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幽明の番人  作者: 寺島という概念
『信仰』の御化
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「ほとんど毎日のように礼拝堂に通うような、熱心な人だったそうです………」

 彼が滔滔とうとうと語るその話の中には、その女性がどれだけ熱心に『神』を信奉していたのか、そして病気が治った後、どれだけ『神』に感謝をしたのかが分かるような内容だった。

 その話は、時々彼の主観を以って語られることがあったが、ほとんどが客観的なものであり、具体的な物事と結び付けられた、説得力の強いものだ。

「そして、逸話とは違って、彼女はすでに亡くなっています。死因は、お二人なら思い当たる節があるでしょう?」

「………締め殺された。どうして、あなたはそこまでご存じなのです?他人なのでしょう?」

 いくら地域に根ざして噂話に耳をそば立てていたかららと言え、ここまで詳細に個人の情報を語れることなのだろうか。

 リンは疑問を口にして、男の反応をうかがった。

「どうしてと言われましてもね。知っているものは知っている。それだけに過ぎません」

 そう言われてしまえば、彼女としても食い下がる訳を見つけることができなかった。元々疑うに足る確証があったわけでもない。

「話を戻しましょう。私には、その『死因』、延いてはそれに『木の実』が関与しているのではないかという疑念があるのですよ」

「もしかして、その『木の実』を食したから死んだ、と考えてます?でも流石に、実在するかも定かではないものが原因だと言われても………、さてはあなた、実物を見たことがあるのでは?」

 閃いたように手を打ち合わせてから、リノバが言った。

「………『アウェン』もね、言ってたんですよ」

 しっかりとした口調ではあったが、明らかに哀しみを感じさせるような響きを帯びた、少し調子の落ちた声音で、呟くように彼は口にした。

「何をです?それに、アウェンとは?」

「友人です。あの時はいつもよりも調子が良さそうでした。どうかしたのかと聞いたんですがね。『なあ、お前『神の木の実』知ってるか?』という具合に質問で返されまして。あの時も所詮おとぎ話と一蹴いっしゅうしたのですが、その会話をして以来、彼とは会っていません。今この状況を思えば、もっと良く聞いておくべきでしたね。過ぎし時は戻りませんが」

 男は『アウェン』という友人が『神の木の実』を食したと考えているらしい。おそらくその『アウェン』も命を落とすか、行方が分からなくなっているのだろう。

 確かにそれなら、噂話も相まって『神の木の実』という共通項が原因と見出しても不自然ではない。彼が言ったように、あくまでも「疑念」に過ぎないのは同じだが、それでも可能性の一つとして数えるには十分な見地だ。

 問題はその『アウェン』とは何者なのかということだが、それは意外にもあっさりと特定できた。

「アウェンは信仰を捨て、『異教徒』となった割には、『神』を心から信奉している変わり者でしてね。いつも暇さえあれば礼拝堂に足を運ぶような男でした。もちろん、礼拝堂の内には入りませんでしたがね。いつもその外で祈っているのですよ」

 リンとリノバはその『アウェン』の特徴に当てはまる人物に心当たりがあった。

 今回の被害者の『異教徒の男』だ。

 この男は、彼の生死の行方を知っているのだろうか。

(多分、知っているのだろう)

 リノバもリンも同じ結論に至った。

 だからこそ、本来は『神衛隊』の調査を忌避きひするであろう『異教徒』である彼がこんなにも協力的なのだ、と。それは紛れもなく、友人のとむらいのようだった。

 神に安寧あんねいを祈るのではなく、実存する『神の力』に協力を仰いだのだ。

「私が思うに、アウェンは信仰を捨てて異教徒になったのではなかったのでしょう。彼の信じるやり方で『神』を信奉するために、わざわざ『異教徒』になり果てた。そんな男なんですよ、彼は。そんな奴ですからね、せめて、彼の信じる『神』の力に彼の無念を晴らしてもらいたいと、私は考えた訳です」

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