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幽明の番人  作者: 寺島という概念
『信仰』の御化
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「ぶっちゃけ、この階段をわざわざ下る必要はなくてね。昇降機があるんだ」

 シンは入学初日に『神』に会うということで、非常に緊張していた。

 上手く振る舞えるだろうか、間違えたことをしないだろうか。そんなことばかりを考えては不安を強めていた。

 しかしそんなシンの気持ちも知らず、彼らを先導するマギスという男は、軽い調子で話し始めた。

 シンはその男が発する言葉から、どうにも薄っぺらな印象を受けた。

 嘘ではないがそれ以上に本心も語っていないような、そんな話し方なのだ。

 そう思ったのは、もしかしたら彼自身に似ているところがあったからかもしれない。

 真偽はともかく、シンはそのマギスという男が一眼ひとめ見たときから気に入らなかった。

「それなら何故こうして無駄………失敬、苦労してまで階段を下るのかというと、こうして長い道を降るのも、由緒ゆいしょある儀式の一部だからなんだ」

 マギスは歩く間、沈黙に向けて話をし続けた。

 もはやその場に誰もいなくても、話し続けたのではないだろうか。

 そう思えるくらい一方的な語り口だった。

 そして彼が話す内容に、シンは強い衝撃を受けた。

 それはまるで、この儀式には意味がないと言外に語っているようなものだったからだ。

(神衛隊は、『神』を敬う組織だろう?)

 シンは訳が分からず、叫びたくなるのを必死に押さえ込んだ。

 単純に、儀式全てに意味を持たせるのは難しい、それだけの話ではないか。

 そう考えて内声を抑え込んだ。

 だが、マギスが次に語った内容に、彼は我慢が効かなくなった。

「この道には『神気』とされるものが満ちているとされていてね。それが君たちに馴染なじむことでこの後の『儀式』がとどこおりなく進むことを目的としている………とまあ、それが名目。本当のところは箔付はくづけと言ったところかな。だってほら、こういう場所を歩くと、それっぽい気がするだろ?」

「貴方には、『神』に対して敬意はないのですか!?」

 気づけば口をついて出たその言葉。

 実際に音にしてしまったことでその希薄さに気づく。

 あるいは純粋な疑問だったのかもしれない。

 だがれ以上に、自分がなぜそれを問うたのか、それが分からなかった。

 何が何やら、訳が分からない。

 シンの言葉を聞いたマギスは立ち止まり、その場にいた他の生徒たちも立ち止まる。

 足音が止まり、音が消えた。

 シンはその瞬間に我に帰り、咄嗟に自分の行いを内省した。

 後悔が頭を支配する。

 マギスが振り返った。

 嫌な汗が全身から吹き出し、背中を伝った。

 その感覚を不快に思う間もなく、何を言われるだろうという不安が頭をよぎる。

「ん?あるよ。ただ、それとこれとは話は別というだけの話。気に障ったならごめんね」

 それは、なんてことのない謝罪だった。

 警戒をしていたシンからすれば肩透かしも良いところだ。

 シンは元よりそれに対する反論など持ち合わせておらず、ただ言葉を詰まらせた。

 そして、マギスはその返答を待つことはなかった。

 緩やかに動き出した時の中、彼は穏やかに皆に呼びかけた。

「行こうか」

 一団は再度歩き出した。

 まるではなから何もなかったかのように。

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