記憶を頭の奥底に押し込んで蓋をする。
そして代わりに意識を集中させ、道を辿る。
原初へと至る道。『神』が授けた初めの『御技』。
今回は慎重に辿ることにだけを考え、それ以外の余計な思考はしない。
だが、一つだけ、祈る。
『神』よ。
どうか少しだけ、『勇気』をください。
アゲルカマヨタ。デモアゲル。




