b-7_悪路にて-2
どれだけ歩いただろうか。
もう十分歩いたではないか。
薄暗く、匂いの籠った下水道を歩く二人は、示し合わせるでもなく同じことを考えていた。
体感ではかなりの距離を進んでいる。もう長い時間この地下水道を歩いている。
だが同時に、思考は体感ほど進んでいないだろうことを導き出していた。
リノバは灯をかざして、先を見る。
微かに奥の闇は薄まるが、そこには別段変わったものは存在していなかった。
地下の闇は確実に二人から速度を奪っていた。
汚泥のような粘性の強い液体のうちを進むようなもので、それは速度を奪うだけでなく、普段にも増して体力を奪うのだ。
「これは………想像以上に来るな………」
自分とその伴走者の気を紛らわすためにリノバが漏らした言葉は、如何にも空虚で中身のないものであった。
だが、それは本心から出たものであり、それ以外に何も考えられないという彼の心中をそのまま表したものであった。
「そうね………これほどとは思わなかったわ。でも、もう少しのはず………」
リンの言葉はほとんどが自分に言い聞かせる為のもので、後半はほとんど聞こえないほど小さなものだった。
地下の闇と匂い、そして閉塞感が着実に彼ら二人の体力を奪っていく。
リノバはリンの様子を見て、いよいよ引き返すことも視野に入れて考え始めた。
二人とも、思うほどに余裕がないのだ。
「リン、やっぱり引き返………」
提案のために立ち止まったリノバであったが、その背後から足音が聞こえないことに気がつき、慌てて振り返った。
「リン!」
灯りを掲げて、今来た道を照らすも、そこにリンの姿はない。
まるで初めから彼女はここには存在してなどおらず、ただ、リノバの吐く息と反響する水音がその埋め合わせをするかのように強く聞こえた
小出し小出しっと




