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c-4_忘我の果て-1
シンは微睡の中にいた。
ぬるりと粘性を持った滑るような眠りの中。
少し前には暖かい熱を感じていたが、今やそれが止んでからどのくらいの時間が経ったのかさえ、シンは上手く把握できていなかった。
暗く、静かで、誰にも邪魔されない。
霞むような頭で、日の出よりも少しだけ早く目が覚めたあの日を思い出す。
まだ起きるには早い。
時折、ゆらゆらと身体が揺さぶられるのを彼は感じ取っていた。
それは母の腕に抱かれる様にも似て、妙に懐かしく心地よく感じられる。
穏やか揺さぶりに身を委ねつつ、彼はぼんやりと母の事を思う。
一見すると無関係にも見えるそれらの思考は彼の中で、意識せずとも撚り合い、一本の糸のようにまとまり、形となった。
それは記憶。かつての追想。ひと紡ぎの糸。
その追憶はシンの意図に依らず、止めど無い。
そして意識の湖面を潜り、無意識の深層までも繋がっていた。




