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幽明の番人  作者: 寺島という概念
『信仰』の御化
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 異教徒の男から話を聞き終えた二人は、少し離れた場所で話を聞いていたペトラの元へと向かった。

 彼の協力のおかげで、すんなりと手がかりを手に入れることができた。

 なんでも、彼は商人宅での殺人事件が発覚したさいにも現場から近いこの区画にいた『異教徒』で聞き込みの際に『警察隊』に話すことはなにもありません。と主張して止まなかったらしい。

 とまあ、これらは本来「警察隊」のみが知りうることであり、ペトラがそのことをたまたま知っていたからこそ、リンとリノバは下っ端の学生であるにも関わらず、彼に会うことができた。

 つまり、彼に直接会うためにここに訪れた、では都合が悪いことが起こる可能性がある。

 今回の件に、一応彼らも駆り出されているが、他に調査している神衛隊員がいない訳でもないのだ。

 そのため、リンとリノバは礼拝堂に出現したと見られる『御化』の聞き込みの際、たまたま聞き込みでこの区画にたどり着き、これまたたまたま彼に遭遇した、ということになっている。

 苦しい言い訳ではあるが、あまり仲の良くない「警察隊」の管轄内で「神衛隊」のそれも学生が活動している以上、何かしらの言い訳は用意しておく必要があった。

 一番良いのは関係者に見られないことだが、万事がうまく運ぶことなど、まずない。

 誰が言ったか「起こりうる出来事は続けていればいずれは必ず起こる」のだ。

「ペトラさん、ありがとうございます。おかげで貴重な話が聞けました」

「あの手の話は警察隊にとってはあまり訳には立たないが、君たちならうまく使えるだろう。幸運を祈るよ。それじゃあ、私は早いところお暇させてもらうよ。見つかったら面倒だ」

 万一に備えて見張りに立っていたペトラの去り際の背中に二人は改めて礼を言い、それを見送った後、薄暗い裏路地から移動を始めた。

「リノバ、どう思う?彼の話」

 道すがらリンが訊ねた。彼女は彼の話をどこまで信じるべきかを図りかねていた。

 話し手が「異教徒」であることや、彼が色々と詳細に知り過ぎていることに疑念を払拭しきれていなかった。

 それに、あの焦らすような話し方は、どこか演説めいて、用意された台本に沿った物のようにも感じられた。

(都合よく物事が進み過ぎているような気がする)

 彼女の胸中を一言で表すならば、それが一番相応しい。

 対してリノバは隣を悩ましげに歩く彼女とはほとんど対極と言って良いほど緩やかな表情である。

 仮にそれが演技で、内心は不安でいっぱいだったとしても、それを覆い隠せる余裕がどこかにあるということだし、実際、彼はそこまで心配はしていなかった。

「具体的な手がかりはほとんどない。でもこれから調べる上での取っ掛かりには困らない、いい話だったんじゃない?」

 リノバはうっすらと楽しんでいるようなさえあり、リンにはそんな彼の精神状態が理解できなかった。

「………それ、本気で言ってる?だって、彼、『異教徒』よ?都合よく『神衛隊』を頼るなんてこと、あると思う?」

「確かに疑うのは捜査では大切なことだと思うけど、君は少し神経質すぎるよ」

 リノバは話の間を繋ぐためにパチンと指を鳴らすと、その音が漆喰塗りの家屋の壁に反響した。

 程なくして言いたいことがまとまったところで、リノバは再度口を開いた。

「考えてもみなよ。今のところ彼には僕たちを騙す利点がない。警察隊が管轄が明確に区別されている僕らの調査を妨害する意味も全くないし、仮に仕組むにしても下っ端の僕らを騙したところで大した影響はない。おまけにリンが言ったみたいにさ、わざわざ信用性が低い『異教徒』をその役に選ぶ?」

「そう思わせるのが目的だとしたら?」

 リンは半ば彼の言い分に納得はしていたが、一応食い下がる。

 すぐに認めるのもなんかしゃくだ。普段ほわほわしているだけに、こういう時にやけに頭がキレるのは本当にずるい。

「もしそれが本当に僕ら………いては『神衛隊』を陥れる罠だったとしたら、それはもう、完敗としか言えないね。そんな神がかり、それこそ『神』位のものだよ。それに、僕らは彼の話の種を調べる他ない。その『真偽』をはかるためにもね」

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